尖閣の魚が石垣市のふるさと返礼品に 初水揚げ

 11月6日午前10時、石垣市新栄町の八重山漁協の荷捌き場に沖縄三大魚のひとつアカマチ約450キロが水揚げされた。

 入港した船はZENKOUMARU(名嘉秀三船長)。

 石垣市から委託を受け、石垣市のふるさと納税の返礼品となるアカマチ146・5キロを獲るためZENKOUMARUが出漁に出たのが11月3日夕方。4日、5日と尖閣諸島魚釣島の南西で漁を実施。6日の早朝に帰還した。

 漁は魚釣島南西のエリアではアカマチのいそうな瀬を見つけて、そのバリ探りながら、仕掛けていく一本釣り。この日、船からバーキ(籠)で9回も運ばれた色鮮やかな赤い魚体が荷捌き所に広がった。赤一色に敷き詰められたアカマチは、どれも太って2キロ以上がほとんど。名嘉氏も「こんなにサイズが揃うのはそう多くない」というほど、尖閣諸島周辺が豊かな漁場であるのを、荷捌き場の光景が示していた。

 石垣市は、8月1日からふるさと納税の返礼品メニューに尖閣アカマチを加えて10月15日に一旦締めを実施。この間、3万円の寄付者62件、5万円の寄付者12件、10万円の寄付者11件のふるさと納税が寄付された。かくしてこの日、この返礼品のアカマチの初水揚げが行なわれたもの。

 今後も募集は続けられ、次の漁は来年3月頃になるとのこと。

 石垣市役所企画政策課の佐渡山拓巳係長は「寄付していただいた人に、尖閣で獲れた魚を味わっていただき、尖閣が豊かな漁場であることを知ってもらい、そして尖閣で漁をする漁業者の支援につながればという趣旨でのふるさと納税です」と述べ、尖閣の問題について多くの人に知ってもらうことがねらいと述べていた。

 今回の名嘉さんのアカマチは、船上で血抜き神経締めが実施されており、水揚げされたアカマチはどれもしなやかに魚体が曲がるいかにも新鮮さがみなぎる状態。一匹ごとにするこの作業は漁師には骨が折れる作業。しかし、これができる漁師は少なく、名嘉さんに委託されたのも、これを常時していることからだった。まず、これがされた魚は味がちがってくるとのこと。

 石垣市から委託されたのは146・5キロで、ほかの300キロは、血抜き神経締めのアカマチとして八重山漁協が沖縄本島や島外へ出荷する。

 血抜き神経締めのアカマチがは沖縄本島でも珍しく、今後の評価が待たれるところだが、まだ脈は薄い模様。

 7日午前9時からの八重山漁協のセリでも出される予定で、価格にどんな変化があるか、見ものとなっている。

 なお、6日の八重山漁協のセリではアカマチの値段は安いものでキロ1050円。高くてキロ1200円と、魚全体に値が安めで、そこが響いた相場。

 沖縄本島でも安値で3桁に落ちる傾向にもある。通常は、キロ1800円ほどの高値の魚。そこに血抜き神経締めのアカマチがどう値に現れるか。

 ただ、いえるのは、その価値を味で知る一般消費者や、魚好きが通う店にその味を知る一般顧客が増えなければ、なかなかすぐに反応は難しいかもしれない。仲卸の力量次第。

 ただ、大きな鮮魚市場には、高級料亭に位置づけられる店とつながる仲卸が存在する。料理人が大事にされるホテルでも、品位を底上げするには、料理の質がものをいう。マネジメントをしっかりした顧客の絞りにポイントを置き、将来性を見据えたリピータ獲得の姿勢に重きを置く観光業者には、この付加価値ある魚の存在を、生かし切れてこそ八重山観光。

 尖閣の話題を利用して、全国に関心を惹く政治性はきな臭いが、それよりも八重山の魚が見直される契機になれば、利活用したいところ。

 産業の基盤は第一次産業。地域の自然の恵みからいかに、英知を結集し、知恵を巡らし付加価値を生み出すか。無駄を抑え、捨てるところなく利活用を貫き、自然の資源を有効にプランニングする。そのビジネスモデルの模範ができれば、全産業にも活用される。
 
 観光産業だけを煽り、不動産バブルで、島の自然を荒らす無駄な投資を許していては、今始まっている中国の無人のマンションの林立が示す廃墟と同じ道をいくことになる。

 価値の薄い投資を繰り返し、価値の薄い生産物を積み上げてGNPの数値だけで、国が富んでいると錯覚した中国。まさに廃墟が広がるばかり。

 同様に価値の薄い投資を繰り返し、瞬時の儲けで逃げを打つ自由な資本の参入を、島に住む市民は監視すべきでは・・・。もちろん、自由な資本を支援する人士も・・・。

 さて、11月7日の八重山漁協のセリでの尖閣アカマチのセリ値は、1200円から1100円、1000円が多かった。ほぼ昨日と同じ値といえる。一般市況に順々と合わせた値のつきかたであり、日常のセリ値である。
 ホテル関係に強い仲卸が、先頭に立って次々1200円から1100円の間でセリ落とし、購入していた。
 血抜き神経締めのアカマチでしか実現しない料理が、宿泊者や味にうるさい地元を唸らせることが起こって初めて、セリ値もあがる。凄腕の調理人がいなければ、生かせないかも。

 養殖の魚のミーバイやヤイトハタは、血抜き神経締めが普通で、天然ものの血抜き神経締めは、普及の最中らしい。ただ、その効果は島人が知ってほしい。知れば、一般家庭が贈答用に真空パックの品の購入を考えるかも。(アカマチ一匹を料理する家庭があるか? あればかなりハイレベルな家庭だ。)

 あの三川地区のパインように・・・。2000年の最後のパイン工場の閉鎖時は、今のような贈答用のパイン販売はなかったのだから。今は当たり前だが、当時は2年がかりの博打の栽培。パインの味を信じて三川地区の農家の婦人らが突破口を開いて、今がある。
 そういう記者も、血抜き神経締めのアカマチの味の違いはわからない。是非とも、わかることができるイベントをやってほしいところ。
 これは、もはや尖閣の話題ではなくなっている。

  (流杉一行)

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