今年は赤土流出防止授業が3高校でスタート

 2月19日午後12時40分から八重山商工高校マルチメディア館で観光コース2年生18人向けに赤土問題特別講義が実施された。

これは平成29年度沖縄県赤土流出防止活動支援事業補助金をNPO法人石西礁湖サンゴ礁基金が受けて実施するもの。

 平成25年から継続実施されている高校生向けの環境教育で、今年で5回目。今年は、八重山の3つの高校で実施される。(八重山高校21日80人:講義、八重山農林高校22日15人:講義と実験)

 講師は、大澤和敏宇都宮大学農学部農業環境工学准教授で、サンシンを弾きながら高校生らに授業への関心を惹く、普通の授業にはない特別講義を今回も実施。

演題は「沖縄のサンゴを救え!」。八重山の海のサンゴ礁が危機的な状況にあること。その脅威のひとつである赤土流出に関して、何が問題かを、丁寧に講義。農地の土が流出しそれが海を汚すだけでなく、農家にとって肥料の入った農地の土が失われ、農家も被害者であることを指摘。これにより赤土流出対策には農家に利益を生み出す農法を取り入れる必要性を述べ、その方策を大澤氏がいくつか実験してきた内容を高校生らに説明していた。

 なかでも株出農法が赤土を流さない農法として有利で、手がかからないことから、耕地面積も広げられ、有効なことを述べていた。また、赤土が流れる原因に、収穫後の畑の裸地状態に雨が降ると、赤土はその土の粒子が細かいために目詰まりを起こし、地下浸透をしないまま流れ出して、膨大な量の赤土が海へ流れだすことを説明。直接雨が土に当たらない工夫の必要性を述べていた。

 講義のあとは、実験がおこなわれ、プランターに入った赤土に2mの高さからジョウゴで水を直接かけた場合と、そのプランターの赤土の上に葉ガラを敷いて水をかけた場合を比較。生徒らは葉ガラを敷いた時に流れ出る水の濁りの少なさに驚いていた。

 採取した水を濁度計で計測すると、葉ガラで覆うことにより89%の濁りを抑えられることが判明。農家が畑の耕起の時期の裸地に、葉ガラをしっかり敷けば赤土が1割に抑えられることを、実験は物語っていた。

 結論が出たあとは、大澤氏は「島ぬ人の宝」をサンシンで弾いて、生徒らに宝の海を守っていってほしいと、海の保全を訴えていた。

 かつて、「海の汚れは台風が吹き飛ばす」と一顧だにしなかった頃、農地が造成され、農家は土地改良事業に諸手を挙げて喜んでいた。

しかし、農作物の輸送コストは離島の大きなハンデとなり、畑の農作物はサトウキビに収斂されていった。

また、度重なる赤土流出で漁民が海の中がどうなっているかを指摘。

また観光客からは海の美しさを指摘され、市民の意識も海の美しさを守る意識が芽生えてきた。

そんな相乗的な契機で本格的な赤土対策がはじまった。

それは1998年頃で、あれから20年。高校での赤土問題授業が5年も続き、赤土対策の必要性は浸透しつつあるが、赤土流出はいくらか低減しつつも、まだ続いている。

移住者人口増加、観光客138万台突破、リゾートホテルなど観光施設の急増、自衛隊基地計画、尖閣対応で海保の規模が日本一(任務での人口増加に拍車)、各所での不発弾調査での土掘り起こしと、陸での開発が進み続けている。

海は、どうなっているかを、指摘する声が、少ない現状がある。
 
 
 (流杉一行)

この記事をシェアする