真栄里に凱歌 3年ぶりの総合優勝 第45回八重山毎日駅伝競走大会

 12月1日、毎年恒例の第45回八重山毎日駅伝競走大会がおこなわれた。

 午前9時、石垣市中央運動公園陸上競技場で、ラジオの時報とともにスタートの合図が打たれると、八重山16地区からの駅伝第一区走者の高校生男子16名が一斉にスタート。

 勢いよく石垣島東回り一周コースの第一走者がまず4・8キロに挑み、爆走を開始。陸上競技場のトラックを一周したあと、公道に向かって走り出した。石垣島を左回りに北部の伊原間まで展開した後、川平をめぐる定番コースで健脚を集落対抗で競うもの。

 第45回目となるこの大会は、八重山毎日新聞社が主催して続けており、八重山集落単位で駅伝を競う島全体が注目のイベント。毎年、各地域が監督の下で一丸となって取り組み、走る沿道の声援にも熱が入るスポーツイベント。

 今回の出場16チームは、3連覇を目指す与那国チームから、波照間チーム、西表チーム、新城チームと離島勢も参加。石垣、大川、登野城、新川と四か字からの4チームに、隣の平得チーム、真栄里チーム、そして島の東側の大浜チーム、白保チーム。石垣島北西部からは北部チームに川平チーム、市街地からは双葉チームと新栄町チームが参加。

 今回、意外にも3連覇を目指す与那国が前半振るわず、意外な展開をとなり、この日のレースは波乱含みの予兆を見せていた。

 まず、1区のトップは往年の6連覇、4連覇と連覇に欠け暮れた隆盛期を持つ白保チーム。赤嶺幸太選手が快走を見せた。2区では大川:仲嶺はる選手がトップに躍り出て3区につなぐも、そこでは西表:野田洋一選手がトップに。西表チームがその後4区の望月夏澄選手、5区の川満晃弘選手、6区の金田起八選手と引き継ぐも、7区で大川の大浜朋笑選手が浮上してトップで快走。

 前半のゴールを目指す重要な8区で、川平の平良武人選手がトップの走りに、西表の山下青海選手が追いつくも、また抜き返した平良選手は、ゴールを目前に、後続の高校生の真栄里:前本隆選手と新栄町:金城大雅選手の猛追にあう。激しいレース展開の中、突如波照間の大仲勝士選手が一気にトップを奪って、前半勝利を波照間チームが奪取。二位には高校生の真栄里チームの前本選手が入って、今回の駅伝の混戦状況を象徴するレース展開を具現。

 なお、この8区で3連覇をねらう与那国チームの前半アンカーの永井秀樹選手が、予想外の熱中症による救急車出動を強いられる事態となり、優勝戦線からの離脱可能性の大波乱が勃発。毎年127キロ西端から選手団が渡海しての過去に6連覇の実績持ち、今回3連覇を目指す八重山最強とも噂される実力チームだけに、驚きの事態となっていた。

 与那国はチームは、前半部分では最下位の16位から12位まで戻すも、前半ゴールは16位に終わり、その差を後半で埋めようと、激走が予想されることに。

 かくして、9区の一斉スタートは、やはり後半に強い与那国チーム:村松稔選手が本領発揮。9区をトップで一人旅傾向を印象づける走りを見せる。食い下がる真栄里チームの小林洋選手を寄せ付けない。

 このままいくかと思われたが、与那国チームの10区仲嶺吉朗選手をとらえたのは、波照間チームの大仲竜平選手。真栄里チーム佐藤友基選手は3位で後続。

 今度は、次の11区で与那国チームの原聖子選手があっという間にトップを取り返し、12区前盛希望選手と続き、13区上田修選手が川平・高嶺酒造にゴール。

 波照間チームが2位を11区仲宗根志野選手、12区仲底恵達選手と続き、13区登野城盛龍選手が川平・高嶺酒造にゴール。この川平・高嶺酒造は、前の新垣食堂前に次ぐ2番目のゴールポイントで、次の14区からは、ここから一斉にスタートが切られる。

 3位に新栄町チームの梅田裕也選手が入って、3位に粘った真栄里チームがここに来て4位に転落。総合優勝の成り行きは混沌としてきた。なにしろ、新栄町チームは8区の新垣食堂に3位でゴールしている。

