海鳥保全シンポジュウムin石垣島 環境省

 8月19日午後7時から石垣市八島町の国際サンゴ礁・研究モニタリングセンターで海鳥保全シンポジュウムin石垣島が開催された。

 これは、昨今、海鳥の保全に向けた取り組みをする環境省が海鳥の周辺に起っている状況を市民に把握してもらい、その保全についての知識を高めるために開いたもの。

 この日は、国指定仲ノ神島鳥獣保護区管理員の水谷晃氏に「八重山諸島の海鳥たち 仲ノ神島の楽園復活と瀬戸際の沿岸アジサシ」の演題で講演を。またこの日名護市の屋嘉地鳥獣保護区管理員の渡久地豊氏による「国指定屋我地鳥獣保護区~アジサシ類の飛来状況と保全活動」が講演され、海鳥の保全についての専門家の意見が披露された。

 このシンポジュウムは、会場への参加者15名に加え、ネットによるZOOMの参加者60名が加わり、お隣西表島から本土まで、多くの海鳥に関心ある人が、自由に参加できるシンポジュウムとなっていた。

 水谷氏は、仲の神島における海鳥の状況を、歴史をさかのぼって説明。カツオドリ、シロガシラカツオドリや、セグロアジサシ、マミジロアジサシ、クロアジサシ、オオミズナギドリ、アナドリ、アオアシカツオドリなどが生息し、コグンカンドリやシラオネッタイチョウなどがたまに現れるなど、今の実態を紹介。

 自身で調べてきたデータや前任者のデータを突き合わせて、かつては少なかったカツオドリやセグロアジサシは、80年代卵捕りを規制し、鳥獣保護区としてからは、観光客の上陸を規制。

 島でのメインコロニーの場所から散って、島の各地に移動して生まれたサブコロニーに移動していたが、観光客も近づく事がなくなると、サブコロニーからメインコロニーへ移りはじめて、今はメインコロニーに集結するようになっているという。

 観光船やダイビング船が近くを航行するときに、不審な上陸者を見かけると、通報してくれるようになっていると、観光関連の人々が協力的になってくれていることを紹介していた。

 また、石垣島でのエリグロアジサシやベニアジサシの営巣について、これまでの調査から営巣数が減っていることが紹介され、その原因に営巣地の近くでのキャンプやレジャーを楽しむ人の影響で営巣を放棄する。あるいは釣り人による接近で親鳥が卵を放棄など、釣り人が一日そばにいることで、卵から離れ、卵は熱にやられてしまうなど、営巣の失敗を招くことが増えるとのこと。
 この現象をいかにするかに、保全の将来がかかっていると述べていた。

 このあとの渡久地氏の講演では、屋我地島の鳥獣保護区での海鳥の保全について語られ、エリグロアジサシやベニアジサシの飛来する時期や営巣を始める時期、そして飛び去る時期を詳しく披露。寿命も23年10か月と長いことも紹介。

 越冬地もエリグロアジサシがインドネシアで、ベニアジサシがオーストラリアのグレートバリアリーフだったことが、報告されていた。

 渡久地氏も釣り人が捨てた釣り糸がアジサシに絡まり、死傷するケースが多いことを紹介。親鳥と雛が揃って釣り糸に絡まり死
んだ写真も公開していた。

 渡久地氏の出身地が地元屋我地で、この地で生まれるアジサシが9000キロも旅をして越冬地へ行き、またこの屋我地の営巣地へ向けて9000キロの旅をすることを思うと、「自分たちと故郷が同じで彼らの営巣地を大事にしてあげたい」と述べ、野鳥の営巣環境を大切にする取り組みも紹介していた。

 この日、会場を見回すと、参加者15人中八重山出身は竹富島から参加した上勢頭保氏ひとり。ほかはほとんどが本土出身者や沖縄本島出身者で、八重山出身者が関心を持つ機会が失われている現状を物語っていた。

 なにより日本野鳥の会石垣支部や、カンムリワシリサーチなどの愛鳥家の組織からの会場参加もなかったこと。野鳥観察をはじめ、自然ガイドが多数いる石垣島で、島に飛来する野鳥のシンポジュウムに足が運ばれない事態は、残念としかいいようがない。これは環境省に対する人気の無さなのか、あるいは昨今の観光客数の増加による多忙なためなのか。

 質疑のコーナーでは、ZOOM参加の山階研究所から、北海道の鷲が海鳥を襲うケースに関する環境省への対応を問う専門的な話が舞い込んでいた。

 全国的な海鳥保全の話は、少々飛躍しすぎに感じたが、海鳥に関して共通課題を感じているまでに至っていない愛鳥家組織の一面が感じられた。

 WWFジャパンからの質問もなく、名だたる自然環境団体が気軽に出られない空気があるのか。残念。

(流杉一行)

この記事をシェアする