石垣市立図書館では、秋の特別企画展と題し10月1日から13日(7日は月曜で休館日)の12日間、「実のなる木」画家・熊谷溢夫展を一階展示室で開催している。
画家の熊谷溢夫さんは1936年生まれの83歳。金沢美術工芸大学彫刻科卒業。東京でイラスト・デザインの仕事に就き、東京日本橋高島屋、船の科学館、トヨタ記念館のイラストを手掛けた。30歳を過ぎて中米、東南アジアを訪ね歩き、石垣島へ移住。八重山の動植物や民話をモチーフに作品を制作している。
会場入り口の看板には「地球温暖化が問題になる現代、山や海の自然が破壊されて、その結果がこれです」と熊谷氏は指摘。
「木を植えようとただ言っても、なかなか。そこで思いついたのが実のなるみんなが笑顔になれる木だったら、植える気がおこるかな?と考えて、お話を作ってみました」とも、書かれてあった。
熊谷氏が描く挿絵と物語が綴られた額が壁面に飾られて、話の筋を追うように絵が用意され、物語が次々続いて展示室を一周することになる。
中仕切り側にも巡って、一つの作品が読めるという恰好。
また奥のコーナーには、熊谷さんが八重山で制作した作品が展示されており、2m半ほどある大きな作品「ニライカナイ」や、点描画の「美しい自然があるからみんな元気で生きられる」(南山舎刊)、「屏風山のハブ」、「龍の舞 八重山パイン物語」や、バンナ公園ガイドブックのほか、南山舎の「月刊やいま」に掲載されているコラム「熊谷溢夫の世界」が読めるように、バックナンバーが用意されて、熊谷さんの世界に触れられるようになっていた。
また入口右側には、「熊谷溢夫の民話の世界」と題して、熊谷氏が制作した民話の切り絵が14点展示され、八重山ではよく知られた民話の紙芝居のワンシーンが展示されている。
来場者には好評のようで、自由に書ける感想のノートには「心あたたまる美しい言葉と絵に感動しました」との記載が見られるなど、見る人の心に届いているものが綴られていた。
石垣市立図書館資料サービス係の仲程玲主事は「馴染みのある民話のワンシーンが書かれてあるので、小さなお子さんから大人の方も楽しめ、移住で来られた方には、八重山の文化を知るきっかけになると思う」と、述べていた。
長年島で活躍している熊谷氏だけに、氏の作品は多くの人の目に触れている作品。その温かみのある絵は、女性層には特に好評。
昔、年に一度は展示会を開いた頃もあった熊谷氏。
まとまって絵を見ると、氏の生物への眼差しの豊かさには脱帽してしまう。
観光沸騰で殺伐としがちな忙しい八重山。心が温まる絵が見たくなれば、まず足を運ぶといい。
(流杉一行)
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