<日曜の朝に>仲大盛進真栄里公民館長に聞く

●「震度6」の真栄里地区

真栄里地区は現在「震度6」だと仲大盛進公民館長(65)は言う。
旧石垣空港の南に広がる新興商業地区の発展、アパート・マンション建築ラッシュによる人口の増加で、真栄里地区が揺れづつけているというのである。

地図を広げると、山側をのぞいた真栄里地区は、北は県八重山事務所(旧八重山支庁)から南は真栄里公園まで、西は平真小学校から東はANAインターコンチネンタルホテルまで。いま石垣島でいちばん活気のある場所である。

この中には旧石垣空港がすっぽりと入っていて、これから旧空港跡地に八重山病院、石垣市役所が移転してくると「揺れ」はますます増幅されるということだ。「どうなっていくか現時点ではなかなか先が読めない」と。

かつて平真地区の北半分の平得がウイヌムラ(上の村)、南半分の真栄里がシムヌムラ(下の村)であったころ、真栄里の世帯数は70世帯ほど(公民館長)であった。そしてほとんどが公民館員であった。

ところが現在は、「およそ2400世帯のうち公民館員は281世帯」だという。1割強。豊年祭など行事の時に公民館員募集の張り紙を出したり、役員が新移住者に声かけをしたりするが、加入者は少ない。

「会費を払ってどんなメリットがあるんですか、と聞かれる」と仲大盛公民館長。
台風災害や衛生管理など地域で協力しあわなければならなかった時代は過ぎ去り、地域の清掃、蚊の駆除、月1の「公民館だより」などはもはやメリットではなく、公民館はむしろ個人の自由を阻害するもの、と受け取られる時代になったということだろうか。

「大勢の人を入れて公民館をサンツァーラス(混乱させる)こともあるし、かといって人を選んで勧誘するわけにもいかない。まさに岐路に立っていますよ」

「しかしこんなこともあるんですよ。豊年祭などの伝統行事に自分の息子や娘が出演するとなると親はやっぱり練習の時から頻繁に見に来ますね。こういう人たちとはコミュニケーションができるようになる」

間口は広げてあるけれど、無理やり会員にするような状況ではない。興味を持ってくれる人たちをちゃんと受け入れていく。というのが今の真栄里公民館の姿勢といえるだろうか。

「真栄里公民館館則」は第6条会費の項で「会員は、総会において別に定める会費を納入しなければならない。ただし、地域内・未加入者は総会において定める一定額程度の『公民館活動協力費』の納入を促進する」としている。あくまで「促進」なのである。

●公民館活動

真栄里公民館の年間行事は主に次のようなものがある。
成人祝賀会(地域の新成人を招いて祝う)
春の大掃除
豊年祭(会員じゃない世帯・企業等にも案内状を配布)
ソーロン(旧盆=アンガマが各家庭をまわる)
ジュングヤ(十五夜=獅子舞、棒など披露)
敬老祝賀会(地域の老人を招いて祝う)
秋の大掃除

去年の11月には公民館落成(新公民館は500余坪の敷地の半分を占める立派な建物)5周年と銘打って「第1回真栄里まつり」を開催した。
「地域を活性化しようというのが目的だが、新住民との交流にもなったと思う。しかし毎年の開催は負担が大きくて難しい」という。

他に老人会、婦人会、青年会の独自の活動がある。
また、獅子舞・棒術・旗頭などの伝統芸能の保存会があって青年たちが行事のたびに活躍する。それにスポーツ大会。去年12月の八重山毎日駅伝大会で真栄里チームはみごと優勝した。

さらに、行政との連絡・連携、地域の冠婚葬祭への参加……、まこと公民館は忙しく、公民館長ともなると「特に葬式なんか、代表焼香もあるし、最後まで帰れない」

●方言の継承が課題

忙しく大変なのに、なぜ公民館活動を一生懸命やるのか。「地域の伝統文化を残していく」ためである。そのために「方言こそが課題だな」と仲大盛公民館長は言う。

「シィマムニ バスキカー シィマバスキ(方言を忘れたらシマを忘れる)、そのあとは親も忘れると言われるように、方言はまさに伝統文化だと思うし、すごい教育力があると思う」

「ウヤヌクイヤ カンヌクイ(親の声は神の声)というし、方言には言い伝え、格言が数多くあって、子どもたちが方言をつかうようになったら、親子の関係とか、地域でのコミュニケーションの取り方なんかがどんどん上手になってくるんじゃないか」

館長は「ばあちゃんが僕に方言しかつかわなかった」というが、時代が変わり核家族化が進み、方言を知らない親が増えた。どうすれば親が方言をつかうようになるか。さらに方言を知らない親の元で成長する子どもにどのように方言を教えるか。

「以前に公民館で方言講座を開いたがあまり人が集まらなかった。しかし再開する必要は十分にあるな。さらに祭りの場とか、小中学校の現場でなんとかできないだろうか。真栄里と平得の方言はぜんぜん違うけど、その比較をするのも面白い」

「震度6」という島いちばんの「揺れ」がつづく真栄里地区で、仲大盛公民館長は、地域の伝統文化の核ともいえる方言のことを考えている。これは大事なことではないかと思う。根と幹がしっかりしていれば揺れにも耐え、工夫の枝葉はおのずと生えてくるに違いない。

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