やいま食卓会議開催 国内5番目の取り組み 三菱地所

 「タベモノヅクリで地域と都市の関係を豊かにする」を合言葉に、食と農に関する産業支援施設を計画する三菱地所が全国で「食卓会議」を開催している。

 このほど五か所目として石垣島で開催を決め、7月2日から4日の3日間、やいま食卓会議と銘打って嵩田農家&島外組の交流会と食農&サステナブルフェアー、そしてミーティングDAYを開催。(宮崎県宮崎市、奈良県曽爾村、北海道積丹町、大阪府大阪市の4か所で開催)

 地域の枠を超えて、食と農のネットワークを構築し、地域のチャレンジャーの発掘支援を推進するべく、地域でのフィールドツアーと交流会を通じて、地域の学び合いを生み出す試みを実施している。

 7月4日には10時から嵩田公民館で座学が実施され、島外メンバーの三菱地所の広瀬拓哉氏から「めぐるめくプロジェクト」について説明があり、食と農に関するネットワーク構築を目指し、1年半前から取り組みを実施。地域ではぐくまれるツベモノヅクリのチャレンジをするグループを探し、その支援をしていく取り組みが始動。全国20か所のリストも示して、進行ぶりを示していた。

 横浜のデザイナー事務所HOCの濱久貴氏が、未来のゴールを描きながらデザインすることを実践している話を披露。公園のデザインを「創って終わらない、育てていって伝えることで、自身ができる持続可能な未来への手段だとしていることを述べていた。

 また、「TETO TETO」の井上豪希氏が、料理研究家の視点で暮らしの感度を高める目的で、氏が持つ多彩な人脈を駆使してチームを作り、食に関わるブランディングをしていることを披露。

「わくわくをつくる」をキーワードに、売り上げを全体で分け合う方法を実施。お金を目的とせず、共感を軸につながり、アイデアを出し合い、結果を出して、貢献度に合わせて分け合う方式。価値を作ろうとしている人を応援したいという発想で生まれたと述べていた。

 また食品加工場を中心にして面白いことができるのではないかと思うと述べ、規格外の作物の利用を考えるなど、新たな試みを披露。理想を語りながら、様々な可能性を述べていた。

 「次の70年」をつくるプロジェクトを各地で立ち上げている70seedsを運営する岡山史興氏と大森愛氏が、その取り組みを紹介。岡山氏は富山県の小さな村(人口約3000人)に移住して農業のブランディングや教育に関する取り組みをしていることを紹介。大森氏は自身の自己紹介をしていた。

 この日は交流の起点となる互いの自己紹介を、ブランディングのキャリアや方法論を披露して、食と農の可能性を石垣島の嵩田のメンバーに披露しているように見えた。

 この後は、石垣島メンバーからの座学が行なわれ、沖縄県農林水産部八重山農林水産振興センターの大田守也氏が八重山の農業の概要を紹介したあと、花谷農園の花谷まゆ氏が農薬や肥料に頼らず、炭素の循環で野菜作りに取り組むその仕組みを、詳しく披露していた。

 そのあと、石垣島嵩田でマンゴーとアセロラの栽培する「かわみつ農園」の川満起史氏が、この日集う石垣島メンバーを紹介。

 午後からは、互いの意見を交換して最後は次回に向けた提言を発信。タケダ地区農家ネットワーク計画案が公表され、賛同を得るなどして、充実した一日にしていた。

 日本の東京オフィス街の大家ともいわれる三菱地所が実施するメセナの取り組みに、全国5番目に目を向けられた嵩田地区は、 八重山では優秀な果樹園経営で知られる農家の多い農村。そこで集まる農家が、さらなる飛躍をねらい、日本最南端からの農業課題に突破口をつくるべくプロジェクトを始動。今後の取り組みに全国規模で関心が集まるかも。

 2009年の企業による農地の借入自由化で、企業参入が自給率向上にどう結び付くか。また資本の注入から本格化しかねない海外資本の動きも気になる。

 観光振興が新空港の開港で促進した結果、大手のホテルが外資系に買われ、ハゲタカの売買でオーナーが変わったところも発生した。

 そんな中、地域で活性する農業を支え、食を見つめる状況をデベロッパーの国家レベルの大企業が支援する構造には、目を見張るものがある。昨今、外資の参入で京都観光も地域にお金が落ちない構造をつくられ、日本全体で何をするにも自由化が進み、規制緩和から外部資本流入が目立つ。

 ましてや円安。今ある外国人観光も、円安が理由。株価上昇も円安による高騰で、買っていない日本人からすれば、株価で起こる格差そのもの。景気の指標にはならない。

 企業が潤っても株主が外部資本なら、考えるまでもない。

 農業は国の根幹でもあれば、有能な農業関係者の結束が外資に利用される前に、つなぎとめることこそ、将来の重要資産。

 最南端亜熱帯の日本の農業支援は、ある種のアジア圏での可能性も広げるもの。いろんな意味で、意義深いはず。

 ただ、かつてあった、ブランディング熱の再興に見える戦略は、どこか残念。消費者の心に届くものを目指すことを、ブランド化とは言ってほしくない。あれは過去の用語。

 自由化に乗っかって、資本がやる横暴をきれいに聞こえさせる響きがある。

 かつて安価な航空路線自由化で発生したオーバーツーリズムは今も課題だ。その現象のおかげで世界時おこったコロナウイルス禍は、グローバリズムが原点。自由化熱が危ないものをオーバーさせてしまった。

 万時、地道な取り組みで中身に定評が生まれてはじめて、長続きがあるはず。

 八重山は短い滑走路が、外資の参入を遅らせて、今豊かな自然が残る八重山があるのかも。
 
自由化のそばでは慎重な判断が求められる。

(流杉一行)

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