今年最初のカツオ船が水揚げ

 6月16日午後1時30分頃、石垣市新栄町の新栄漁港に第一源丸(上地源船長)が入港し、今季最初のカツオを水揚げしていた。

周囲の高齢のウミンチュも様子を見に来て、初ものの水揚を確認。季節の到来を実感していた。

 この今期最初のパヤオでのカツオの水揚は、約1トン少々で、石垣島南20キロのパヤオ3か所を巡っての漁獲。天候と潮が良好ではなく、強風と波で移動にも時間がかかった模様。

 それでも、船長含め総勢14人が協力してパヤオに集まるカツオやマグロを竿で次々に釣り上げる漁法で、8割はカツオ、2割はシビマグロ(マグロの幼魚)を捕り、中にはツムブリの姿も見られた。

 この日、市内のさしみ屋も今年初のパヤオのカツオ船が入ると聞き、続々カツオを求めて漁港に集まり、水揚げされたカツオのサイズを見定めてカゴにとり、購入していた。

 コロナの影響で、景気は厳しい状況ながらも、ハーリーが終わった直後からはじまる季節ものともいえるパヤオでのカツオ漁とあって、7、8人がカツオを手に、今年最初のパヤオのカツオを購入していた。

 例年、カツオの獲り勝負に熱が入るところだが、今年はコロナの影響で慎重なのか、集まった人は皆静かだった。

 第一源丸の船長の上地源さん(30)は、「コロナの状況ですから、まずは出航できてよかった。たくさんの人にカツオを食べてもらい、コロナに勝つぞという気持ちで食べてほしいなと思います」と、カツオをアピールしていた。

 今年の最初の漁は、1トンと少々。多い時だと4トンは揚がると、船長は述べ、海の様子は風が強く、波もあり、パヤオを3か所巡っても振るわなかったが、これからが本番だと、豊漁に向けて意気込みを見せていた。

 なお、この日は、第一源丸のオーナーが経営するさしみ屋のマルゲン水産平得店で、藁焼きあぶりカツオが販売された。

 これは、マルゲン水産が新鮮なカツオを藁で火を焚き、あぶってつくっているカツオの叩きを、実演。特に今回は、石垣市赤土等流出防止営農対策地域協議会が提供する藁代わりの植物で、叩きを実演してみせる形となった。

 午後5時頃、上地源氏が水揚げしたばかりの新鮮なカツオの刺身の冊を、串刺しにして用意。そのカツオの叩きとなる素材を、乾燥した藁代わりの植物をドラム缶のコンロに置き、着火すると、あっという間に炎が上り、瞬時に燃え盛るとすぐに消えていた。

火の通りの速さと、瞬時に消えることで、新鮮な中の刺身が生かされ、周囲に通った火により深いカツオの香りが放たれて、それがカツオの叩きの味に反映されていく。

 この日に取材に来た記者らは、調理されて出た藁の代用植物によるカツオの叩きを試食。これまで感じたことのない香りあるカツオの叩きの味に驚いていた。

「人によっては、もったいないという人も居ますが、これが源のカツオの叩きです」と、上地さんは、胸を張って、藁が見せる新鮮なカツオが見せる叩きの味を誇っていた。

 今回紹介の藁代わりの植物は、同協議会が農家に赤土対策としてグリーンベルトにしているベチベルで、赤土が流出しないように畑の端に植えて、赤土対策の代表的な品種。

 丁度イネ科の植物でもあり、藁と同じ燃焼ぶりをで、この日、その燃焼効果を上地さんが実証。記者を前に実演してみせた。

 赤土流出防止用に活用されているグリーンベルト用の植栽ベチベルは、成長が早く、活用の仕方はないかと、同協会は模索していたところ、このカツオの叩きで使われる藁の代用を考えついたもの。

 同協会の農業環境コーディネーターの藤原理夢氏は、赤土対策に取り組む農家と漁業者との連携が、ベチベルで藁の代用をすることにより、実現できてくると、農業と漁業をつなぐものになると述べ、今後の展開に期待を寄せていた。赤土対策は、海の環境へ直結することから、関心は高まりそう。

 藤原氏は、「今後は、まずマルゲン水産で活用してもらい、その後、ほかの刺身屋へも、要望に応じて、活用の途を広げたい」と述べていた。

 環境保全を通じて、漁業と農業が連携する形が、見えてくることになるとは、新しい時代の幕開けを予感するうれしい取り組みといえそうだ。

 なお、カツオは居酒屋のマルゲンは緊急事態宣言で休んでおり、刺身はマルゲン新川店とマルゲン平得店で販売。藁によるカツオの叩きはマルゲン平得店のみで販売しているとのこと。

(流杉一行)



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