第30回石西礁湖自然再生協議会開催

 12月9日午後0時30分より沖縄県八重山合同庁舎2階大会議室で開催された。WEB上での公開も実施され、WebExによるウェブ会議システムで参加が可能となっていた。

 この協議会は、個人48人、団体・法人52団体、地方公共団体28、国の機関9でなる137の個人や機関が加わって機能している。今回で30回を数え、日本で唯一のサンゴ礁湖の石西礁湖を、昔あった豊かな海に戻し、自然再生を実現するために長年取り組んできた。

 この日は、新規参加委員の紹介が行われた後、新役員の選出の後、石西礁湖に関する話題提供や報告が行われていた。

 最初の報告では、沖縄周辺海域の今夏の海の状況について、沖縄気象台からの説明があり、2022年8月は沖縄周辺の海面水温が記録的な高温となったことが述べられ「東シナ海南部」の月平均海面水温は30・1度で歴代1位とのこと。

また先島を含む「沖縄南」の月平均海面水温は30・5度でこれは歴代2位となるとのこと。ただ、先島海域の海面水温は1900年から上昇の一途でもあるものの、日本全体から見れば、北海道の南東や日本海、東シナ海、四国の南の方が、100年あたりの海面水温上昇率は、先島周辺より深刻になっている模様。

 このあと石西礁湖における白化状況について環境省石垣自然保護官事務所から報告があり、2022年は2016年以来の大規模白化が起こったことが詳しく説明された。

 令和4年度サンゴ群集修復事業経過報告が、これも環境省石垣自然保護官事務所から行われ、サンゴの卵と一般的に言われるバンドルが生育した幼生を増やす工夫や、その設備の移動を高水温を予測して移動を試みる手法や、死んだサンゴに生える藻類の除去事業など、サンゴの再生への人為的な取り組みについて紹介し、課題も述べていた。

 また、前勢岳ゴルフ場リゾートからの大量農薬流出と大量地下水汲み揚げによる名蔵湾と名蔵アンパルへの懸念についても報告されていた。

 このほか小浜東礁の移植サンゴの白化と水温についても、2022年1月から12月までの水温記録を見せながら、白化状況を報告していた。

 意見交換のコーナーでは、テーマを「いま、石西礁湖で気になっていること」と題してグループディスカッションがおこなわれ、4つのグループで話し合われて、それぞれ意義ある意見のとりまとめを報告。なかでも、サンゴの身になって、考えることが大事ではないかという意見が、異彩を放っていた。

 海域の水質の状況が、サンゴの持つ高温被害から修復できる力を奪って、復活する力が劣っているのではないかという声は、出ているものの、サンゴの移植で間に合うかに、人工のサンゴ移植が吹聴される傾向が、先行しているようにも、見えている。

 記者は、この日、石西礁湖のエリアを示す地図を見ると、石垣港もいっしょに入っており、この協議会が再生したい石西礁湖のエリアは、石垣港も含めてのサンゴであることを確認。真栄里海岸から冨崎海岸までが石西礁湖と接する陸域になることから、この場所での海への影響がどのようになっているかも、将来は調査対象になりえることが、うかがえることに。

 この陸域には13のリゾートホテルが点在する。いわば、このホテルの窓から見える海は、石西礁湖であり、その石西礁湖の再生事業が、個人および民間、行政機関、研究機関と取り組まれていることになる。

 観光客がそのことを、どれだけ知っているかに関し、あまりに無関心ではないかと、この地図を見て思ったのだった。

 記者が、サザンゲートブリッジの下に、大きなテーブルサンゴを見つけて、驚いたのは今から15年前だった。石垣島四か字の海沿いの海域に点在するサンゴも石西礁湖のサンゴと考えると、石西礁湖はこれまでに比べるとえらく身近に感じられる。観光客にも石西礁湖は、馴染む地名になるはず。

なお、来年1月24日には自然再生協議会全国大会が実施される模様で、全国の30から40の自然再生に取り組む人たちが集合するという。自然保護に関心持つ人には見逃せないイベントといえそうだ。

 (流杉一行)

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