サシバが3000羽飛来 鷹柱で魅了

 10月16日午後4時頃、石垣島バンナ公園スカイラインの渡り鳥観察所から多くのサシバが飛来しているのが見られた。この日を期待して集まった愛鳥家14人が、双眼鏡や望遠レンズ付のカメラを構えて、サシバの飛来を観察していた。

 今年は、同所からサシバの飛来が9月30日に1羽確認され、早期に群れをなして現れるのを期待したが、台風の影響で強風が続き、9月15日にようやく350羽ほどをこの同観察所で確認。この日は、うわさを聞いて集まった愛鳥家14人が、次々にできる鷹柱をはるか遠くの雲の彼方から、すぐ近くの公園内の上空まで、360度どの方角からも鷹柱を堪能。長年、観察を続けてきた愛鳥家からは「これはこれまでの観察の3番目くらいの多さ」と、驚いていた。

 愛鳥家のガイドを職業にしている人は、「今日は、ちょっと覗いて、すぐ別の場所へいくつもりでカメラを車に置いてきたが、あまりの多さに、帰られなくなってしまった。カメラも取りにいけない」と、次々に現れるサシバの群れに、翻弄されていた。

 遠くで大量のサシバが鷹柱をつくり、別の鷹柱が近くにできて、2つが合流し、一体化したり、雲から現れた鷹柱は、よく見ればもっと高い場所まで鷹柱が続いていたりと、いろんな鷹柱が、上空で舞い飛んで、休みなく双眼鏡やカメラをサシバに向けては、「いたいた、すごいね」と、声を掛け合っていた。

 北東に現れた遥かに遠い鷹柱に皆が驚いていると、「あれはこちら着ますよ」を声をかける人がいれば、別の方角にも大きな群れを発見。そちらに目が行った後、さっきの群れがあそこまできていると、声がかかると、西側一面に広がった大きな群れが南西の方角に向かって移動し、また南東側で鷹柱をつくって、愛鳥家は大喜び。

 「ほら、こっちにも」と、めまぐるしい鷹柱の連続出現を、その場にいた皆で共有して、午後6時頃まで延々、サシバの観察を楽しんでいた。

 途中には雨が2度も降り、その都度、同施設の2階へ移動。雨上がりに戻れば、2度とも虹が出て、これまた愛鳥家を喜ばせていた。

 愛鳥家の常連の一人がはじめて見た人へ、「これは、二度とありませんから、本当にラッキーですよ」と、こんなに一日で多くの飛来は見られないことをアピール。

 見られた幸運を、集まった愛鳥家は皆で実感していた。
 
 なお、
 沖縄では昔、種子取祭の日の早朝に、屋敷内の石垣の上などにイバツと呼ばれるおにぎりを置いて、親は子どもたちが起床時、オウフダカ(サシバ)からの贈り物がきていると云って、子どもたちに探させて、食べさせた風習があった。

 芋が中心の庶民時代、子どもを喜ばせる行事に、サシバは一役買っていたことになる。

 サシバがサンタクロース役で、クリスマスように種子取祭を待ち遠しくする子どもが、その時代にあったというもの。(オーフダカのオーフは大きいで、大きい鷹のこと)

 沖縄には鷲が稲穂をもたらしたとする言い伝えがあり、そこからの行事。

 そんな話を知れば、遥か上空の鷹柱は、点が乱れ散って、まるで穀物の種子が蒔かれているかに見えてくる。
 
 
 
 (流杉一行)
 
 
 

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