ブラックホールは大福に似ている

 8月4日午後1時半から石垣市立図書館二階の視聴覚室で南の島の星まつり記念講演会が開催された。

 冒頭、「美ら星の歌」「星空フォトコンテスト」の授賞式が行われ、俵万智さん選による受賞者の歌と表彰および、北島清隆さんによるフォトコンテストの講評が行われ、星にまつわる詩情世界ときれいな写真に触れた後に、記念講演が行われる、洒落た講演会となっていた。

 この日の本間希樹(まれき)氏は、冒頭、自己紹介で石垣島との縁に触れ、2001年6月に石垣島VERAの建設が石垣島名蔵でスタートした時の建設担当者だったことをあかし、建設作業などを当時の写真を紹介しながら地元との交流を述べ、石垣島への感謝の言葉を述べていた。

 本間氏によると、複数の電波望遠鏡を連携させて仮想巨大電波望遠鏡から天体観測をする技術は既存にあったものの、国内で4つの電波望遠鏡を駆使しての天の川銀河の地図づくりの実績が評価され、世界の電波望遠鏡を駆使してブラックホールを撮影する国際共同研究プロジェクト(EHT:イベント ホライズン テレスコープ)に参加することとなり、今回、欧州&中国・アメリカに加え日本もブラックホールのデータ解析に挑戦して、鮮明なブラックホール撮影に成功。

 それぞれ違う方法で解析しながら解析結果が同じものとなったことで、その精度の高さが確認されたことを説明。

 国内4つの電波望遠鏡のひとつ石垣島のVERAの活躍が、世紀の大発見である世界初のブラックホール撮影と日本が関わるきっかけになったことを述べ、重ねて石垣島への感謝の言葉を述べていた。

 今年4月のブラックホールの撮影結果の発表で国際的注目を浴びた本間氏が、石垣島との縁を話し、しかも市民に馴染みの名蔵の巨大パラボラがブラックホール撮影につながった意外な話の展開に、聴衆は大いに関心をもって講演に聞き入っていた。

 この日、本間氏は石垣島にある巨大パラボラのVERAが、ほか3台(青森・水沢、鹿児島、小笠原)のVERAとともに銀河系の地図をつくるために、どんな観測をして恒星をキャッチしているかを図で示しながら説明。

 10万億倍の視力で観察する天の川銀河は、2万6000光年の彼方に中心があり、そこを恒星は2億年で一周という。

 天の川銀河の星の数は最低でも2000億個あるとされ、その地図づくりがVERAの目的とのこと。

 恒星のスピードが毎秒220キロから240キロあることを突き止め、スピードの高さは重さと関わることから、重さが約10%の誤差から天の川の重力が20%重いことを証明したとのこと。

 人で考えると、体重が20%重かったことが後で判明したことに似ていて、若い女性が体重計を買いなおしたら、20%重かったらと考えれば、その驚きが実感できるかもと述べていた。

 本間氏によると、宇宙の73%はダークエネルギーで、23%がダークマターに占められ、4%ほどが一般に物質とされる元素で、いかに人の日常の物質が宇宙に占める部分ではわずかであるかを述べ、いかによくわからないもので宇宙ができているかを説明。

 天の川が20%重い分はより多くのダークマター(暗黒物質)があるということらしい。

 このあとブラックホール撮影の舞台となった「おとめ座の楕円銀河M87」について話は展開。国際プロジェクトは、世界の電波望遠鏡を連携させ視力300万倍の電波望遠鏡を実現しての取り組み。

 ねらうブラックホールは、地球に近い巨大銀河で、撮影するなら天の川銀河か、あるいはこのM87銀河かという選択で、撮影するのに天の川銀河は近いけれど、撮影しやすさでM87銀河が選択されたことが述べられ、そして次なる撮影は天の川銀河が取り組まれる予定とも述べられていた。

 5500万光年彼方のM87銀河は、60億度の熱さで、1918年から銀河の真ん中に何かあると言われてきた。それがここ50年でブラックホールといわれ、2013年に今回の国際プロジェクトが組まれて、世界の科学者200人、その内の国内チーム日本人14名、海外のチームにも加わる8名の日本人で取り組まれて、2017年6月に6か所8台の電波望遠鏡でブラックホール撮影に成功。データを集めて解析を実施して今年4月に解析結果を発表した。

 本間氏は、ブラックホールの可視化で、ドーナツといわれるブラックホールはむしろ立体化して説明するには大福(イチゴ大福)が良いと、写真などで示していた。またお菓子屋さんがこぞってブラックホールの菓子を製品化する勢いにあることを紹介。公開日が近いことを告げて、笑いをとるなど、時折たのしく聞ける講演を展開。氏自身、NHKの夏休みの子供相談のラジオ番組に出演している経験が影響している模様。

 「ブラックホールが存在することはわかっており、それを可視化することだけが、できないままだった。100年かけて解こうとしてきたジグソーパズルの最後の1ピースが、この画像で埋まったことになる」と本間氏が述べてきたところ、なんと実際に、ブラックホールのジグソーパズルが登場した世相の反応を紹介。会場はドッと笑いが沸いて大いにうけていた。

 この日、本土からわざわざ来島した桐田敬久さん(51)は「スケールの大きさからして想像を超えます。考える時間の感覚が長すぎて・・・・。日常、気にしていることが大したことではないと思えてきますね。ブラックホールの撮影の経緯を聞いて、撮影できたことがいかに凄いことかがわかりました」と述べ、「大福に似ているという話は面白い」と、楽しく聞けたことを喜んでいた。

(流杉一行)

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