石垣市新庁舎落成 最南端の最新防災拠点

 11月12日午前10時から旧空港跡の県立八重山病院隣となる真栄里672番地で、石垣市役所新庁舎の落成式が行われた。

 敷地の南西端で石垣市役所と刻銘された石の除幕式がおこなわれた後、中学生によるマーチングバンドが市役所庁舎へ行進し、待ち構える市民の中、演奏・演舞を披露して、落成式を盛り上げていた。

 獅子舞によるお清めをした後、市役所表示版が除幕され、石垣民踊研究会によるガーリーで盛り上がり、いよいよ市役所玄関で関係者が見守る中テープカットが行われると、そこでもガーリーが舞われ、新庁舎へ入場してしばらく賑やかな玄関口となっていた。

 この後、式典会場では、八重山でかつて行われた、新築の建物の完成時に実施する伝統行事アーラヤーノヨイが行われ、5名のユイピトンガナシにより、無事な建物の完成を神に感謝し、市民をはじめ多くの関係者無病息災を祈っていた。

 このあと、新築祝いに昔歌われたとされる松ん金ユンタが披露され、出世物語の古風な謡を会場に響かせていた。

 式典前に建設過程のビデオが上映され、空撮で見る新庁舎を映し出した後、式典が行われた。

 挨拶に立った中山義隆石垣市長は、「隈研吾氏の設計提案を採用して伝統的ながらも独創的で、市民が誇りを持てる庁舎として建設し、新しい石垣の顔となると思う」と述べ、中央に総合案内所、キッズスペース、授乳室、バリアフリー多機能トイレなど、旧庁舎では望めなかった課題をクリアする設備を紹介。

 耐震構造も制振ダンパーなる強度が高く、揺れを吸収する鉄骨構造を紹介。非常電源、備蓄倉庫もあることで、災害時の備えとなる地域防災拠点施設としての機能も維持可能と述べていた。

  沖縄県知事の祝辞などのあと、平良秀之市議会議長も祝辞を披露。51年の歳月を経た旧庁舎は老朽化狭隘化がすすみ、新庁舎への建設が図られたことを述べ、東日本の震災や明和の大津波の教訓から、高台移転に決して、防災拠点化を目指しての新庁舎で、市議会の議場も身近に議会が感じられるつくりや工夫があり、車いすスペースも設置されていることを述べていた。

 西大舛高旬八重山市町会副会長の祝辞の後は、建設に関連した関係者への感謝状が贈られ、式典は閉幕。招待者150人に随行者を加えると約200人が式典に参加しての落成式は、コロナ禍のゼロ連続の中で、無事終了した。

 午後2時からは、一般市民の内覧会が実施され、市役所の駐車場は市民の車で一杯になっていった。

 玄関で体温を測定され、紅白の饅頭をもらって、市民は広大な市役所内を見回っていた。

 広さに喜ぶ人や、立派さに感心する人など、これまでの市役所とはがらりと変わった姿に目を見張る人で、戸惑いながらも、うれしそうに市役所の2階、3階を見学して、新しい市役所を見届けていた。

 玄関からすぐの市民の広場は3階まで吹く抜けになっており、3階から見下ろして、眺めに驚いている人が多かった。

 議会の議場でも、市民が次々に来て、広い議場を見て、傍聴席に座ったりなどしていた。議会の様子は、市役所各課でもTVで見られ、一階には市民も見ることができる場所が、近日出来ることを、議会事務局職員が述べていた。

 新たな機能に、喜びを示す反面、
「もう少し、座る場所を増やしてほしい」と高齢者の声が聞こえた。
「こんなに広い役所なのにエレベータは狭いね」とは、利用していた女性の一言。
「売店前の敷石が小さいのは、台風時は飛ばされるのは間違いない」とは、建設関係の市民。
「吹きさらしの場所と、市街地とは、台風の風の強さは違うから、大丈夫かな」という声も聞かれた。
「台風がフィリピンから島の南に来るとき、東から暴風は始まり、南東の風が最高に強くなる。南から南西へ風向きが移って、去った直後の返し風の西風が、これがきつい。」
「60mクラスは、何が飛んで来るかわからないから、どの家も木やアルミの暴風戸(雨戸)を家に設置している。周囲に建物があればいいが・・・」
「広いから、これだと最初は迷っちゃうね」
など、様々な声も聞かれて、会場は新品の市役所に触れ、皆、上機嫌で帰途についていた。
 コロナ禍のこもりから、解放されつつある中の、晴天の日の新築市役所内覧会は、市民にとってはいい気分転換だったことは間違いない。

 なお、市役所一階には市民食堂が15日11時からオープンされる。売店も隣でオープンし、売店名は「672」。これは住所の真栄里672番地からついているとのこと。

 事業費は89億円。敷地面積3万159平方メートル。地上3階、地下1階。鉄筋コンクリート造、一部鉄骨。市民駐車場は231台駐車可能。優先駐車スペースは5台。
駐輪場は100台。

 平成28年(2016年)2月の住民投票で旧空港跡地に建設が決まる。あれから5年で落成。


 
(流杉一行)

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