今季八重山漁協に4月4日に初水揚げされ、活況を呈した本マグロ漁は、5月18日を迎え349本目の状況で、沖縄県はついに本マグロ(クロマグロ)の採捕停止命令を発した。
これは県内に水揚げされる本マグロの漁獲量(現在175トン)が、国からの割り当て制限量189・9トン(県知事分制限量)の約95%に迫ったことから、採捕停止命令を出したもの。(18日に捕獲したものが水揚げ可能となる。)
この日、船内に捕獲した本マグロを持つマグロ船が、続々八重山漁港の岸壁に集結して、水揚げを実施していた。
沖縄県の令和3年度本マグロ漁獲割り当て量は、203・6トンだが、前期(4月から7月)と後期(8月から来年3月)に分けられており、後期分と誤捕獲の留保枠として14.・7トンが残されてある。当初割り当て量は127・2トンだったが、他県での昨年度繰り越し分が配分されて、76・4トンが増やされている。(特別措置が延長され、昨年の取り残し分を漁獲枠の17%までは翌年に取り残せるようになった。)
八重山では現時点では70tと683・1キロが水揚げされている。本数にして349本。
昨年は550本と近年最高の本数となっていた。今年はまだ船に持つ本マグロがあり、明日以降水揚げされるため確定値ではない。また泊まり漁港へ水揚げする八重山漁協所属船もある模様。本数はまだ増えるのではないかと八重山漁協の友利邦明課長は述べていた。
昨年の採捕停止命令は6月10日に出ており、22日早く採捕停止となったことになる。
これら本マグロの国内漁獲量は、中部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)で定めた枠内で制限されている。日本への割り当て量を各都道府県へ配分。八重山では2017年にマグロ船の漁師へ説明会を開き、2018年度から採捕命令が出るようになっている。今年で4年目になる。
この日、漁師からは、「今年は豊漁だと思う。アカマチもセーイカも全体に漁獲量は減っている現状を考えると、長い目で見た場合、海のためには大事かも」と、声を出す船長も見られた。
確かに早い段階で制限値に来ているのは、採捕停止命令が出るようになって4年目の影響と考えられるかも。
別の漁師からは「もともとこの時期に揚がる本マグロは、肉質があまりよくないので、買いたたかれてしまう。冷凍しても持ちが悪い」と、冷静に話す声もあった。
なお、水産庁によると、本マグロの世界の漁獲量は2019年で年間1.2万トン。日本の漁獲量は0.7万トンで全体の半分以上を占めている。日本は、本マグロの親魚資源量を2024年までに少なくとも60%の確率で4万トンにまで回復させることを暫定目標としている。2018年の親魚資源量は2・8万トンで、2010年の1・1万トンから徐々に増加してきているとし、資源状態が良くなってきていることを報告している。
3年後には次なる回復目標を10年以内に13万トンまであげていく予定とのこと。(水産庁発行「国際漁業資源の現況」より)
漁獲制限から早いもの勝ちで採れば、水揚げが殺到して値段が落ちる。
それにコロナもある。制限が利いて海で本マグロの数が増えると、豊漁が起こり、短期間で停止命令が起こってくるのは、漁師にはどうなのか。
漁場の近さが利点であれば、それをどう生かすかに注視したい。いかに良い肉質状態で水揚げし、いかに良い状態で保存できるか、八重山全体で工夫することが大事ではないか。
天候にも影響する漁業であれば、競うように捕獲するデメリットは大きなものになる。
資源を再生するためにとる措置なれば、全県関係者が了解して無駄な競争をなくす方法を考えてよいのではないか。
真空保冷パックして、パインのように贈答品に使われる道もある。好条件な漁場が有効活用されないのは実に惜しい。
(流杉一行)
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