4月4日、午前9時過ぎ、八重山漁協のセリ場で、黒いブダイがトロ箱に入って、存在感を出していた。もしやと、そばにいた人に魚の名をきけば、「くじらぶったい」と返ってきた。
鯨のように大きくなるからだと聞いて、初耳の名にガッカリ。
そう、ブダイの種類の中で最大の魚、カンムリブダイかと思ったのだった。
姿は、カンムリブダイに似て、頭にこぶがある。
クジラのように、大きくなるからだと、両手を広げていうおじいさんが、カンムリブダイだと、言葉を継いでくれたのを見逃さなかった。
おお、やはりそうか。
伝説のカンムリブダイ。ここでは「くじらぶったい」あるいは「ぐじらぶったい」と濁音が入って聞こえる場合もある。過去に八重山の海でたくさんいたとされるブダイ。乱獲でいなくなったともいわれたが、どっこい生きている。体長は1.2mにもなる大物だ。30キロにもなるとも。近海のどこかに、ひっそり生きているのだ。
セリに出てくるのは「ひさしぶりだ」と、仲卸のセリ人がいう。
最近、登野城漁港ではでているようで、この新栄漁港では今年初とのこと。
伝説のブダイが、まだ生きていることがわかって、こんなうれしいことはない。
海の環境が、こういった大型のブダイが群れて泳げる水質に戻ってほしいと、つくづく思うのは、私だけではあるまい。
(流杉一行)