このところ八重山漁協の荷捌き場では本マグロの水揚げが続いており、5月2日には、萌丸、第八みちたけ丸、第六源丸の3隻で16本の本マグロが岸壁リフトの音を軋ませていた。
小さな船倉口から引っ張り上げられて、その巨体を周囲に晒すと、その迫力は何度見ても見事なもの。漁協の職員はサイズと重さを計り、次々に段ボール箱に収納。本マグロは本土市場に向けて出荷されていた。
この日は、名古屋、神戸、東京と、本土の市場に向け送り出されており、本マグロの尾を切り、その中身の状態を予測して、肉質に応じて発送先を選定する模様。
関東は脂の乗りが良い傾向が好まれ、逆に赤身の良さで値が張る市場は、脂は少し敬遠される。地域によって好みがあり、そこの加減を把握することは、長年の経験が必要になってくる。
漁協では、脂の状態を、身を切らずに、外から部位に当てるだけで計測できる機器があり、その値を確認しながら、状態を把握。実際に切り分けない以上、予測値でしかないが、それを頼りに、市場を選定するなどして、手探りの出荷を続け、割合良い成績にある模様。
今年の本マグロ漁は、4月から水揚げが始まり、値段はキロ3000円が最高値だったが、ゴールデンウイークに向けて、需要が幾分伸びたようで、良いものは4500円台に入ってきているという。
実は八重山漁協のゴールデンウイークの休日は、1日、2日、3日で、3連休だったが、外洋で漁をするマグロ船が本マグロを積んで戻ってくるために、急遽職員らが対応。
早朝7時半から入港に備え、この日続々着岸する船から揚がるマグロを、次々に梱包して出荷していた。
コロナ禍で需要の伸びが鈍く、コロナのない普段ならゴールデンウイークの時期ならキロ1万円もあり得たものが、今は漁師には実に辛いところ。
加えて、やっかいな漁獲制限。本マグロの国際機関による漁獲制限が始まって3年目でもあり、県ごとに与えられた制限枠のあるうちに漁をしなければ、やがて制限トン数が迫れば、漁は出来なくなる。
できる限り早い段階での漁となるのは必定ともいえる。コロナ禍と漁獲制限に挟まれた厳しいマグロ船の船主らには、ゴールデンウイークは大事な時期。緊急事態宣言のない市場への出荷で望みを持ちたい。
なお、石垣市内の刺身屋では、本マグロの旗があがり、島は生の本マグロが賞味できる期間に入っている。
値段は一パック1000円からがメイン。昨年あった厳しい減便は、今季ないためで、コロナ禍ながら、少しは上向いている景気が感じられる。
日本各地の市場へ送られて、マグロの需要は健在といったところ。ゴールデンウイークに、本マグロの旗がある刺身屋へ足を向けてみてはどうだろう。なにしろ生ですから。冷凍品の解凍ものではありませんから。
去る4月30日には、台風2号の通過後に一斉にマグロ船が出航したこともあり、6隻(稜丸、覚佳丸、ひの丸、第一善幸丸、第一勝丸、源丸)の帰還船が26本の本マグロを水揚げして、八重山漁協は活況を呈した。
ゴールデンウイーク前の出荷に間に合わせることに成功したことになる。また、5月1日の2020東京オリンピック聖火リレーイベントでは、大勢の観光客が市街地に溢れて、飲食店はコロナ禍に入って今までにない活況を呈したばかり。そういう意味では、2021年のゴールデンウイークは、コロナ禍の中ながらも、景気浮揚を引き起こして、マグロも需要喚起に一役買った模様。
5月2日の離島桟橋も相当の観光客であふれており、本土での主要都市での緊急事態宣言の下ながらも、どこからともなく観光客が来訪しているのは、否めない。
4月29日にはコロナの変異種が八重山で初の確認となり、厳しさが迫りそうな中、活況のゆくえがどうなっていくのか。島に住む人誰もが、行動に慎重になるゴールデンウイークとなっている。
昨年のゴールデンウイークは、1万円分の石垣牛が5000円で配布という、超お得なサービスが行われたのが、今は懐かしい。
あれから1年たってのゴールデンウイーク。観光客があることは、少しは有り難いが、しかし心配も、昨年以上に膨れ上がる。
ワクチン接種が高齢者に始まり、一般にはもうしばらくかかるが、変異種出現から、また先が見えなくなると思うと、心配の種は尽きないこととなる。
(流杉一行)
その他の関連の本はこちら▼▼▼