11月18日午後1時半から伊原間中学校校区の小学校対象に、子どもパークレンジャー事業を実施した。
これは環境省石垣自然保護官事務所が、昨年に引き続いて実施する取り組みで、年7回実施されるもの。
6回目のこの日は、石垣島北部の旧集落で廃村となった安良と石垣島北部の平久保を結ぶ峠道の「安良越道」を親子で越えるもの。
安良村は、1753年寄百姓によって村を建てたが、明和の大津波で全壊。村人482人の内21人のみが生存。平久保から51人が補充されて、村が再建され、この越道は安良と平久保のゆかりある人の往来で利用された。
その後、風土病の影響で1912年に安良は廃村となるも、安良の大城御嶽は、関係者の間で信仰が維持され、毎年豊年祭の時期に、安良に通って代々祈願された。
その神司の浜崎マントさんは有名。今から約20年ほど前まで祈願は実施されていた。
そもそも安良越道は、南側の安良岳と北側の山当山との谷間を東西に横断する2・2キロの峠道で、正式名称は平久保越道。
平久保集落と安良集落のつながりを示す越道で、この道を隔てての、クイヘ(女)と真牛(男)の恋もの語りが八重山民謡誌に記載されてもいる。(石垣市史)
この日、子ども10名、父兄10名で午後1時半に平久保小学校を出発。ヒルやヤスデがたくさん出てくる深い森林を、滑りやすい足元に細心の注意をしながら、踏破。
登りは歩いているだけで、1センチから2センチのヒルが、長靴に取り付いて、這い上がり、靴のなかに侵入しようとしており、一行は互いに長靴についたヒルを注意しあって行進。
軍手でヒルをつまんで、ハサミで切るなどして、駆除しながら道を急いでいた。ヒルの遭遇ごと、退治したヒルの数を数えた横田蒼くんは、最後まで数え切って、その数105匹。
「ヒルの多さにびっくりした」と、踏破したあと感想を述べていた。
一行は、途中でギランイヌビワの大木やガチュマルの大木を見学。ガジュマルは子どもが遊びたくなるアスレチック遊具にも似て、子供たちには大好評となっていた。
父兄として参加した志田奈穂さん(44)は、「毎回レンジャーに子供たちが参加しているのは知っていました。安良越道に挑戦するのを聞いて、安良はめったに行けないと思い、参加してみました。子どもたちといっしょに歩いて、よい経験になったと思います」と、述べていた。
野底小学校5年の後藤仁虹さんは、「昔の人が馬車で通っていたと聞いて、すごいと思いました」と、踏破後に座り込んで、感想を述べていた。
この越道は、昨年から実施しており、今回2度目。イベントの前に二日間かけて、5・6人で歩けるように整備したとのこと。
IT時代にスマホやゲームに浸る昨今、昔を偲ぶ峠越え体験は、異彩を放つイベントといえる。
(流杉一行)