4月3日、石垣島地方気象台がイワサキクサゼミの初鳴きを観測した。
国内最小のセミとして知られ、体長13ミリから16ミリで、幼虫の頃は1年から3年ほど地中で暮らし、3月下旬頃から成虫となって地上に現れ、ススキなどの茂みで鳴きはじめる。
この日の最高気温は26・7度で平年値より1度高く、石垣市新川の雑木林で「ジーーーーーー」と一匹のイワサキクサゼミが乾いた響きを発すると、つられて次々に「ジーーーーー」と、あちこちの茂みから、鳴き声がわきあがるが、その姿はなかなか見つけがたい。
日差しが、弱まると鳴き止む。沈黙の時間は結構長いのは、周囲を警戒してか。あるいは、日差しが十分でないためなのか。
4月に聞かれる独特な響きを見せるイワサキクサゼミの鳴き声は、近づく夏の雰囲気を感じさせる。
これから続々、ゲットウ(月桃)、テッポウユリ(鉄砲百合)などの開花がはじまり、島の原野の光景は朝露も増えだして、夏へ向けた模様替えが一層進んでいく。
今年のイワサキクサゼミが鳴く頃は、なんと世界中で新型コロナウィルスにやり込められ、日本も緊急事態宣言をいつ出してもおかしくない時節となった。
これは人類始まって以来の危機的な状況といえる。
ただ、それでも地球は太陽を巡り、日射の角度を変えて、強い日差しを受ける季節に、日々近づいていくことになる。果たして、夏には新型ウィルスは封じ込みに成功し、感染被害を終息し得るのか。
夏にひとまず終息し得ても、今度は、冬の南半球で猛威を振るうことになれば、南半球の各国から移動する人により、再度北半球への感染も考えられる。
そうなれば絶望的となろうか。ただ、この間に特効薬の開発がなり、既存のインフルエンザと同じになれば、封じ込め可能な病になる。戦いは、この開発スピードと自粛の我慢。
そして、こんな特異なビールスが生まれた原因。二度と生まれないようにする対処法を、世界が考えなければならないはずだ。
真の夏は、はるかに遠いことになる。が、イワサキクサゼミも地中暮らしに耐えての初鳴きだ。いつか訪れる真の夏を信じたい。
(流杉一行)