「オヤケアカハチ~太陽の乱~」現代版組踊大盛況

 12月24日、市民会館大ホールで、ウイングキッズリーダーズによる現代版組踊「オヤケアカハチ~太陽の乱~」の昼の部夜の部の二回公演が開催され、会場には多くの聴衆が詰めかけていた。

 次代を担う若者を育成する目的で16年前に立ち上がった「リーダー養成講座」。それが毎年年末の節目に現代版組踊を公演して、恒例の舞台として市民に知られるようになった「オヤケアカハチ~太陽の乱~」だが、今年は夏公演で「結ぬ島風」の舞台も披露。充実の舞台を展開し、島の様々なイベントにも参加するなど、リーダー養成の結実ぶりを多彩な場面で市民に提供している。

 今回の「オヤケアカハチ~太陽の乱~」は、配役とダンススタッフ合わせて82名で実演。構成は2部8幕でなり、第1幕は嵐の首里城、第2幕は恩師との誓い、第3幕は辿り着いた浜、第4幕は島役人を追い出せ、15分休憩を挟んで、第5幕は仲間満慶山と獅子嘉殿、第6幕は闇夜の契り、第7幕はアカハチの最後、第8幕は首里城再び、と展開。

 以前の冒頭は、現代の子供たちが登場してオヤケアオアハチを話題にするシーンから、歴史世界に入っていく展開だったが、今回は第一幕でオヤケアカハチと長田大主との戦闘シーンと琉球王府でのシーンからどっぷり歴史上の世界に入り、第二幕で伊波南哲が登場する形となっていた。

 伊波普猷、喜舎場永珣、伊波南哲の実際の歴史家や郷土史家が登場して、オヤケアカハチが首里王府の逆賊扱いから変貌した経緯を示すなど、史実としての謎の多いオヤケアカハチの側面に、信憑性を加える風が感じられて、流れとして少々心配要因も見られたが、楽しめる舞台であるのは間違いなく、切れのあるダンスや台詞の迫力など、今回も何度も感動してしまう舞台を展開していた。

 ただ、信憑性を加えようとするとエンターティメント性に流れの面で支障が生まれ、見る人の気持ちが別角度にずれ、ストーリーの中に入るのりが萎えてくる傾向が生まれる。周辺からの声に応えるサービス精神がうかがえるが、来場者に子供が多いことを考えると、そこは別物で考えるのがいいかも。

 若い人の間でスマホやITなど、コミュニケーションの淡泊化、希薄化、表皮化が進む中で、この世相に風穴を開ける子供たちの体当たりの舞台空気は、新世代に評価されることを祈りたい。舞台は毎年、磨きがかかっており、八重山の紅白歌合戦的な存在になる傾向が感じられて、実にうれしい。

最後に、女子のオヤケアカハチは、女子の長田大主同様に、すばらしかった。挑戦心が溢れていた。

 なお「リーダー養成講座」とは、「子ども演劇ワークショップふるさとづくりリーダー養成講座」の略。

その受講生を、ウイング・キッズ・リーダーズと称し、その父母でなる「やいま浪漫の会」がこの現代組踊を主催している。

子ども達の表現力や想像力を開発向上させ、創造性やコミュニケーション能力を向上させ、また地域づくりの意識を高める目的を持つ事業で、八重山在住の小学4年生から高校3年生までの児童生徒でなる。

費用は一人年間1万9000円。毎年4月頃に募集される。毎週土日に稽古をしている。

(流杉一行) 

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