びっちゅる石、怪力奉納は雨天中止〈豊年祭シーズン突入〉

 八重山は豊年祭シーズンに突入している。
 6月24日の波照間島豊年祭から20日後の7月14日には竹富島や、石垣島の川平、伊原間などでも催され、これから月末に向けて続々と開催される予定だ。

 7月14日の石垣島北西部に位置する川平集落では、群星御嶽、山川御嶽、浜崎御嶽、赤イロ目宮鳥御嶽の4つの御嶽で、今年の五穀豊穣と来夏世の豊作を祈願する豊年祭が開催された。

 各御嶽役員らが4つの御嶽を巡って豊作を祈願したあと、各自の御嶽に戻って豊年祭を実施。

 赤イロ目宮鳥御嶽では、びっちゅる石(毎年重くなるいわれのある大石・約60キロ)を持ち上げて、練り歩く儀式が行われる。

 ヤーニンジュウ(氏子)や集まった観光客らで御嶽は賑わっていたが、この日、午後3時半過ぎから降雨し出し、やがて川平は豪雨に見舞われ、びっちゅる石を背負うのは危険と判断して、石への儀式をするだけとなった。

 関係者が拝殿で雨宿りする中、豪雨の境内ではびっちゅる石を先祖代々伝える家の大屋広男さんが、「いやーーー」と掛け声をあげて境内中央に石を転がし、神司の前において祈願。
 祈願を終えた大屋さんは、この役を受け継いで以来初となる奉納中止を神に告げたと記者団に語った。

 御嶽の神へ今年の豊作を感謝したあと、雨のためびっちゅる石の奉納を中止にする旨を神に伝え、「来年はもっと大きく成長した大石を楽しみにします」と祈願したとのこと。
 大屋さんは「台風時以外、30年以上このようなことはなかった」と語った。神への感謝とともに、「来年の豊作に向け努力しますので、どうか見守ってください」と祈願し、「我々の頑張りが成長を促し豊かな実りを生むように、石もどうぞ大きく成長してほしい」と、石への思いについて述べた。

 この後、来賓者の市長、副市長らは境内の前にある拝殿で御嶽へ五穀豊穣を感謝していた。

 しばらくして雨は上がり、山川御嶽、群れ星御嶽の旗頭が赤イロ目宮鳥御嶽の前のロータリーに到着。旗頭の奉納がいつもより長い時間行われ、集まった聴衆を喜ばせた。

 この日、宮崎県から川平に移住して間もない別所健二さん(52)志保理さん(28)夫妻がロータリーで旗頭の奉納を見つめていた。健二さんは「宮崎でもいろんな祭りはありますが、これはいい祭りですね」と、感慨深く述べた。

 赤イロ目宮鳥御嶽の前で、群星御嶽・山川御嶽の両旗頭が挨拶をするように旗頭を奉納する光景は、伝統ある儀式のつながりの深さを自然に感じさせた。

(流杉一行)

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