5月11日、沖縄県はクロマグロ漁の採捕停止命令を発令して、今季前期のクロマグロ漁の停止を命じた。
これは5月11日時点でクロマグロの親漁の漁獲量が知事管理漁獲可能量の95%を越えたことから発動したもの。停止期間は7月31日まで。(前期終了日)
漁獲可能量は180・6トンで、5月11日時点で133・9トンが水揚げされ、船上では40・3トンが見込まれて、合計174ト・2トンとなり、漁獲可能量の96・4%がすでに採捕したこととなり、停止命令が発令されたもの。
2019年からはじまった沖縄県のクロマグロ漁の漁獲制限は、4年目となる。
沖縄県の割り当てが年々増加傾向ながら、八重山漁協では制限初年2019年の223本(45t)からはじまり、一昨年2020年はワクチンなしのコロナ禍で深刻な需要のひっ迫と、航空便の減便の中、550頭(105t)を捕獲。島外への輸送の困難さから地元では良質のクロマグロが多数出回った。これまでにない現象で、漁師には酷だが地元消費者には幸運な年となった。
昨年2021年は、ようやく届いたワクチン接種スタートの年。光が差したがそれでもデルタ株が登場。需要のひっ迫は、クロマグロ約400頭捕獲と、豊漁に見舞われつつも、5月18日の早期の停止命令となった。
かくして、今季は5月11日と、なお早期の停止命令で、八重山漁協では10日の水揚が約140本で、船上分は不明ながら、200本いくかいかないか。2019年よりも少なくなる可能性が起こっている。
ただ、停止命令後も、船上のクロマグロが続々水揚げされており、石垣市内の刺し身屋や居酒屋に出回っている。
この時期、2年前のようにクロマグロが入荷した石垣島の刺身屋の前で「ホンマグロ」の旗がなびくところだが、見かけることが少ない。盛大になびいていないのは、島で出回るクロマグロの量が少ないからかも。
短い期間に水揚げが殺到するとどうなるか。需要にもよるが、高く買う豊洲の仲卸も無理せず買えるとなれば、その分、値段は上がらない。
採捕の形を、供給過多にしないように、やりたかを考える必要はあるはず。
なお、八重山漁協での今季初のクロマグロの水揚げは4月13日。そして5月11日の停止命令は、あまりに終了が早い。
<マグロ問題にあるもの>
昨年は、停止命令5月18日以前から、クロマグロの肉質も落ちるからと、出漁しない漁船も見られた。
今季の早い採捕停止から何が考えられるか。これから南下してくるクロマグロが採捕されず、無事産卵をする親漁が増えることになれば、卵が増える。それでクロマグロの数が増えるのを、願うばかりということになる。
しかし、100キロ前後かそれ以下のクロマグロを、大資本が出す巻き網漁法の100キロ以下の小さいクロマグロ漁。これが大量に水揚げされれば、市場の価格は、逼迫需要の下でなお下がる。なお安くなる。
製糖を運ぶ規模の貨物船のような大型の巻き網船で、魚探を使ってねらいを定め、大掛かりに網を広げて、クロマグロの群れを捕らえる。また大問題は、魚探で産卵期に海面へ上がってくる親クロマグロを、ごっそり捕獲することもできる。
実際に、日本海でこの漁がはじまってから、一気にクロマグロの漁獲量が全国で激減したという。
全国の延縄、一本釣り漁の漁師は、国がこの巻き網漁への配慮を優先していることに、不信感を募らせている。大手企業を操るのは資本家だ。高額配当をねらって収益優先の社長にまかせる。持続可能にはならないことは、まずやめねば。
(流杉一行)