八重山から初の貨物チャーター機 787型機で羽田へ23トン

 5月27日午後3時16分、「南風ぬ便り」(ぱいかじぬいやり)チャーター便と名づけられた、石垣発羽田行きのボーイング787-900型機が、石垣市長や竹富町長など出発式に参加した約20人が見守る中、南ぬ島空港(新石垣空港)を無事離陸して、北の空の彼方へ舞い上がっていった。

 この臨時チャーター便は、八重山市町長会が全日空(ANA)の協力の下、実現したもので、八重山の自治体連合がチャーター機を飛ばすのは八重山史上初のこと。新型コロナウィルスにより物流の滞りを、八重山市町会が補助する形で解決を図るもの。

 日本最南端八重山諸島は県庁から400キロも離れた場所。これまで定番の積み残しで苦しんだ物流への思い切った施策でもある。中型機のボーイング787-900型は、人を乗せなければ積載貨物30トンが可能。

 この日、本マグロ、パイン、インゲン、オクラなど23トンがコンテナに積まれて、同機のコンテナ格納庫に呑み込まれていった。

 積載された本マグロは、この日、石垣島ではピークを迎えて、一日の水揚げ34本と今季最高の水揚げを記録。

そこからこの日17本が本土向けにコンテナへ積載されている。豊洲へは11本が送られる。

250キロある巨体の本マグロは、小型の737型機ではコンテナがないために、人力となり、積載に限度がある。

コンテナ搭載可能な中型機の利用は、まさに本マグロ輸送には必定。例年、東京の豊洲市場への上場をねらう漁師には、今年の新型コロナウィルスの影響で起こった減便は、まさに大きな痛手と言えた。

 水産物に限らず、農産物などでもユーパックや宅配での送付が遅れる傾向で、那覇経由や船便回しで対応するも、大きな支障をきたしてきた。

 そこで、八重山市町会は、国の一昨日における緊急事態宣言解除の流れを汲みながら、対応策を検討して貨物チャーター機のフライトを計画。

 この日、その第一便が実現し、その出発式がおこなわれた。
 挨拶に立った八重山市町会長で石垣市長の中山義隆氏は「緊急事態宣言の全国的な解除により、一歩一歩経済回復へのスタートとして、一丸となって取り組む、期すべき日となりました。本日、貨物積載は36コンテナ全て満杯となりました。果樹・野菜等農作物パイン約15トン、本マグロ17本、ゆうパックでのその他個人貨物1・5トンの本土直送がかない喜ばしい限りです」と述べていた。

 ANA石垣八重山支店の宮脇秀至支社長は、「このような形で、八重山の産品の輸送に協力で来たことを喜んでいる。旬な八重山の産品をしっかり送り届けたい」と述べていた。

 なお、6月3日には第2弾の貨物チャーター便を、九州経由で東京への便を模索中で、その時は与那国のカジキも輸送していきたいと述べていた。なお、今後、10回ほど輸送する予定とのこと。

 離島の離島といえる八重山諸島。本マグロやパインと、恵まれた産品もつ自治体の大きな悩みが輸送の問題。有望な産品があっても、人気になれば積み残しでトラブルを抱えてしまう。この思い切った施策を機に、自治体が主導して輸送問題の解決策を持つことになれば、不幸中の幸いとなる。

 なお、県の補助でJTAによる臨時便が5月28日・29日と石垣那覇間で小型ジェットの737型機が飛来する。今後、本マグロはユッカヌ日あたりでカツオ漁に変わり、パインは6月7月のハワイ種のシーズンに入ってくる。

 はたして、今後の経済需要はどうなるか。そして台風シーズンにも入る。離島の物流の厳しさは破格になる。この臨時便でフォローされながら新型コロナと上手に付き合いつつ、地道に進むしかない。

 全世界が、先行き見えないが、経済回復を目指し新たな地平を模索するのみ。

<追記>787型機! ありがとう!

  5月28日の市役所での記者懇談会で、27日に豊洲送付の本マグロが早朝のセリで、キロ1万円を記録。8000円の値もついたものもあり、送った成果が披露された。最高のタイミングの787型機チャーター便だったといえる。

 この5月下旬の時期、本マグロの肉質は、産卵を繰り返して、すでに痩せはじめている。しかし、時々出る上質の本マグロが今季最高の7000円出れば大喜びのところ、なんと1万円。破格の値段は、漁業者を喜ばせる。石垣島のブランドが光るというもの。つらい時期の、運送業者も、漁業者の努力も報われるというもの。なにしろ、キロ1万円は平時の最高値で、しかも10年前にはあり得ない値段。

 水産課長の「202キロの本マグロが1万の値をつけた」という報告に、「キロ1万円といわないとわからない」という副市長の声は、記者の水準を低く見たのか、市長がわからないと見たのか。誰も突っ込まないところは、不思議な空気感。一事が万事。こんなに喜べる話が、どこかに行ってしまったのが残念。

 6月3日(未確定)にも飛ぶチャーター便に向け、漁業者も力が入るはず。豊洲の大卸も、仲卸も石垣島産本マグロに黙って注目する流れ。楽しみだ。

 日本最南端の自治体の連合が、新型コロナウィルスの運輸停滞から、初めて放ったチャーター便で生まれたキロ1万円の生の本マグロ。全国ニュース級の話題だ。

 (流杉一行)
 

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