観光業者が島の自然と文化を守る 竹富島自然財団とパートナー協定締結

 3月11日午後1時40分から、星のや竹富島で「竹富島地域自然資産財団と星のや竹富島とのパートナーシップ協定締結式」が行われた。

 これは、星野リゾートが運営する星のや竹富島が、一般財団法人竹富島地域自然資産財団(上勢頭篤理事長)と、竹富島の自然環境保全と持続的な島文化保全に関して、パートナーシップ協定を締結するというもの。

  島の経済的な価値と社会的な価値の両立を目指すことで一致したことで、今後様々な形の取り組みがスタートするとのこと。

 具体的に取り組まれることは、協定書に明記されており、

星野リゾート(株式会社星野リゾート・マネジメント)が運営する星のや竹富島と、一般財団法人竹富島地域自然資産財団(上勢頭篤理事長)が開発したツアーやプランを販売、

海洋漂着ごみ問題の解決に向けたアクティビティの販売、

伝統作物の復元と特産品化への技術協力、

伝統文化の保全と保存、

同財団が実施する保全活動(アピール24)に即した魅力造成、

上記活動の島外へのPR

と、6項目に渡る。
 

 この日、2通の締結文書「竹富島の自然環境保全と持続的な島文化保全のためのパートナーシップ協定」の押印の後、挨拶に立った上勢頭篤理事長は、
 「2019年からよちよち歩きでわれわれ財団は歩んできました。星のやさんは、世界に向けた発信力と行動力に長けています。このパートナーシップ締結は、竹富島をSDGsの先進地として一層の飛躍をさせ、次世代に繋げるものと確信しています。」と、締結実現を喜んでいた。

 星のや竹富島の本多薫総支配人は、
 「2012年6月に営業しました。開業前から島の皆様には多大なサポートを頂いて、開業後も協力なしには、ここまでくることはありませんでした。そして今日、島の財団とパートナーシップを締結することで、島と共生するリゾートとして、さらに経済的価値と社会的価値が両立できる取り組みを一層できればと思っていますので、ご支援のほどよろしくお願いします。」と、島への貢献をアピールしていた。

 締結のきっかけは、2019年9月に竹富島がスタートさせた入島料徴収で、2020年6月に同財団が島内での入島料の協力を求めたことから、同協定が模索され今回に至ったもの。

 そもそも、2016年6月にスタートした星のや竹富島は、地域との連携を基軸にしたリゾートを運営しており、島の文化に精通するべく粟の栽培など、ホテルでの敷地内で島人から伝統の農法を習うなどして、交流を深めてきた。

 締結式のあとは、記者団へ締結前から協働活動する「粟復興プロジェクト」が紹介された。

 これまで粟の伝統的な栽培方法を、「畑プロジェクト」として、2017年から竹富島の畑文化に詳しい前本隆一氏から伝統の農耕を学んでいる。

 新たにこの「粟復興プロジェクト」で島に点在する耕作放棄地を利用して、粟の増産から伝統食の「イイヤチ」加工に結び付け、さらに将来は特産品化も見据えて取り組むことが始まる。

 この日は、「イイヤチ」づくりの一部を実演して、竹富島の伝統文化の体験を披露。取材に来た記者も、大きなヘラを手に実体験をするなどしていた。

 米と粟と小豆をシンメイ鍋で練り込む作業を、小豆をつぶさないように注意しながら2人で実施。仕上がった「イイヤチ」をニンニクといっしょに試食も体験していた。
 
 さて、2019年の八重山への入域観光客数が146万人に上ったことは知られている。石垣市観光基本10か年計画の目標値が2020年を目標に100万人だったことを考えれば、明らかにオーバーツーリズム。ところが2014年段階で同計画は150万人へ目標値を変更。

 2019年がそれさえ越えそうな勢いにあったのは、紛れない事実。このコロナ禍が急ブレーキを踏ませたことで、今は2年前のことさえ、忘れ去られそうでもある。

 しかし、竹富島では、観光地の自然環境の劣化や負担を軽減するべく、繁忙を極めた2019年に入島料を取って島の自然・文化の健全な継承をねらい取り組んできた。今回は、唯一島のリゾート観光施設「星のや竹富島」と協定を結ぶことで、経済価値と社会価値とをバランスよく向上させて、数に依存しない目標づくりに取り組みことに精を出すこととなった。

 また、星のや竹冨島は、島が被災した時の貢献にも取り組んでいる。

 田崎七海星のや竹富島広報担当によれば、このほど竹富島住民の避難場所として星のや竹富島が指定されたとのこと。星のや竹富島では、海水淡水化装置が今年2月から稼働して、その動力源が太陽光発電であることから、緊急時の電源と水源が確保されるために、被災時に避難場所として提供することとなったという。

 観光が地域に貢献しながら、その経済価値と社会価値のバランスをとる姿勢は、八重山全体で通用する指針に見える。これからの島のペースを維持しながら栄えるための新たな方法論が見えてこないか。
 

 (流杉一行)

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