ユニバーサルツーリズムに挑戦する八重山青年会議所

 6月9日午前8時から石垣市新栄公園で、一般社団法人八重山青年会議所(上地誠理事長)主催の「次世代へ繋げるユニバーサルツーリズム」と題する6月度例会が開催された。

 これは同会議所が障がい者団体との交流を目的として実施するもので、八重山の共生社会を実現する事業として開催するもの。

 さらに八重山の魅力ある観光地を障がい者とともに楽しみ、そこでバリアフリー化の観点で、修繕・修理する必要箇所を見つけ出し、石垣市へ提言することも目指すもの。

 この日は、朝8時から午後5時までの長丁場ながら、宮良川カヌー体験と底地ビーチでのBBQ、食事の後は提言のための意見交換会、そして最後に八重山博物館見学を実施するという内容。

 特に八重山博物館では、視覚、聴覚、肢体不自由の各障害者の観点で、博物館利用のポイントを確認。見えない人への言葉での配慮や、聞こえない人への手話による対応や、車いすでの来場での問題点など、将来的新設を模索する八重山博物館には、意義深い取り組みも見せる予定。

 開会式では、手話での挨拶からはじめた長山家康副理事長がこの日集まった多くの障がい者・ボランティア・関係機関へ感謝の言葉を述べ、共生社会の実現のためによろしくと挨拶。

 上地誠理事長は、「御集りの皆さんと楽しい時間を過ごしたいと思います。我々八重山青年会議所は街づくりに取り組んでいますが、それは我々だけではできません。明日の八重山のために皆さんと交流したい。長い一日ですが、たのしく過ごしたいと思います」と、楽しい一日になるよう障碍者へ努めたいと述べていた。

 このあと同会議所共生社会推進委員会の国仲恵亮委員長が、この日の事業内容を説明して、晴天に恵まれたことを喜びつつ、水分補給を忘れない様注意喚起していた。

 この日の障がい者とその家族の参加者は、石垣市視覚障害者協会から8名、石垣市聴覚障がい者友の会7名、石垣市肢体障がい者友の会8名。八重山青年会議所から家族を含めて15名で、一般のボランティア12名に加え、沖縄県立八重山商工高校商業科観光コース16名がボランティアンとして加わり、また石垣市社会福祉部障がい福祉課、石垣市社会福祉協議会から各一名が参加。

 万が一に配慮して、テットメ所属の派遣看護師の嘉弥真美香さんも加わり、万全の態勢ではじまった。

 まず大型バス2台で宮良川へ移動し、カヌーツアーを体験。宮良のやらぶ並木を前に、大型バスの乗り入れができない状況となり、宮良橋付近で下車して、徒歩となって、さっそくバリアフリー問題が浮上。宮良川で環境教育と地域振興に取り組む石垣島エコクラブに到着すると、まずボランティアがカヌー実習をスタート。

 障がい者らも一艇に一人ボランティアが乗り込む形でカヌーに乗る準備をしたあと、4つの班に分かれてボランティアの慎重な支援を受けながらカヌーに乗り込んで、慣れないパドルを操り、思いのほかスムーズに馴れた障がい者は、上手に水上を滑り出していった。

 この日、石垣里八石垣市身体障がい者団体協議会の石垣里八代表も車いすで参加。カヌーには乗らなかったが、フロート器具で水上体験をして、観光気分を満喫していた。

この日参加した聴覚障害の本村順子さんは「とってもよかった。初めての経験で、岩の上に咲く花が見られたことや、ヒルギの種子なども見られて楽しかった。カヌーを指導する人が手話が上手な人がいてびっくりした。友人が来た時など、個人的に利用したいと思った」と、述べていた。

また、視覚障害のある出地克子さんは、「はじめてのことで、やりかたがわからなかったが、教わってやれました。やってよかったと思った。サポートしてくれるボランティアの人が後ろから何度も声をかけてくれて、安心でした。ボランティアの人にお疲れさまでしたと労いたいです」と、述べていた。

 宮良川でのカヌーを満喫した一行は、次に川平湾の底地ビーチへ移動。

 底地ビーチの休憩所では、八重山商工高校観光コースのメンバーによる余興がおこなわれ、真謝井戸(マジャンガー)節、安里屋ユンタの2曲が舞われて、障がい者から喝さいを受けていた。

 観光コースの高校生、入里奈留美さん(16)は「最初は、どうサポートすればよいかわからなかったが、実際接して、ジェスチャーでも伝わるものがあり、挑戦することでわかることがあるのを知った。また手話通訳の人がやりやすく、ゆっくり話すことの大切さを教わった。いっしょに寄り添い、気づかうことの大切さを学んだ」と述べていた。

そのあと、BBQがスタート。参加者は海の波音、潮風を感じながら焼肉に舌鼓を打って、皆で楽しい時間を過ごしていた。また障がい者らは、青年会議所のメンバーらの問いかけに応えつつ、互いに意見を交わし、交流をしながら、バリアフリーの課題をテーマに話し合うなどしていた。

 このあと、八重山博物館へ移動。各障がい者団体ごとに八重山博物館の展示物の説明を聞き、学芸員の説明を通して、支障部分を発見するなどしていた。

(流杉一行)
 

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