高齢者入所施設へのワクチン接種スタート

 4月26日から八重山における高齢者入所施設でのワクチン接種がスタートした。

 この日、上善会かりゆし病院が「シルバーホームいちのはし」と「グループホーム星のふるさと」、「介護老人保健施設聖紫花の杜」の3か所に入所する高齢者70人へのワクチン接種を、午後2時半までに済ませていた。

 今後も、各地の高齢者施設でワクチン接種が進められる。

 3月8日からはじまった医療関係者へのワクチン接種から、ようやく高齢者へのものへ漕ぎつけたことになる。この高齢者入所施設での1回目接種は約2週間で終了する。

 2週間後には2回目のワクチン接種がはじまり、そこで1回目よりもしっかりした抗体が体内につくられることとなる。

 目下、石垣市へ到着している1000人分のワクチンは、高齢者施設への入所者と医療関係者へ優先して接種が行われる。

 なお、2週間後あたりからは、到着するワクチン量を見ながら、一般高齢者へのワクチン接種も始める予定。
 実は、この一般接種に難問が付きまとっている。

 それは85歳以上から順にワクチン接種のクーポン券を石垣市が郵送するのだが、受け取った高齢者は、石垣市へ予約の電話を入れて、場所と期日が決まり、ワクチン接種をすることになる。

 そこで、問題が出てくる。
 ファイザー製のワクチンは、冷凍保存されており、解凍すると使える時間が限られ、計画的な接種が必要とされるのだ。

 順を追って説明すると、
 予約を入れ、期日に接種会場へ来た高齢者は、ひとりひとり医師からの問診を受ける。

 そこで、接種できると判断する人と、接種すると副反応が予測されるために接種しない方がよい人を、かならず医師が判別。加えて高齢者自身が接種をする意志を示すことで接種が行われる。

 この問診の時間がかかることと、医師の数の増減で、一日にできる接種者の数が限られてくる。先にファイザー製のワクチンが冷凍保存されており、解凍すると使い切る時間が限られている点を述べた。

 正確な医師数の確保と接種者数の来訪が揃わなければ、余ってワクチンを捨てることになってしまう。
 しかもワクチンの到着数から、予約可能な数も限定されてくる。

 これは、市役所がするクーポン券の郵送から課題が出てくることを意味する。
 一斉に一般高齢者へ郵送してしまえば、石垣市へかかってくる予約受付の電話は、パンクしかねず、かと言ってワクチン到着を見ながらクーポン券の郵送をすると、クーポン券が来ないとの苦情の電話と予約の電話で混乱しかねない。

 ワクチンの到着数に応じたクーポン券の郵送をする旨を、市民へ連絡徹底しなければ、窓口が混乱することになる。
 自分のところだけ、クーポン券が来ていないと、催促をする人が増えることを、いかに避けるか。そして、クーポンを郵送された人が予約をする際に、窓口が混乱しない受付をどうスムーズにするか。

 また一日の予約の受け入れ可能数が、実はワクチン量だけでなく、医師の数にも限定されてくる。石垣市の医師会の個人で開業する医師らは、それぞれに患者を抱えており、対応には急な診療もあり得るなら、不確実な部分が起こりかねない。

 病院の医師であれば、安定確保はできるとなれば、島内は八重山病院、かりゆし病院、石垣島徳洲会病院。

 それ以外は、沖縄本島からの派遣となる。コロナのPCR検査や、陽性患者の対応とともに実施することでもある。

 注射自体は看護婦が可能だが、接種判断は医師が関わらなければできないことになっているため、ワクチンの接種のスピードは、医師の数に大きく依存する。

 加えて、2週間後の2度目の接種が必要となる。沖縄本島からの派遣医師が、1回目と2回目が増減しては困るのだった。1回目の医師の人数と同じ数が、2回目にも必要となるからだ。医師のスケジュールの確実性が求められる。

 どうだろう。台風常襲地帯の八重山だ。天候にも厳しいものが見える。

 もうひとつ懸念されること。これら高齢者への接種体制が、スムーズにできたところと、難しいところが発生した場合、9月から始まるとされる、一般向けのワクチン接種が、どこから優先して政府は配布するか。そう、早く接種を済ませたい政府が、どう判断するか。

 想像するのは簡単だろう。まさに、自治体の能力が、そこにかかってくる。

 しかし、台風ばかりは、今の科学では読めない。いっそワーケーション体制を大々的に展開して、全国から医師を招へいするか・・・。

 さて、懸念要因がこれだけそろってしまう事態に、世界でのワクチン接種は、かなり進行している。

 日本が、これだけ不器用に対応するのは、やはり2004年のSARSの時、まったく被害を免れたことに尽きるかもしれない。当時、被害を受けた各国が、防疫体制を強化したからこそ、制度の面も洗い直しておかしくない。

 世界の保健関係者がSARS終息の時から第2第3のSARSを恐れていた。日本の中枢で働く官僚が、まずSARSの現場に足を入れることを、やっていたのか。どんなものかを把握したのか。

 それで、取らざるを得なかった新型コロナウイルスの対応がこれだったということなら、これがまず何を意味しているか。そこを受け止めて、今後の対応をしてほしい。でなければ、また同じことが繰り返される。

なお、4月27日は、石垣市白保のケアハウス「ばすきなよぉ」で、かりゆし病院の境田医師と看護チームによるワクチン接種がおこなわれ、この日、入所者23人と職員12人へファイザーのワクチンが接種されていた。

 施設運用を考慮して、入所者および職員は約半数づつが接種され、5月4日に残りの職員と入所者の接種が行われる予定。

 一昨日に連絡が入って、初めての対応に臨んだ同施設の職員は、この日の対応を終えて、

「市役所の職員の皆さんの大変さが、伝わってきました。」

と、初めての対応に挑んでみて、これからはじまる市当局の大変さに敬意を示していた。

 (流杉一行)

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