8月7日午後2時から石垣市民会館大ホールで南の島の星まつり講演会が開かれた。
今年の同講演会は国立天文台副台長の吉田道利さんによる「金銀プラチナ、ブラックホール」という演題でおこなわれた。
会場には、石垣島内だけでなく島外からも天文ファン40名が集まり、ブラックホールに関する最先端の講演を聞いて、宇宙の神秘に触れていた。
この日の演題にある、金、銀、プラチナが、広大な宇宙のブラックホールとの関係について、壮大な規模の話を、わかりやすく解説されていた。
記者流に要約すると、全宇宙の物質元素は核融合でできており、ブラックホールができる過程で生まれているという。
物質の元素は多々あるが、その元素がどうやってできたかを説明。それが核融合でできることや、それが計り知れない高温と高圧の下に生まれる話で、世界の最初のビッグバンで起こった核融合で水素とヘリュウムが生まれるも、それは3分間だけ核融合であるために、一気に冷めるので水素とヘリュウムしか生まれない話。
そしてわずかなリチュウムとベリリュウムが生まれただけで、ほかの元素は、ビッグバンでは生まれていないと、出だしから壮大過ぎる話が展開。
宇宙に散らばる恒星の中で核融合が起こっていて、太陽では水素の核融合で、水素がヘリュウムになる核融合が続いているという。
この核融合で水素からヘリュウムになることで3%の質量が奪われるという。この失われた3%の質量がエネルギーとなって太陽が燃えているという。1gをエネルギーに変えると、水1gを沸騰させるには400ジュールで、それは 20万トンの水を一瞬で沸騰させることができるとも。20万トンは50mプールの100杯分の水で、それを一瞬で沸騰させる力があるという。
こんな調子で、核融合を解説。原子力発電は、不安定な元素の核分裂でエネルギーを出すが、星の核融合は星の重さが核融合を起こす。自分の重さが原因で、自分で自分の中心を押しつぶして、核融合が起こるという。
太陽の0.08倍より重たくなると、水素の核融合が起こってヘリュウムが真ん中でなる。太陽の6割程度以下の星は、その後、白色矮星になる。
それより重い星は、ヘリュウムが核融合して、酸素と炭素になり、8倍以下の星は超新星になる。8倍以上の恒星は、炭素と酸素が核融合して、中心でネオンとマグネシウムになる。
もっと重い星は、ネオンを核融合してケイ素になる。
さらに重い星は、ケイ素を核融合させて鉄になる。
そして、太陽の30倍以下が中性子星になり、30倍以上がブラックホールになる。
で、鉄より重い元素は、星ではつくれない。
では、どうやってほかの元素はできたか。
核融合にはsプロセスとrプロセスがあり、sプロセスでは、1000年に1個の遅いスローペースで水銀、チタン、鉛ができる。
rプロセスは、ラビットプロセスといい、それは多数の中性子をぶつけることで生まれるプロセスで、これが中性子星で生まれるとされたが、最近それは間違っていることがわかり、中性子星が中性子星と合体することで生まれるとされたとのこと。
そこで金、銀、プラチナはどうやってできたか。それは中性子星と中性子星が合体したことで、生まれた元素であり、もし金や銀、プラチナに触れることがあれば、中性子星の合体によって生まれたものとして見ると面白い。
貴金属も宇宙の神秘の塊として見られるという話。
ちなみに、人が呑む水は、水素と酸素の分子でできているが、この水素はビッグバンで生まれたもので、その時にしか水素は生まれておらず、人の呑む水が、ビッグバンの時の水素を摂っていることになるという。身近な水が壮大な宇宙と結びつく話には、驚きであろう。壮大な話が身近に来ているのが面白い。
質問コーナーでは、多くの参加者が質問をして、それぞれが思う宇宙に関する不思議に思う側面を、確認していた。
天文ファンには、最高の充実した時間となった模様で、最後まで席を立つ人がなく、参加者は熱心に話に聞き入っていた。
戦争、温暖化、コロナ禍、食料危機、気象変動、天災と、混乱要因の情報が続々現れて、不安な時代が続きそうだが、天文の壮大な話は、別次元で人々をひとつにしてくれそうな・・・。
多くの人がもっと天文から見える世界に触れれば、世界は平和になるような気がするが、そこにつながるものが星まつりにほしいところ。
今回、果てしなく広い宇宙がウラン元素までの自然にある92元素だけででしかできていないとすれば、広い宇宙も案外狭いかもと、宇宙の全部を知った気になる。
(流杉一行)