6月11日、午前9時から石垣市大浜の大浜公民館裏の庭で、イトバショウ100本以上を切り出し、細かく割いた繊維を煮込んで、獅子舞の獅子の毛(フクダ)を地域あげて製作するフクダづくりが行われ、大浜集落の公民館、老人会、婦人会、青年会、そして大浜小学校の5年生が集合して、にぎやかにイトバショウの繊維から葉肉を削ぎ取る作業をしていた。
大浜集落の獅子舞は、毎年旧盆の後のイタシキバラで登場し、地域を浄化する行事で地域ではお馴染みの大イベント。この日は、来客などの慌ただしさの中で多忙な旧盆後の骨休めの意味もあり、集落では楽しみの時間でもある。
そんな獅子舞の獅子の体は、毎年地域住民の協力で、獅子の毛を修復するためのフクダづくりが行われている。
毎年見る獅子舞の獅子が、迫力ある舞を見せられるのも、この毎年地域住民で補修するためのフクダが足されているから。
波照間盛一大浜公民館長も「これをしないと獅子舞の獅子が?せてしまう」と、地域にとっては大事な行事だという。
この日、100人を越す住民が、フクダづくりに参加して、地域の獅子の毛づくりに力を注いだ。
この大浜集落の古くから伝わる伝統の獅子舞は、大浜町時代から地域の象徴的な伝統芸能だった。復帰後の20代の若者の流出から伝統行事が危機的になる中、1983年に日本青年協議会(日青協)で優秀賞を獲得したのがきっかけで、その獅子舞を披露した仲間で地域活性を思い、地道に継承させてきたもの。
1994年(平成6年)に獅子保存会を立ち上げ、その後に獅子棒保存会と棒術も加えての取り組みに発展して現在に至っている。記者も29年前に取材しており、当時イタシキバラは20代30代の参加者が少なく、それでも地域の伝統行事を大切に思う使命感もつ人の手で獅子舞が毎年披露されていた。
その甲斐あってUターンする若者が加わり、2001年には子ども獅子も生まれ、イタシキバラの前座に披露されることで、父母会の支援も加わり、大浜集落全体で継承に厚みがでて、獅子舞が地域の伝統継承の軸になっている。
その後、群雄割拠時代の大浜の英雄でもあるオヤケアカハチの生誕500年を祝う行事も実現。アカハチ像の建立やアカハチ祭り、またアカハチスポーツ少年団など、伝統と結びつく地域活性の形を実現。郷土愛を培う軸には、この大浜の獅子の存在抜きには語れない。
目下、南大浜は商業施設の進出が活性し、振興地区としての色彩が濃厚で、地域振興最先端の機運にもある。伝統と地域振興で注目の集落でもある。
(流杉一行)