観光を通した八重山圏域の発展に向けて

 3月19日午後3時からANAインターコンチネンタル石垣リゾート1階「真栄里の間」で、八重山ビジターズビューロー主催の観光フォーラム「観光を通した八重山圏域の発展に向けて~DMOの事例を学ぼう~」が開催された。

 これは前回、12月7日に開催された観光フォーラム「日本版DMOとは」に次ぐもので、この時、参加者からもっと具体的な事例をという要望から、今回の開催となった。

 当初、観光庁観光地域振興課観光地域政策企画室長DMO支援室長の河田敦弥氏による講演が予定されたが、変更があり同じ観光庁観光地域振興課の広域連携推進室長の濵口信彦氏が代役をつとめ、「観光を通した八重山圏域の発展へ向けて~DMOの事例を学ぼう~」の演題で講演を実施。

 濵口氏は、前回開催の内容と同様の、日本の将来に起こる人口減少を観光客誘致で穴埋めし、観光による経済効果をあげる手法を説明。観光による目標値を示す「明日を支える観光ビジョン」を示して国の観光政策を披露。今回は、現在取り組まれている、和歌山県田辺市(世界遺産熊野古道)、兵庫県篠山市(古民家再生)、徳島県三好市(民宿受け入れ農家)、山梨県北杜市(八ヶ岳)、瀬戸内地域(クルーズ船と古民家)、岐阜県高山市(エコツーリズム)、三重県鳥羽市(海女小屋体験)と、事例を細かに説明。日本人向けのものを翻訳してコンテンツをつくるのではなく、外国人の心に刺さるコンテンツ作りの必要性や、コンテンツに立ち入り禁止の場所の写真を入れるなどすると、外国人からサギだと指摘されてしまうケースなども紹介。専門業者に委託してチェックする必要性を滑り込ませていた。

 このあとは、地域での推進体制となるDMOについての話となり、地域資源を最大限に活用し、効果的・効率的な集客を図る「稼げる」観光地域づくりを推進するために、地域の多様な関係者を巻き込み、加えて科学的なアプローチも取り入れた地域づくりをする拠点を構想。

 それがDMO(デスティネーション・マネジメント(マーケット)・オーガナイゼーション)で、各地で形成・確立がはじまっているとしていた。

 このあと、第二部のトークセッションがおこなわれ、コーディネーターにJTIC(日本語インフォーメーションセンター)SWISS代表の山田桂一郎氏を迎え、講演者の濵口信彦氏と八重山ビジターズビューロー会長で石垣市長の中山義隆氏とトークセッションを実施した。

 観光によって八重山の税収をあげて、地元を潤すための仕組みづくりを重視する山田氏は、八重山全体の観光の長でもある石垣市長と、今回のDMO講演の濵口氏に、今後の八重山観光の方針や伸びしろを、Q&A方式で重要視する部分を抽出。

「どんな観光客が来てほしいと思うか」を問う山田氏に、市長は「滞在日数が多く、島でしか味わえない体験型の講座、島のアクティビティーなどを楽しむ人です」と答えると、「クルーズ船は?」と山田氏が少し刺激すると、市長は「クルーズ船の観光客では台湾の人が多く、夏場には台湾線が就航するので、単独で八重山に観光に来てくれるようになってほしい」と話を継ぎ、「台湾線はまだ細い線でしかないのが現状」と述べるにとどまっていた。

 安いチケットでの日帰り観光、クルーズ船などの島で宿泊しない観光、島でのごみ処理、し尿処理、外資の観光業参入者で土地高騰、環境問題や地元の経済活動へ混乱を生み出すツアーなど、負担増となる現状が進む八重山観光でもある。

 観光が外来の資本に牛耳られ、誰のためのものかか問われてくる問題も話題にしつつ、「マスツーリズムがリピータにつながるよう施策例はないか」と山田氏に振られて、濵口氏は「一回来たお客さんをつなぎとめる方法は、地域では、あまりないですね」と答え、山田氏は「竹富町ではカードなどを発行して、取り組んでいるが、通信速度の影響もあり、なかなかが難しいのが現状。来られた人をデータとしてマーケティングにつなげているところはない。」と述べていた。

「ファンクラブはどうか」という山田氏の問いかけに、市長は「ファンクラブはいいアイデアだと思う。パスポートなどをつくれたらと思うことがある。思い返す楽しさもあると思うし、アプリが開発されるといいと思う」と答えた。

 会場からの質問が紹介され「八重山の観光はどのような持続可能な発展となるでしょうか。そこでのDMOの役割は?」という質問に濵口氏は「青い海、青い空、亜熱帯雨林の山々が八重山のイメージで、地元の人がそういった自然をどう守っていくかが、大事なものとなる。海でいえば石西礁湖は竹富町と石垣市の間にあって、海の自然を次世代にもつないでいくことが大事だと思う」と、自然の持続可能な利用に触れていた。
 
  山田氏は最後に「観光客にファンとして将来へ永い付き合いをしてもらえる意味で、お客様と関係構築をどのようにやっていくかを考えることをすれば、その行動や消費を知り、地域で稼ぐことを通じて、波及効果を生み出す方法を「みえるか」することで、地域全体で観光について考えることになる。」と述べ、「市長にはお客様に末永くおつきあいできる体制づくりをしていただけるといいと思いました」と述べた。
 

 (流杉一行)

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