国指定重要無形民俗文化財「種子取祭」が奉納舞踊

 10月20日、竹富町竹富島で国指定重要無形民俗文化財竹富島の種子取祭の奉納舞踊がスタート。

 今年の五穀豊穣を神に感謝し、来夏世の豊年満作を祈願する農耕儀礼で、二日間に渡って、五穀の種子が根ずくのを願って、神前で奉納芸能が披露されるもの。

 初日は玻座間集落が中心になって行われ、21日は仲筋集落が担う形となる。20日は午前10時から世持御嶽で庭の芸能がはじまった。

 この日は朝から曇り空で、午前9時30分頃からは小雨が降り始める悪天候。それでも農事儀礼だけあって、世果報の雨と縁起良いこととする向きもあり、観衆は傘を差しながらも次々に繰り出される芸能を堪能していた。

「種子取祭の時の雨は珍しいね」と交わす人の声が聴かれて、例年にない天候に気づく観光客もいて、リピータの多さが目立っていた。

「歓待の儀式を世持御嶽で終えた公民館執行部島の有志のみなさんは、神司を先頭に仲筋主事の水野宅へ参詣に参っており、そこでの祈願を終えると、あと5分でこの世持御嶽に戻ります」とアナウンスがあり、いつもより開始時間が遅れる中、まもなく庭の芸能が始まることを丁寧に告げて、種子取祭を見に来た人に配慮をしていた。

 まもなく世持御嶽に到着した神司と役員一同は、「ンカイ」(迎え)の巻き踊りをして大いに盛り上がった。

 その後5組の棒術、竹富小中学校の生徒・教員らによる太鼓からはじまり、マミドー、ジッチュ、マサカイ、祝い種子取、腕棒と続いて、最後はンマヌシャーで庭の芸能を締めくくっていた。

 1番棒から5番棒まで演技される棒術は、清めのお祓いの意味があるとされ、演者二人が三尺棒を使って行われる1番棒から、刀と槍、薙刀をつかう2番棒、3番棒、5番棒が展開。4番棒は、鎌と薙刀での戦いを見せ、総じて各演者はそれぞれ味ある戦いぶりを披露し、観衆からの熱い拍手を受けていた。

 太鼓は、最後尾で打つ赤い衣装の若衆姿の鉦に合わせて、いかに揃って打つかに関心が寄せられるもの。竹富小中学校の生徒と教師らは、様々な打ち方を見せて、見る人を惹き込んでいた。

 「マミドー」では、真の女性という名(真:マー、女:ミードー)で働き者の女性をモデルにされた演目で、種まきの所作が踊られている。

 「ジッチュ」は、十人の子を人頭税の重税を毎年完納しながら育て上げたことを、評価され国王に拝謁することになったときに、貧乏で袖が片袖しか用意できなかった話から生まれた演目。

 「マサカイ」は、真栄という人物が西表島への移住を喜んで受け入れ、原野を開拓してその精神が称えられできた曲「真栄節」からきた演目。担いでいるのは開墾のためのクワで、マサカリではない。

 ユークイの道唄、安里屋ユンタ、クイチャーの3曲で構成される「祝い種子取」は島外で暮らす郷友会会員の女性陣らによる舞で、島の出身者が島の伝統芸能を支えている姿そのもの。参加者の多いときのこの群舞の迫力は、見ものとなる。

 腕棒は、毎回、女性の奮闘で観衆の爆笑を呼ぶ演目。昔は男性が演じていたが人気がないために演目からなくなったが、女性がする演目に復活させると人気の演目になったとされる。

 庭の芸能の最後の演目はンーマヌシャー。馬乗者と訳される馬に乗っての踊りで、歌詞が笑いをとる内容であることを知る観衆は少ないかも。

 舞台の奉納芸能に移ると、長者、弥勒、鍛冶工、赤馬節、玻座真口説、しきた盆と続き、続々舞踊や狂言、芝居が沖縄方言で展開。

 34の演目が夕刻まで続いて、笑える舞台や人情話の舞台、美しく着飾った踊り手の見事な踊りなど、見ごたえある奉納の演目を堪能。大いに楽しんでいた。

 会場は郷友会の一行や観光客であふれて、舞台の熱演に熱い拍手を贈り、舞台の筋に一喜一憂していた。

 この日、幼子といっしょに種子取祭を見に来た女性は「このお祭りで売られるイイヤチがほしくて来ましたが、今年は出てませんでした。おいしいですよ。年に一度しか食べられないので、期待してきましたが残念でした」と、粟と粳米と小豆を混ぜた種子取祭用の餅に、ファンがいることを明かしていた。

「まだ、子どもが小さいので、演目をゆっくり見られないので」と、午前だけ見て、残念そうに午後に帰路に就く人もあり、様々に種子取祭を楽しんでいた。

 なお、奉納芸能のあとは、夜に各家々を回って、家の豊作を祈願するユークイ行事が夜通し行われ、竹富島の種子取祭の特長でもあり、誰もが参加できるとあって今年も大いに賑わっていた。

 21日は、仲筋集落を中心に奉納舞踊が行われる。

(流杉一行)



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