4月24日午後1時30分から石垣市民会館中ホールで八重山の海と島のフォーラムが開催された。
これは特定非営利活動法人石西礁湖サンゴ基金が主催するもので、石西礁湖自然再生協議会と環境省沖縄奄美自然環境事務所が協力しており、石垣市と竹富町が後援して行われた。
まずは主催する特定非営利活動法人石西礁湖サンゴ基金の宮本善和理事から「八重山うみしまフレンドシップ」なる八重山地方の海と島を守る輪を広げるための登録システムが紹介された。
海を守る行動や、環境負荷を少なくする取り組みをしている個人や団体、事業者だけでなく、これから予定しているケースも含めて「八重山うみしまフレンドシップ」に参加登録をしてもらい、海と島を守る幅広い交換情報・交流の場をつくろうというもの。
WEBやスマホからも登録でき、ネットやSNSで情報交換ができるもの。
この取り組み主体は石西礁湖サンゴ礁基金及び連携・協働する団体で、そこが運営し、石西礁湖自然再生協議会のワーキンググループが母体となる。
そこでガイドラインの提供も行われ、行動のレベルアップも促していくという。
登録することで得られるメリットは、ロゴマークが提供され、様々に活用か可能となる。またWEBサイトや印刷物などで登録者が紹介される。登録対象は八重山地方すべての事業者、団体、個人のほか、八重山地方を応援する事業者、団体、個人、広範囲なもの。
意識高く取り組んでいる人や、これから目指したい人には刺激になると思われる。
この日は運営資金も説明され、寄付やファンドレイジングでの資金確保が述べられていた。八重山の海や島に関する広い認知度と、広範囲からの支援が必要とされる模様。
さて、コロナ禍になる前の2019年、八重山圏域入客数147万人のオーバーツーリズムや、市民の生活圏での弊害、水不足の不安やゴミ処理、し尿処理などにかかる負担など、過重な観光客対応で、島がへとへとな状態が見えていた。
持続可能な取り組みをどう展開するかは、大きな課題だったが、SDGsの連呼はされても、具体性は個々人の余裕に任される格好。
今回、サンゴ認定制度の模索から生まれたこの八重山うみしまフレンドシップは、大きな期待がかかる。
さて、この日の参加者は、中ホールでの直接参加以外に(先着順150人定員)、ZOOMによるオンラインでの参加も可能で、ZOOM希望者は23日までに参加申し込み必須となる。全国から参加できる大規模なイベントとなっていた。
ただ、この日の直接参加者は23人と少なく、ZOOMの利便性は、応援講演や登壇してフォーラムに参加した人には、少々寂しいものとなっていた。
この日は、応援講演が二人の講師から実施されていた。
石西礁湖自然再生用議会副会長の吉田稔氏が「八重山の海の変化と私たちができること」と題して、長年石西礁湖でサンゴの調査活動にかかわってきた氏による石西礁湖の変化を詳しく紹介。個人で出来る八重山の海を守るための行動について紹介していた。
また筑紫女学園大学教授の上村真仁氏は「サンゴ礁文化の継承と持続可能な地域づくり」と題して講演。
上村さんは、サンゴ礁の環境保全の必要性を説くだけではなく、サンゴ礁が人の暮らしとのつながりを持って来た観点から、サンゴ礁を保全しながら、その恩恵を受け継いでいこうとする「サンゴ礁文化」について語っていた。
このほか「持続可能な地域づくりの考え方」「サンゴ礁文化の継承を掲げる意味」「地域に根ざすことで世界とつながるること」「フレンドシップの可能性と期待について」述べていた。
応援講演のあとは、八重山地方での持続可能な地域づくりに取り組む団体、事業者、個人の取り組みが紹介され、八重山青年会議所、特定非営利活動法人西表島エコツーリズム協会、石垣島アウトフィッターユニオン、特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所、ダイビングサービスWAKE UP CALL、株式会社花谷農園、一般財団法人竹富島地域自然資産財団から、各代表がおよび個人が取り組みを紹介していた。
そのあと、主催者から安東正行氏と宮本善和氏が進行して、デスカッションを実施していた。
サンゴ礁と人々の暮らしが密接につながりを持った時代の白保が、新空港建設で潰されそうになった海を守ったことから、注目された環境保全運動。そこにあったサンゴ礁と人々のつながり。八重山の昔の暮らしが見直され、自然とともにあったサンゴ礁文化も浮き彫りされていった。
この日のフォーラムに、その立役者だったNPO夏花や白保魚湧く海保全協議会の参加がなかったのは残念だが、サンゴ礁の海を守り、地域づくりに生かしてきた経緯が、今の環境保護の観点を新たな地平を生み出している。
ただ、SDGsが、持続可能な開発(デベロップ)にある観点は、注視するところ。持続可能な地域づくりなのか、暮らしなのか、開発なのか。
そう、すべてなのだ。環境保全も開発も、共倒れの危機にあるのが、現実なのだ。
(流杉一行)