西表島で357台/約半月の昆虫採集車両 八重山16機関で密猟・密輸の対策に取り組む連絡会議開催

(パトロール中、西表島相良駐車場で 写真は環境省提供)
 11月30日午後1時半から環境省石垣自然保護官事務所のある国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターで「八重山地域における希少な野生動植物の密猟・密輸対策連絡会議」が開催された。

 これは昨年度に次ぐ第二回目の会議(開催は令和4年3月)で、2021年に西表島が世界自然遺産に登録されたことから、密猟・密輸対策は急務の事象となっていたこととも連動するもの。

すでに密猟・密輸対策の準備会議は立ち上がっており、16機関が参加しており、10機関がパトロールなどの取り組みを実施している。

 この日は、たまたま沖縄県警が事件で欠席したものの、同会議の構成機関の5団体15機関が集い、情報を共有していた。

 山本以智人上席自然保護官が挨拶に立ち、同会議では物流関係など、密猟・密輸の場面に関わる民間事業者へも参加を呼び掛けており、26団体が網羅されていることを紹介していた。

 また密猟・密輸対策をおこなうことで、八重山の貴重な自然環境を保全していこうと、集まってもらったと会議の目的を述べていた。
  「昨年の西表島の世界自然遺産の登録から、企業からの支援も頂き、八重山保護を、持続可能な観光を推進していきましょうということで進めています。世界自然遺産となる根拠が生物多様性で、この価値について会議を通して知って頂いて、地域でそれを守っていく芽をつくることが大事だと思っております。」とも述べていた。
 
 このあと6つの議題が話し合われた。

 議題1では八重山地域における環境省の取り組みについて紹介され、西表石垣国立公園(石垣地域)希少種等パトロール、ヨナグニマルバクワガタ密猟防止合同パトロール、西表島における希少動植物の密猟・盗掘を防止するための普及啓発運動の3点が紹介されていた。
 
  西表石垣国立公園(石垣地域)希少種等パトロールでは、10月から11月に屋良部林道でやった時には、ユーチューバーと遭遇してマルバクワガタの採集はしていない。撮影しているだけと述べるケースに出会ったことを紹介。

また、トラップが多数発見できた。ライトトラップを仕掛ける人には、国立公園内ではなかったことから、道路管理者への許可をするよう指導したとのこと。

またたくさんあった小さなトラップには、注意書きをしたシールを張るなどしたとのこと。

 夜のパトロールでレンタカーや地元の車も出ていて、2時間程度で70台の車が夜間に人が近づかない場所に現れることがわかったとのこと。

 10月19日にはネイチャーガイド向けの勉強会を実施。地域を守るために監視することに連携してほしい旨を伝え、終了後は県警とともにパトロールを実施するなどしたことを報告していた。
 
 ヨナグニマルバクワガタ密猟防止合同パトロールでは、与那国島で夜間に実施。ヨナグニマルバクワガタは乱獲が発覚して平成23年に国内希少野生動植物種に指定され、捕獲が禁止されパトロールを実施していることを報告。

 10月から11月に実施され、駐在とパトカー2台で、二手に分かれて実施。呼び止めてチラシを配布するなどしながら、監視を実施。今年11月には1台も密猟車両はなかったと報告していた。
 
 西表島における希少動植物の密猟・盗掘を防止するための普及啓発運動についての報告では、一般向けの取り組みも最初に紹介。

7月16日と8月11日に石垣離島ターミナルで昆虫採集者へ規制があることを紹介して、約300のパンフレットを配布。

以前は大原港、上原港で実施したが、レンタカー業者やガイド等への関心が向いて、見向きされず効果が低かったが、石垣港でチケットの受け渡しの場所でチラシを配ったことで、関心をもってチラシを受け取ってもらえたと、述べていた。

この方法は、昆虫採集だけでなく、植物防疫やサンゴ関係の啓発にも使えるものと感じたとも。

  本題の「西表島における希少動植物の密猟・盗掘を防止するための普及啓発運動」では、10月に多いヤエヤママルバクワガタの採集に関し、監視するパトロールを10月15日から11月2日にかけて実施したとのこと。

 合同パトロールは、環境省、竹富町、警察、西表財団、パークボランティアがいっしょにパトロール。また巡回パトロールを西表財団へ発注して毎日2時間半ほど実行してもらい、そこで昆虫採取の車を357台把握したことが報告された。4

 2020年から実施しているパトロールでは、昆虫採集者の数は年々増えており、なかでも10月20日から10月30日の期間が集中。

ピナイサーラの滝の駐車場では100台見られ、すべてが昆虫採集ではないものの、もっとも多くなっている。

357台の内の232台が入林届けをしており、入林届けをすればいいというものではないので、そこは課題でもあるとのこと。

 来年度でエコツー全体構想が施行される予定で、ピナイサーラへの人数制限が始まり、ガイドと共にしか入れなくなる。そこでの観光客の分散化が心配されていると、述べていた。
 
 世界自然遺産の登録の際、入域数の増加が与える自然環境への負荷が懸念されユネスコから対処を求められる状況にある。

 観光第一から自然環境第一へ切り替わるためには、何が必要か。その考察を進める必要がある。

 なお、残る議案5つは非公開となり、今年度と次年度の取り組みについて話し合われた模様。希少生物の密猟・密輸事件の発生状況も話し合われた他、アプリによる希少種の判別を推進中であることが紹介されていた。

「TRSSNA」(トラスナ)と呼ばれる希少種密猟対策用アプリで、生物を写真撮影することで、アプリが判断してくれるという便利なアプリ。

将来は、生物の名前だけを知るには、アプリで十分となる模様。また、名前が特定できれば、ネット検索で詳しいことも確認できる。となれば、ガイドは、確実に生物に出くわせるようにする必要があり、生態に詳しくならざるを得なくなる。

今いる、経験の浅い「ネイチャーガイド」は、島の歴史や方言、文化にも詳しくなければ廃業となるのだろう。時代は進む模様。

 (流杉一行)

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