新型コロナウィルスで石垣島は3人目の感染者を出した15日、集団感染の可能性から新型コロナ外来を、翌々日の17日午後1時、石垣市営球場に設置。市内は日中から車の数がなくなり、静寂に包まれている。
中心商店街ユーグレナモールは閉店ラッシュ。シャッターが降りまくっている。
周辺も同様。
4月17日、緊急事態宣言が全国に発信された翌日となるこの日の午前9時の八重山漁協の魚のセリで、アカマチが多数、セリ値が付かない事態が発生。漁師や漁協関係者は驚きを隠せない状況となっていた。
アカマチは、沖縄の三大高級魚として知られており、アカジンミーバイやマクブーとともに沖縄を代表する魚だ。
漁獲量がいくら多くとも、値崩れしても売れ残ることはない。セリで値がつかないことなど、これまでなかった。それが値が付かない。
この日、3から5匹ほど入ったトロ箱に×印の紙が次々に置かれていく。×印のアカマチのトロ箱の合計の重さは約50キロ。考えられないアカマチのあぶれ。周囲で見ていた漁師も「これまで見たことがない」と驚きを隠せない。新型コロナが生み出した珍事といえる。
刺身屋さんを兼ねる仲卸は競った魚を、漁協の職員へ依頼して、フォークリフトを使って漁協の冷蔵庫に移動。はりきって、さばききる構え。
すでに漁に出ている船の関係者は、この売れない魚の事態に頭を抱える。島で待機する漁師も、出発を中止して、今期の漁を見送るしかない。現在、本マグロ(クロマグロ)漁の時期でもあるのだが、海のダイヤと称される本マグロにも安値しか付かない事態が起こっている。ダイヤが安値になっている。
この日、キハダマグロを水揚げする船を迎えた船主は、続々水揚げされ、見事な大物キハダを前に、「いったい、どうするんだ」と困惑の声。元来、喜べる光景が逆に本島や本土の市場に送っても、値が付かない状態で、これらの大物をどうするかである。もはや漁協の冷凍庫に眠らせるしかない。
一方で、旧離島桟橋の横で20年以上営業するマルハの鮮魚店が、20日に入港予定のマグロ船のマグロを、大盤振る舞いで安値販売に踏み切るという。実は17日、アカマチでてんぷらを揚げ、あっというまに品切れにした。聞いたことがないアカマチ天ぷらだ。
店の女主人は「20日は、いつもより格安で売るので、どんどん来てほしい」と記者にも宣伝依頼。お客を呼び込んでいた。マルハは旧離島桟橋の時代も、観光客が刺身を買い込んで船に乗り込んで離島めぐりパターンが多かった。そこにきたこの観光客ゼロ。今度は新鮮な魚を、広く島人に食べてもらうと、張り切っている。
また、マル源の平得店では、新鮮な本マグロを販売している。17日の店先はすでに2日前に品切れという。やはり本マグロは完売スピードが違う。
この日、マックスバリューにも島産の本マグロが並んでいた。今は、航空便も旅客機サイズが小さくなって、便数も削られて送れない。となれば島内消費。本マグロが島で食べられる時期が、グッと近まっているのだ。
しかもそれは、年中食べられる畜養と呼ばれる養殖の本マグロではない。近海でとれる、正真正銘の天然の本マグロ。島外出荷されるはずのマグロが島で食べられるようになっている。
本土でも、生の本マグロが食べられることはマレだ。ほとんどは冷凍。島は、生が普通だから凄い。島人であれば、見逃すには惜しい。移住者にも、島に来た喜びがあふれるというもの。
そう、今は、島の様々な水産物の高級なものが島で食べられるようになっている。緊急事態宣言から、各市場の値段の下落からパッタリなくなった島外出荷。水産物の島内での食卓需要は、大いに期待されるところ。
セリで安値になれば、刺身屋に並ぶことになる上物の新鮮魚。漁師がやる気を失う前に、刺身屋で上物を買える好機を見逃さなければ、生産者も消費者もウインウインとなるのだが・・・。
(流杉一行)