八重高 県夏季大会初優勝 32年ぶり決勝進出で初栄冠

 8月2日、2020年沖縄県高校野球夏季大会(県高校野球連盟主催)の決勝が、名護市のタピックスタジアム名護で行われ、八重山高校がKBC学園を4-2で破り、1988年以来32年ぶりの決勝戦を制して、初の栄冠に輝いた。

 両チームは、初回から得点圏にランナーを置きながら得点できないまま、4回まで無得点で進み、ゲームが動いたのは5回。

 八重山高校の先頭バッターの幸喜大雅(投手)の3塁強襲がエラーを誘い、上地悠利也の送りバントがキャッチャー前で止まり2塁がアウトで、1塁は辛くもセーフ。前の試合まで打率5割を誇った花城羅文が1・2塁間を破るセンター前ヒットで、しかもヒットエンドランを決め、1塁ランナーも3塁へ。

 1アウト1・3塁で、八重山にスクイズチャンスが来る。セフティースクイズを見せ、ゆさぶる宮良忠利に、KBCバッテリーはスクイズを警戒。そこを1塁の花城が盗塁を決める。なお揺さぶりは効いてくる。2ストライクに追い込まれた宮良は、バントの体制で短く持ったバットを戻し、3遊間にタイムリーヒット。上地は生還して1点獲得。

 主将内間敬太郎の打席でスクイズ警戒の中、初球で1塁ランナー宮良が盗塁を決めて進塁。2塁3塁と、さきほどと同じ展開の直後に、今度は主将が2球目を突如スクイズバント。きっちり決まって3塁花城を生還させて2点目追加。

 ツーアウトで3塁。揺さぶりに成功している。続く下地寛太郎はこれも初球をレフト前ヒットで3塁の宮良を生還させ3点目。

 次は4番の比嘉久人がこれも初球をセンターオーバーのタイムリーを決め、下地が生還して4点目を奪取。

 この回までヒットがなかった八重山が、エラーから出塁し、盗塁、ヒットエンドラン、盗塁、スクイズバンド、初球ねらいと、多彩な攻めで4点を奪取。

 この裏に1点を取られるも、八重山の4点が最後までの響くことに。8回のKBCは大城純一郎、八重山の砂川羅杏が登場。八重山は1点は奪われたが、最終的に4-2で勝利。八重山は登録選手全員が出場する形で、リリーフピッチャー、代打などで参加。チーム一丸となっての戦いを見せた。

 この回の花城のヒットエンドランがきっちり決まったあたりから、流れが生まれてたといえそう。

 加えて、7回のKBCの攻撃で1アウト1・2塁の場面で、勢いづきかけたKBCだったが、ファースト強襲の強打を亀川がダブルプレーに抑えたことで、終盤のKBSへ行きそうな流れをぴしゃりと止めていた。

 8回もダブルプレーに2アウトと抑えられ、KBCは最終回もチャンスをつくるも1点止まりだった。
 
  守備については、4回までのゼロ拮抗から、5回の動きの後、6回は両チームピッチャーを交代してきた。KBCは豊元厚希、八重山は下地寛太郎で投げ合い、打撃陣には最初からピッチングの様子見が必要となることで、また得点できないイニングが続くことになる。

 八重山のピッチャーは7回に大城和哉を投入。8回にはこれまでの全試合に登板してきた砂川羅杏が出て、9回には1点を取られるも、最後はゴロで仕留めて1塁ベースを自ら踏んでアウトを取り、優勝を決めた。

 八重山勢が夏季大会で決勝に進んだのは八重山商工高校が2006年に制してより14年ぶり。甲子園の切符では、八重山商工高校と八重山農林高校が県大会を決勝まで進んで、八重山商工は九州大会準優勝で春の甲子園の切符を獲得。八重山農林高校は九州大会で敗退して逃している。

 今回はコロナウィルス感染の影響のため、甲子園は中止となっており、甲子園の切符はないが、県での頂点を、極めた栄誉は、長年の悲願だけに、八重山高校の関係者には特別な思いがある。

 例年、沖縄尚学、沖縄興南、沖縄水産と強豪ひしめく本島勢に屈してきた八重山勢は、離島ゆえに、対戦相手が少ない。練習試合の相手に恵まれず、島を出てするにも、経済的な負担がのしかかることにもなる。

 さて、4年前の中学生が出場する全国の離島甲子園大会が、石垣島で行われた際、開会式で選手宣誓をしたのが、砂川羅杏選手。

 石垣第二中学が出場したが、その年の覇者は石垣中学で、全国大会への切符をもって島外遠征中だった。

 留守を預かる形で石垣第二中学校が離島甲子園に出場し、準優勝に輝いた。そう、この世代の石垣中学、石垣第二中学、大中など八重山の各中学球児はグレイドに定評があった。そして、石垣島で燃えた離島甲子園石垣島大会を経験あるいは見学したことで、実になったものがあったかもしれない。4年の年月を経て、高校3年生の八重山勢の県大会優勝は、あの盛り上がりの再来でもある。

(写真は、2017年8月22日、離島甲子園石垣島大会で入場行進する石垣第二中学校野球部でなる石垣選抜:)

 実は、昨年の離島甲子園長崎大会で石垣のチームが優勝を飾っている。初優勝である。
 この3年から4年後の2022年と2023年は、また期待できるということかも。


(写真は、沖縄県緊急事態宣言でコロナウィルス自粛のため、テレビでしか見られなかった、八重高優勝の瞬間シーン。砂川羅杏選手の喜びのガッツポーズ。決まったのは3時49分ジャスト。)

 (流杉一行)

この記事をシェアする