4月9日、石垣島トライアスロン2023が開催され、1198人がスイム1・5キロ、バイク40キロ、ラン10キロのショートディスタンスコースの石垣路を堪能した。
午前8時に南ぬ浜人工ビーチから10のウエイブスタートで人工ビーチに飛び込んだ参加者は、水しぶきをあげて泳ぎきり、バイクでサザンゲートブリッジを後にして、左回りに石垣島南部を一周。磯辺から北上してカラ岳の西を通過し、大里から武那良田原橋を通って暁の塔を右へ、石垣島製糖の交差点を右に切れ、名蔵湾まで出て、なたつ橋経由で市街地に戻り、サザンゲートブリッジを再度渡って、ランコースのある南ぬ島に入っていた。
石垣島南部のアップダウンの厳しい走路をバイクで駆け抜けたあとは、フラットな南ぬ浜の埋め立て地で風を切って走り、公園に用意されたブルーカーペットからゴールテープを切っていた。
この大会は第9回八重山郡トライアスロン大会と2023JTUエイジグループ・ナショナルチャンピオンシップシリーズ第一戦の2つの大会も同時開催で実施されており、総合で男女各1位から3位までが表彰されるほか、年代別に男女が各1位から3位まで表彰される。またリレーの部門もあり、68組が参加して1位から3位までが表彰される。
また83名の八重山に住所がある人が八重山郡民大会参加者となり、男女が各1位から3位まで表彰されるほか、あやはし県民大会への参加補助も各1位から3位が得られる。また字別の対抗の部門も設けられており、地域でも楽しめる大会となっている。
2020年のコロナ禍による中止から、2021年、2022年とスタート会場とゴール会場での観客なしでの縮小開催を2年続け、先が見えない状況から、今回ようやく、3年ぶりに観客をスタート会場およびゴール会場に入れての開催を実現。
会場では、この日を待っていたアスリートらが互いに再会を喜び合うシーンがたくさん見られて、コロナ禍を明けつつある喜びに満ちた感慨深い大会となっていた。
優勝は山本淳一選手(50)で、ITUトライアスロン時代から知られるレジェンドが2019年以来の2度目の栄冠を獲得していた。
1996年からはじまったITUトライアスロンワールドカップ石垣島で、何度も活躍したアスリートだった山本選手は、石垣島では名の知れたレジェンド。今は千葉で若いアスリートの指導にあたっており、この日もその指導している高校生のリレーチームと子弟間の熱戦を披露。
指導の成果を見せる結果となった模様で、最初のゴールは高校生子弟のリレーチームがゲットしていた。前日に足首をひねってしまい、足の調子を不安視して、スイムとバイクで差をつけておく必要を感じての展開が功を奏したとのこと。
スタート時に膝くらいの深さで水に飛び込む選手がある中、高く跳ねながら走る距離を長くして飛び込み、そのままトップでスイムを終え、バイクも2位に大きく差をつけるレース展開で、狙い通りのレース運びとなった模様。
女子では、松本文佳選手(28)が優勝。石垣島トライアスロンは2度目だと述べた後に、「改めてきれいな景色を見ながら走るというのはすばらしいな、最高だなというのを、再び思いました」と笑顔で述べ、仲間とともにエイジレースを楽しめたことを表明していた。
2年前に参加したコロナ禍の下での大会と比べて、応援の声が多く聴けて、「これが石垣島の本当のレースなんだと思いました。」と、賑わいある雰囲気を大いに喜んでいた。
今回は、90歳のアスリート稲田弘(いなだひろむ)さんが、90番と最初のウエーブでスタートして、そのしっかりした競技ぶりに大いに注目され、無事完走。ことのほか多くの人の声援を浴びていた。
ゴールした稲田選手は、第一ウェーブで強豪が集まる組とともに出場したことに面食らった模様で、手が当たり、水中眼鏡が飛びなどして、いままで経験がなかったスイムスタートとなったことを吐露。一時はあきらめかけたが、集団から離れて泳ぐことでしのいでの厳しいスイムを突破。その後は、応援の声に励まされ、ゴールできたことを喜んでいた。
記者は、90歳になっても続けられる秘訣を聞くと、いつも続けられようにあるには、どうあればいいかを考え続けると述べていた。
自身で考え、実行して、思う効果が出た時の喜びは一入だと述べ、練習はできるかぎり毎日やる続けることが大事だとしていた。
稲田さんの話を聞いて、記者が気づいたことは、外部者が長寿の秘訣や、体力の維持の秘訣を聞きたがる声には、何かをすれば良いという答えを求めて、そこで徳しようという魂胆があるということ。稲田さんは、絶えず自身の体力がトライアスロンを続けられるようにするには、どうすればいいかを日常で細かに吟味し、考え続けることが大事という。
記者の安直な答えの求めぶりに、実は問題があるかもと、発見をした次第。
長寿の秘訣や体力維持の秘訣は、どうすればいいかを自身で考え続けて、自身で見つけだすことが何を招くか。そこで頭を使い、体を使うことで、自身で実現できてくるものを生むということ。そうして、実際に90歳でトライアスロンのゴール完走を実現している現実。これから稲田さんが目指すのは、トライアスロンのロングディスタンスの国際大会への参加資格を得られるレースへの挑戦というから、凄さは計り知れない。
本人の状況を本人がしっかり見て、何をしたら良いかを考え続ける。
できそうで、むつかしいこのことを稲田さんは、実現している。
もしかして、アスリートの究極の姿勢がそこにあるかも。
さて、この日、完走できた喜びをゴールする瞬間に、各々表す人が、続々続いて、なかには赤ん坊をとともにゴールする夫婦も多数見られた。
ゴールする風景も時代と共に推移するものがあるということかも。
(流杉一行)