4月15日は、イリオモテヤマネコが発見された日。
イリオモテヤマネコの日のイベントが、2020年からコロナ禍が続いたために西表島野生生物保護センター内での、展示だけで自粛されものが続いてきた。
今年は3年ぶりに、石垣市ユーグレナ離島ターミナルと石垣空港で、イリオモテヤマネコの日の広報活動を実施。
そのほか大原港(14日から22日)・上原港(22日から29日)での展示パネルや、西表島でヤマネコパトロールを実施するNPO法人トラゾウ保護基金によるオンラインでの講座を実施(23日)。
また石垣空港や石垣市公設市場の竹富町商店や、大原港内の4店舗、ヤマネコ商店、みなとのやおや店、ショップじゅごん、ゆりみなで、ヤマネコグッズの物販を実施。イリオモテヤマネコの日に因んだ取り組みを、4月15日を中心に実施している。
午前8時15分、石垣市ユーグレナ離島ターミナルでは、イリオモテヤマネコの日を旗を手に一団が観光客や行き交う郡民に、チラシを配布してイリオモテヤマネコの日をアピールしていた。
石垣島ではこの8時頃の離島へ向かう船に、観光客が大勢乗り込むのが、コロナ禍に入って最も目立つ現象で、この船の直後はバッタリ人影がなくなり、その極端さが島では話題になって、3年目となっている。
この日も、イリオモテヤマネコの日のアピールには、効果的な人流が見られて、環境省石垣自然保護官や西表自然保護官、竹富町自然観光課職員らが、熱心にチラシを配っていた。
今日がイリオモテヤマネコの日であることを示すチラシには、交通事故で被害に遭っているイリオモテヤマネコの実態も説明され、その対策として、島でのレンタカーの運転にはスピードを落とした運転をと、注意喚起が示されていた。
午前10時からは石垣空港の到着フロアでもチラシ配りが行われていた。
2日後の石垣島トライアスロンに向け石垣入りするアスリートが、大きなバイクの荷を手に現れる人が多く、チラシを受け取る余裕がない人も多い中、「イリオモテヤマネコの日です」と、アピールに務めていた。
この声に反応してチラシを求めて近寄ってくる観光客に対し、何かの宣伝と勘違いして、避けながら行き過ぎる人と、明暗がはっきり。
八重山の自然文化に関心持つ人と、観光を楽しむ都会の一般観光客の違いが見えて、島へ足を延ばす観光客の傾向が見えてもいた。
イリオモテヤマネコに関心持つ観光客は、いっしょに写真撮影を請う人もいて、八重山好きな家族には効果大な広報だった模様。
イリオモテヤマネコは1965年に学術的発見され、世界で西表島にしかおらず、生息数は100頭とされる絶滅危惧種。
アジアには広くベンガルヤマネコが生息しているが、イリオモテヤマネコもベンガルヤマネコの亜種とされる。
ただ、その関係が特異で、大陸のベンガルヤマネコから枝分かれしたのが20万年も前とされ、その間、西表島で独自な進化を遂げて種を繋いできたことになる。
ベンガルヤマネコが捕食するネズミが、西表島には十分生息せず、そのために大陸のヤマネコには見られない多彩な生物を捕食する生態となっている。
イリオモテヤマネコが豊かな自然と生物多様性によって、ネズミのいない島での生存が支えられ、絶滅も防がれてきた。
この特異なベンガルヤマネコの亜種は、世界唯一の特性として国の特別天然記念物で、そのヤマネコが生息する西表島が昨年7月に世界自然遺産に登録されている。
この日、世界自然遺産に登録されてからの初イリオモテヤマネコの日で、西表島の生態系の頂点に位置するヤマネコであれば、何か特別な広報があるかに思ったが、そこにはあまり焦点がいっていない。
「世界遺産がオーバーユースを誘えば、豊かな自然への悪影響も生じかねないので、そのバランスは大切です。世界自然遺産は西表島の陸域の生物多様性もつ自然へのもの。イリオモテヤマネコは西表島の自然の一部で、ヤマネコ自身が世界遺産というわけではありません」と、職員らは述べていた。
東京から石垣入りした29歳の女性は、「あの旗のマークが可愛いですね。イリオモテヤマネコの危機について知りませんでした。島では、配慮するように気にしたいです」と、述べていた。
(流杉一行)