<日曜の朝に>地域おこし協力隊

4月4日の新聞。地域おこし協力隊の青木省悟さんが石垣市に任用され伊原間に住んで北部地域活性化のために働くという。
北部地域に地域おこし協力隊? 先日伊野田の宮城奈美子さんを取材して過疎化に悩む北部地区の実情を聞いていたので、興味がわいた。そもそも地域おこし協力隊って何だ? 

4月6日、石垣市役所に青木さんを訪ねて話を聞いた。企画政策課に配属、3か月間は農政経済課で研修を受けるのだという。
まずは彼のプロフィールと、ここに至ったいきさつから。

青木省悟。1981年神奈川県は金太郎で有名な南足柄市生まれの35歳(早くも伊原間では金太郎の愛称をもらったという)。男3人兄弟の末っ子。独身。地域おこし協力隊員として石垣市に任用される以前の10年間、東京のデザイン会社に勤務。

社員旅行で2度沖縄本島へ。そこで沖縄に興味を持ち、家族で古宇利島へも。
「時間の流れ、人の余裕の持ち方、せかせかしていなくて。僕もわりとマイペースなので、ちょっと気質が合うのかなと思うようになってきて」ネットで沖縄関係の番組などを観るようになる。

「行事の時にみんなが集まって、先祖を大事にしたり、家族を大事にしたり、人のつながりを大事にしているところが素敵だなと思うようになって、そこらへんから沖縄に住みたいという思いが出てきました」

八重山を訪れたのは1年前。
「文化圏が沖縄本島とはまた少し違うのかなと感じました。台湾や中国の影響も受けているような印象もあって、みなさん合衆国とおっしゃっているので、僕も入りやすいのかなとも思っています」

去年の11月、石垣市が募集する地域おこし協力隊に応募。
ところで、地域おこし協力隊だが、以下のようなものであるらしい。

2009年、総務省がつくった制度。地方自治体が募集を行い、地域おこしや地域暮らしなどに興味のある都市部の住民を受け入れて地域おこし協力隊員として委嘱、あわせて隊員の定住・定着を図る。総務省は、隊員1人につき報償費等として年間200~250万円、活動費として年間150~200万円を上限に地方自治体に対して地方交付税措置をする(ウィキペディア)。募集情報は「移住・交流推進機構」ホームページや各地方自治体のホームページなどでおこなわれる。

任用が決まった青木さんは、3月末に伊原間に移住。元ダイビングショップであったという家に住み、現在1時間かけて市役所に通勤している。
移住1週間だが、現在の心境、今後の意気込みなどを。

朝、6時半に起きてシャワーを浴び、海に出る。
「沖縄にいるんだと改めて感じながら海を見る。のどかで、気持がいいですね。東京では建物だとかゴミゴミしたところにいたので視界の抜けがない。ここは自然が多いけどシンプルというか。なので、リセットしやすいというか、きょうまた頑張ろうと思いますね」

3か月間の研修が終わったら、伊原間を拠点に仕事を?

「その先はまだ決まっていなくて、北部に留まってときどき市役所に報告に行くというような形になるか。そうなれば僕が今住んでいるスペースをオープンにできるかも。応募の時に、常設の活動拠点をつくることを提案したんです。観光の方も寄れるし、地域の方も立ち寄ってお茶が飲めて、いろんな話ができる。悩みを聞いたり、そういう場所をつくりたいと」

「妄想ですが、石垣が合衆国なら、例えば、西部開拓ならぬ北部開拓などができるといいですね。どこどこに金(きん)が眠っているよ、という世界をつくって、みんなに北部に行きたいと思わせるような、そんな妄想などしています(笑)。地域の魅力発信というのも仕事のひとつなので、今までの仕事(デザイン)を生かして、ホームページの作成、情報誌、北部限定のフリーペーパーなどがつくれるかもしれません」

「学校の空き教室を利用して島留学。おじいさんおばあさんの家に下宿して学校にかよってもらうとか。また、薬草とかを生産してうまくブランディングしたり。今まではデザインだけをやっていたので、もっと企画とか、提案の段階から関わっていけたら。地域振興に関わることが自分の成長にもつながると思っています」

3年後はどうなっていますか。

「北部と言えば青木(笑)。伊原間の青木さんでしょ、と。青木からクロキになっていますかね(笑)。できれば定住したいと思って応募したので、3年といわず、地域に溶け込んで(自分の)仕事の形をつくっていければと思っています」

同じ地域おこし協力隊員の渡邊義弘さん(41)は去年の9月に任用された。
大阪出身。三重県松坂市で働いていた時に石垣市から出向してきていた人と知り合い、その人が島に戻った後、石垣島を訪ねた。「うまく説明できないけど、いい場所だなあ、と。フィットするんですね」。

「私は情報学を学んでいまして、情報の架け橋をつかって、たとえば外の大学の教育プログラムを石垣島でできるように持ってきたり、子どもたちとワークショップをして社会との架け橋になったり……」
ちなみに渡邊さんは東京大学客員研究員でもある。

伊原間中学校1年生14人と「地元水産物PRワークショップ」をおこない、水産物のポップ広告をつくり、それをサンエーに掲示した。
「若者が水産物に目を向けるきっかけにし、かつ若者の感性でつくったポップ広告をサンエーさんに置かせてもらう。それを新聞が取り上げることで宣伝にもなる。つまり産官学がメリットのある形で情報発信ができる取り組みをさせていただいています」

ほかに石垣市立図書館でのアンケートについてワークショップ、川平小学校で職業講話、東京大学の佐倉統教授を招いて講演会を開き、研究者の仕事の内容を話してもらったり。

「理想としては石垣島に大学や研究センターを誘致して、私は地域と大学をつなげる仕事ができれば、夢としてはいちばんいい夢かなと思っています。そうしたら私のキャリアが、大学とのつながりが生かせますので」

南風野哲彦企画政策課長は、
「移住していただくというのもありますが、能力・ノウハウを持っている方に来ていただいて、石垣市の課題解決や地域活性化のために、それぞれの分野で協力してもらいたいというのが主なねらいです」と地域おこし協力隊に期待を寄せる。

市は昨年度からこの制度を活用し、現在、渡邉さん、青木さんのほかに、白保の特産品開発にかかわっている吉田礼さんを加え3人の地域おこし協力隊員が任用されている。5月からさらにもう1人、観光の分野に任用されるという。

島は昔からマレビトを歓迎した。島の継続発展につなげるためには新しい知識や文化を入れなければならないからだ。それは現在も変わらない。しかし、それをどう生かすか、今度は島のズンブン(知恵)が試される。

*上の写真、左から渡邊義弘さん、青木省悟さん

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