本マグロが続々島内で販売

 世界中が混乱している最中、突然、石垣島で驚く現象が生まれた。高価な生(なま)の本マグロ(クロマグロ)が、たった500円で食べられるようになっている。しかも、おさしみクーポンを使えば400円だ。

 大型販店が沖縄本島から送ってくる、県外産あるいは畜養の冷凍品ではない。

 八重山近海で産卵しようと集まってきた本マグロを、延縄で捕らえた、生のままの本マグロである。大型船で石のようにカチカチに冷凍して運んでくるものではない。

「海のダイヤ」と呼ばれる、銀座のすし屋に出るような極上の寿司ネタ。これが石垣島で刺身として普通に売られているのだ。

 すでに、八重山漁協に106本の本マグロがあがっている。そして、豊洲へ送れない本マグロは無理して船便で送っても、値が張らない。そこで生まれた混沌状態。

 確かに、全部が全部、銀座の店に出るようなものではないかもしれない。しかし、今、豊洲に送れる本マグロの頭数は、限定されている。新型コロナで便が少ないためだ。

 送れるときは、特別品質の良いものから送られている。一隻で7頭も積んで戻ってくる漁船があれば、島の刺身屋にどっと本マグロが回っていくことになる。

 刺身屋さんは、長年の経験で全部売れる量で出すから内容量は多い。そして、新鮮でしかも普通だったら豊洲に送るものだったりするため、赤身と表示してあるにもかかわらず、中トロクラスの旨さだ。(捌いた当日のものであれば:当たりはずれはある)

 生の本マグロが豊洲送りの品であれば、はっきり言って、島で食べられる品質の上を行く。マグロ船の船長は、豊洲に送ることができないつらさを押し殺し、断腸の思いで島の刺身屋に売っている。

 刺身屋さんは、「これぐらいはいつも販売している」と、平然としているが、半端ない旨さ。

 多分、マグロ船の船主が経営する刺身屋には、固定した本マグロ顧客がいて、そこへはいつも、売られているかもしれないが、一般人でめったに刺身屋に足を向けない人は、まったくこの八重山の最高の味を知らないままにいる。

 銀座で、高級な店に高価なものが売られても、まったく関係がない全国の一般庶民。しかし、その一般庶民が、ひっくり返っても食べられない高級品が、島の刺身屋に500円あるいは1000円で並んでいることになる。

 この凄さは、新型コロナで豊洲に本マグロが自由に送れない内だけ。もうしばらくで終わってしまうが、とにかく今だけ。今しかない。

 そして、5月11日午前10時から販売されている石垣市水産課の「おさしみクーポン」の400円で買える500円券。石垣市役所と八重山漁協で販売されている。一人10枚の制限付きだが(6月30日までの期限付き)、なぜか関心が少し失せ気味。

 第2弾のおさしみクーポンだが、今回、売り出しが月曜日だからか、あまり人が買いに来ない。これが金曜ともなれば、自宅で一杯やるには最高。どっと買いに来るかも。そんな声も聴かれるおさしみクーポン。

 八重山漁協の港にマグロ船が入ったなら、どこの店の船か確認すれば、あるいはどこの店に本マグロが売られたかがわかれば、間違いなく、夕食は極上の食卓となる。さあ、あなたはどこの刺身屋へいきますか。

(流杉一行)

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