持続可能な観光と陸と海の保全

 世界有数の多様性を有する八重山のサンゴ生態系は、近年、オニヒトデ被害と海水温上昇によるサンゴの白化現象で、厳しい状況が続いている。

 恒常的に起こっている、降雨時の赤土流出の発生源へ対策など、陸域から取り組みをしてきたNPO法人石西礁湖サンゴ礁基金とWWFジャパンが、社会全体でサンゴの減少を食い止める、新たな環境対策を模索している。

 平成30年度独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて、このほど「2019 サンゴ認定に関するフォーラム 八重山の持続可能な観光と陸と海の保全」をNPO法人石西礁湖サンゴ礁基金が主催して開催。

  これはサンゴ礁から恩恵を受けている事業者や、サンゴへの負荷を増大させている事業者に、サンゴの大切さを認識してもらい、それへの対応を促進させる術を編み出そうと、模索されているもの。仮の名はサンゴ認定。

 3月17日午後1時半から石垣市大浜信泉記念館多目的ホールで、サンゴ礁の保全に関心の高い市民が41人が集まり、文教大学国際観光学科教授の海津ゆりえ氏を招いて「持続可能な海の観光への眼差し」と題する基調講演を聞いて、世界での海のレジャーの歴史から実情までを報告した。

 人にとって海辺とは海の幸をいただく生活の場であり、海歩きをはじめとする海のレジャーは、いわば海の幸の「おすそわけ」と述べ、「そういう意味では海の事業者は海について深い知識を持ってガイドに当たるべきで、海の特徴や魅力、希少性や、どうすれば海をまもれるかを知っているべき」と、海の観光業への期待を述べ、海の状態や課題に絶えず情報のアップデートをするとともに、海の事業者間の連携が必須と延べ、たたき台を提示していた。

 また最後に海津氏は、J・F・ケネディーの言葉「ムーンショット」をあげ、月へロケットを打ち上げることを意味する「ムーンショット」を続けたことで、月面着陸を可能にしたように、どうサンゴを守りながら観光を続けることができるかを、ムーンショットを描きながら、模索していきたいと、締めくくっていた。

 基調講演のあとは、話題提供として、5人の講話が行われた。

  沖縄本島恩納村真栄田ビーチの人気スポット「青の洞窟」で、沸騰する人気から地域での混乱を回避するべく組合をつくり対応している実情を語ったのは、当地でガイドをしている株式会社ナチュラルブルーの星原貴保氏。

 混乱時代からルールづくりによる効果など、海岸環境の劣化を低減させ、地域への貢献に取り組む実態を述べていた。

 なかでも米兵の来訪で時化でも海に出て救助対応を強いられる事態もあり、沖縄本島の大変さを伝えていた。

 課題の対策として、ルールの厳格化、ビーチクリーン、サンゴ植え付けやオニヒトデ退治、観光公害対策費や環境負担金、路上駐車の整備などを恩納村真栄田海岸保全利用協議会と恩納村ダイビング協会としての取り組みを紹介していた。

 このほか、ナチュラルブルーとしても、地域交流を進め、子どもたちへの教育にも寄与して、「海育」として環境教育を展開。地域との背店を大切にしていく話を披露していた。

 また地域をリスペクトすることが、持続可能なものにつながり、「流行」は文化にしなければとのべ、「観光公害の解決に向け、持続可能な海の観光を盛り上げるというゴールに向かって関係機関の連携を図る」ことの大切さを述べていた。

 このあと石垣市環境課の羽地学氏による米原海岸における利用ルール策定の取り組みの実情を披露。

 原因不明な溺死者が多く、海水浴場ではないにもかかわらず、一部の間で人気があるため、この海岸の危険性を知らずに利用する人が多いことで知られる米原海岸での利用ルールづくりの現状を報告していた。

 環境省西表自然保護官事務所の竹中康進氏からは、「西表島の自然環境保全と持続可能な利用に向けて」と題する講話がおこなわれ、世界遺産指定を2年後に控えて、その問題点や対策を披露。世界遺産の指定後に訪れる混乱への対応への言及もしていた。

 アウトフィターユニオンの大堀健司氏からは吹通川地区保全利用協定の取り組みと課題を披露。

 また、WWFジャパンの小林俊介氏からはインドネシアサイニング・ブルーの取り組みを披露していた。

 話題提供の講話のあと、北九州市立大学人間関係学科教授の竹川大介氏の進行によるデスカッションが行われてた。

 冒頭、竹川氏から外部者がもたらす観光と地元社会との関係性を問題提起する事例として、氏が長年研究するバヌアツの社会を紹介。

 そのあと、基調講演や話題提供した人への質問を募って、意見交換とディスカッションを実施していた。
 

 (流杉一行)
 



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