4月22日午前10時から石垣島カラ岳の麓で沖縄県立八重山農林高校全校生徒による草刈り大会が行われた。
沖縄県立八重山農林高校(与那嶺国彦校長)が毎年実施しているもので、農業クラブ員の活動として実施されるとともに、総合学習の授業の一環としても行われている。
一昨年は、コロナの影響で中止となり、昨年は再開。今年は、コロナ禍の影響で午前だけの開催となり、学年ごと、一人に設定されている刈り取る目標重量は従来の半分で、短い時間での大会となっていた。
10時25分に一斉スタートの号砲がなると、生徒ら289名が、カラ岳の斜面に鎌を手に侵入。各人思い思いの場所に散って、草刈りに専念していた。
目前は新石垣空港の滑走路が見え、時折、離陸する旅客機に手を振ってみせる余裕も見せながら、草を刈る様子も見られた。
冒頭の開始式で、学校側から空港にカラ岳での草刈り大会の実施を伝えてあると生徒らに紹介し、空港でも乗客に案内するといっていたとの話も添えていた。生徒らに余裕があれば、航空機に手を振るようにという教諭の話に、体力ある生徒が乗ってのこと。
この日は、晴天に恵まれて、熱中症への注意から、水分の補給を連呼する教諭の声も響く中、それでも航空機に手を振る生徒は3年生に多く、そこは余裕があった。
ある3年の女子生徒の一人は、「一昨年は中止だったので、昨年の草刈りが初の草刈りで、雨天のためにびしょ濡れの草刈りとなり、刈った草が雨に濡れ、大変でした。今年は、晴れているのでよかった」と述べ、目標目指して草刈りに没頭していた。
今年の目標は、午前だけなために1年生が男子15キロ、女子10キロ。2年生が男子20キロ、女子14キロ。3年生は男子25キロ、女子15キロ。昨年に比べると半分だが、時間が短いために、そこはそれなりの過重となる。
テントの前では、ひとりひとりがどれだけ運んだかが記録されおり、この日の最高の重量の生徒には、「金の鎌」と称される鎌が贈られる。意欲の高い生徒らは、広い領域の茅を求めて、計量地点から遠い場所に出て、大きな草の束を背に負って、何度も往復して金の鎌を目指していた。
この草は、農業実習の際の畑の敷き草に使われる農業高校必須の教材でもあり、またそのまま農業に必須の有機たい肥づくりに生かされていく。農業高校で自ら生徒が草を刈って、敷き草・たい肥を用意する高校は、八重山農林高校が唯一とのこと。同校伝統の取り組みとして続けられている。
八重山は亜熱帯気候のど真ん中。植物の生育が温帯気候と違って、激しいものがあり、島での暮らしには、草刈りが農家だけでなく、屋敷や施設、はては道路の植栽から、あらゆる場所に繁茂する草との格闘がある。いわば島の最初の着手仕事が草刈り。
そして、明らかに草の生育のはやさは、尋常ではない。草刈りは、安易に除草剤で邪魔者を根絶やしにするのではなく、自然のものを有効に活用するしせいは、陸の豊かさを守るSDGs15番目の目標にもかなうものにも見えてくる。
農業における草の有効な活用を、伝統の行事として実施してきた同校の取り組みは、SDGsが云われる前からのものであり、それを誇りとして続けてきたことは、同校の気風としても、高い評価に値するにことに違いない。
(流杉一行)