ようやく襲来の弱い台風4号

 今年、7月まで全く台風が八重山地方に接近せず、台風銀座の異名をとる八重山には前代未聞な現象ともいえた。

 8月1日午後9時に、フィリピン・ルソン島より高い北緯の八重山の南東で発生した台風4号は、2日午後10時には石垣島南の約70キロに達し、北北西に進んで、3日午前9時には与那国島の北北東約120キロあたりに進んで、八重山を離れている。

 2日の午後9時時点で996ヘクトパスカルと小規模で、最大瞬間風速は35m。八重山から近くで発生しており、成長する勢いもなく、弱いまま接近し通過した。

 一時、暴風圏はないと軽く見られたため、雨戸を閉める必要を感じない島人がほとんどだったが、甘い判断をあざ笑うかに、風速35mほどになって見せて、一応、台風らしくなったが、八重山地域で台風というには弱いもの。

 被害といえそうなものは、何もなく、今年最初の台風の襲来というだけで、印象のない台風4号として、今年最初の台風は去っていった。

 暑い日が続いてきて、地球温暖化が実感され、今年は台風が数多くなるかに思えたが、思いがけない台風不発の年となっている。
 台風4号は弱くとも、海と空は欠航が相次ぎ、そこは定番の台風光景。深夜営業の小売店も、パンなどが完売の光景が見られた。

 台風らしさの乏しい4号だったが、やはり久々の強風に不思議に懐かしさのようなものを感じたのは、新型コロナウィルスで日常を奪われたためだろうか。

 島では定番の台風による外出自粛タイムが復活し、交通量も減る中、どこかコロナ以前を思い出す感覚は、不思議な感じがしたのでは。

 やはり本土のニュースに今年最初の台風が報道されても、去っても接近と唱えるニュースは、本土中心から見れば、そういうことになるのだろう。

 今回不思議だったのは、これぐらい台風で停電が多数出ていること。

 島では何が起こっているのかと思ってしまう。多分、木々の伸び放題で、電線がこすれたり、台風を想定しない電気工事が、随所で見られるようになっていないか。

 台風対応のキャリアある工事人が減っているのかも。工事関係者も人手不足から起こっていてもおかしくない。最近の新築のアパートに雨戸が見えないことからして、島の台風の怖さを軽く見る人が、本土でやるような感覚で仕事を頼み、あるいは仕事を受けて、危険な状態の建物が増えてきているのではないか。

 八重山で雨どいなどを設置すれば、台風時の飛翔物体になりかねないことや、ベランダの植木鉢などは、台風時の殺人飛翔物になってしまうこと。ドアの開け閉めで、指を落とす人がでることなど、台風はどこまでも危険と隣り合わせ。

 台風常襲地帯の八重山で、2020年は珍現象が起こっていることは、間違いない。

 (流杉一行)

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