11月19日午前9時から石垣市新栄町の八重山漁協の荷捌き場で石垣市漁業集落主催による第10回お魚まつりが開催された。(運営は八重山漁協青年部)
地元で獲れる魚介類の消費拡大をねらいとして、近年少なくなっている魚食を増やすべく、企画されてきた。コロナ禍による中断から昨年に4年ぶり復活。昨年初めて試みて好評だった一般参加型のセリを充実。イセエビ、シャコガイ、ミミジャー、方言名サキハマノオクサンで知られるトガリエビス、アカジン(スジアラ)、サッコーミーバイ(ナミハタ)、マクブー(シロクラベラ)、チヌマン(テングハギ)などに加え、ウツボやタカバーミーバイ(ツチホゼ)などの珍しいものも出ていた。実際に漁協で毎日実施されるセリ同様に、トロ箱に魚が置かれ、重さが書かれた紙が入っている。
あらかじめセリに参加する人は午前8時半に登録され、番号が与えられて、セリをする際には、その番号を掲げて値段を叫ぶ形となっていた。
午前9時にはじまると、実際のセリとは比較にならない大勢のセリ体験者が集まって、破格の賑わいを見せていた。
スタート時のセリ値がトロ箱に入っていて、そこは魚をさばく料金入り(イセエビ以外の魚介類)の高値。これは通常の仲卸のセリにないもの。その値からスタートして、セリは思いのほか高額に収まっていた。新鮮な魚が欲しい人の前で獲り合うことで、値が上がる様子が展開して、魚を獲るウミンチュにとって、目の前でうれしい値段の展開が続いていたことになるが、見られたのは一部と考えると、実に惜しい話。
このほか、10時半からはマグロの解体ショーが行われ、大きなキハダマグロが包丁一本で手早くさばかれていく様子を、大勢の来場者が見守っていた。大きなマグロの柵を披露した後は、それらマグロは福祉施設に寄贈され、贈呈式も行われていた。
アトラクションも用意され、モズクのつかみどり、ミーバイストラックアウト、モリ突き体験といった陸で楽しめるコーナーに加え、登野城漁港まで行って帰るサバニ乗船体験もあり、魚だけでなく海に出てサバニで海の風を感じられる工夫も用意されていた。
なんといっても飲食ブースは、活況を呈していて、チヌマンの煮つけ、マグロそば、アカマチそば、フィッシュバーガー、白身魚のフライ、てんぷらと、人気の魚料理が売られ、マグロ、マクブー、ミーバイなどの刺身も長蛇の列ができる人気ぶり。
10時頃からはじまった鮮魚の販売では、ボーラー、ゲンナーなどのブダイや、ビタロー、ヒーチなど多種多彩な鮮魚が売られていた。新鮮な魚はの魚肉をとった後の骨や頭を出汁にしたものの旨さを知る人は、大喜びで購入していた。
この日は、昨年同様にJA女性部からも出店があり、ジューシー、ヒラヤチー、ソーミンチャンプルー、アガラサー(黒糖入りの蒸しパン)が販売され、地産地消を推し進める同じ第一次産業のJAからの出店は、漁業と農業の連携を感じさせるもので、地元産業は第一次産業が土台になって、振興することの大切さを暗にアピール。
岸壁近くでは農地からの赤土流出を止めるグリーンベルト用植物ベチベルの更新で刈り取って干したワラをつかったワラ焼きコーナーが用意され、次々にカツオがタタキにされ、売られていた。完売するとマグロの柵を叩きにしてほしいと持ち掛けられ、マグロの叩きのサービスも実施されていた。
再度触れるが、食卓に地元の魚が上るように地域に魚需要を喚起するのが目的のイベントで、一般参加のセリに見る高額なセリは、ウミンチュにとってはうれしい光景。
この日、八重山漁協青年部の上原有市氏は、このお魚まつりは年に2回か3回できれば・・・8月の観光シーズンにできれば・・・と、夢を語っていた。
八重山では多彩な魚が獲れ、それが毎日行われるセリでも見られる。
地元の一般の人が地元の魚に関心を持つことで、購入者も増える。新鮮だからこそ評価のあがる料理も生まれれば、地元の魚の価値も上がる。そこがホテルや旅館、民宿で、アピールされるなら、やがて豊かな海を維持するために八重山の海の保全にも関心が湧く。
お魚まつりは、島の周囲に展開する海の価値をあげるものとなるとすれば、島には大事なイベントでることは、間違いない。産業まつりや石垣島まつりの商品中心の傾向は、消費者を大切にする意味では正しいかもしれないが、生産者が潤わなければ、島は潤わない。
(流杉一行)