 波照間、真栄里、新栄町の順が、このポイントでは、前半で最下位の与那国を省くと、波照間、新栄町、真栄里の順で、いよいよどこが総合優勝してもおかしくない事態。

 13区のゴール順位は、1位与那国、2位波照間、3位新栄町、4位真栄里、5位川平、6位平得、7位登野城、8位大浜、9位西表、10位白保、11位大川、12位石垣、13位双葉、14位北部、15位新川、16位新城。

 かくして、14区から全チームの一斉スタートが切られて、各チーム最強のメンバーが勢揃う3区間での激走が始まった。

 15区から16区へのタスキは1位与那国、2位真栄里、3位大浜、4位川平、5位登野城、6位平得、7位新栄町、8位波照間、9位北部、10位新川、11位石垣、12位大川、13位西表、14位白保の順で、以降の15位双葉16位新城は繰り上げスタートとなった。

 与那国チームの14区脇園誠選手、15区富田将史選手、16区古見仁也選手がダントツのトップをキープして一人旅ゴール。

 2位以下は混戦となって、新栄町の王滝将弘が4人を抜いて3位に食い込み、真栄里に迫るも、後半の優勝与那国に次ぐゴールは真栄里となり、総合優勝は、前半2位ゴールながら9区のタイムで前半優勝、後半は陸上競技場での2位ゴールながら3位タイムで、総合タイムがトップとなり、真栄里チームに凱歌があがった。(真栄里は前半タイム差で前半優勝、後半タイムは3位。)

 今回、これまでにない大混戦の八重山毎日駅伝となったが、最後は10・4キロの長丁場を実力者がしっかり力を見せて、真栄里が栄冠を獲得。 平成28年以来の2度目の総合優勝を勝ち取った真栄里チームは、前半を10位から7位で、目立たず中盤にいて、前半の勝負所の8区で一気に2位に浮上。9区からの一斉スタートでは3位を維持して、14区の一斉からは2位を維持。

 真栄里チームの請盛健監督は「メンバーも限られているので、(作戦に)大分悩みました。中学、高校生ががんばってくれました。強豪チームに一斉スタートで流れをもっていかれないように、人選に注意したのが効いた」と、笑顔で喜びの声を聞かせてくれた。

備考:八重山毎日駅伝は、1区から9区までが前半で、9区が10区につないだタスキ渡しの時点までが、前半になる。よって、8区のゴールである新垣商店までのタイムにプラス9区の一斉スタートから10区へのタスキ渡しまでのタイムの、もっとも短いチームが前半戦の優勝チームとなり、それが真栄里となる。
 後半も10区が9区からタスキを受けたあとからのタイムとなり、14区でも一斉スタートとなるために、陸上競技場のゴールのタイムから9区分のタイムが除かれ、13区が川平の高嶺酒造の前でゴールした各チームの時間差が、再スタートで消されるために、後半の順位はゴールした順位にはならない。記録係の計測でしか、どこが勝利したか、わからない構造になっている。
 また途中リタイアした場合の規定も、大会規則で決められている。
 よって、前半に脱水症状でリタイアした与那国は、15位のタイム51分14秒に5分プラスされて、ゴールタイムが設定されている。これに9区の区間賞となる1位爆走の村松選手のタイムが加算。前半のゴール順位が14位と認定された模様。
 後半戦の与那国は10区で波照間に抜かれたが、11区で再度トップに出て13区の途中了ゴールも、最終ゴールも1位となり、後半優勝をゲット。
 後半戦の2位が、どこになるか注目され大混戦となったが、タイム差で新栄町に輝く。総合優勝は、1分30秒差で真栄里に輝いて終了。
 公道片側を一定時間占拠する八重山毎日駅伝では、交通規制時間を短くするために、繰り上げスタートも状況に応じて判断しながら、正確に記録をとる大会を運営。群民期待のレースとはいえ、簡単ではない。ハプニングの対処もあり、年末の繁忙を迎える石垣島でもあれば(以前はあわただしい1月開催)、その難しさを45回もこなしていることに脱帽するのみ。記者の勉強不足もあるが、ダントツのチームが勝利することが多かったのもあり、勝者チーム決定の構造はあまり知られてこなかったように思う。交通事情も昔と違い、時代はスポーツの世界でも動いていることになるかも。総じて言えそうなのは、長年の体力づくり、地域愛、チーム愛、家族愛と、沿道には見えない絆が舞ってること。時代が変わっても、それが各選手に力を注いでいたとすれば、駅伝の魅力や見ごたえが注目されている理由がわかる。
  

(流杉一行)

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