今年は9月15日から石垣島で午前8時から10時の間、アカハラダカの飛来が見られた。20日からの約一週間は、約300から600羽が大空で鷹柱をつくって、愛鳥家を喜ばせていた。この一週間だけで3135羽。長く300羽以上が続くのは、近年では珍しい。
15日は、バンナ公園スカイラインの渡り鳥観測所から上空を見ていると、南西方向に午前9時30分に11羽、南東方向に午前9時50分に9羽が南の空に消えていった。
ちょうど、台風14号が12日に台湾南部のバシー海峡の海域から与那国を通過。北上していく経路をとったため、アカハラダカが飛来してくる経路とぶつかった。
アカハラダカの渡りは朝鮮半島および中国北東から南下するもの。朝鮮半島の群れが対馬を経由し、長崎の烏帽子岳を経て、沖縄本島、宮古島、石垣島と飛来してくる。
台風14号はこのルートをきれいに逆走するもの。
当初は、台風14号接近を察知したアカハラダカが早々に大陸側に行って、八重山には来ないと思ったもの。15日に現れて、17日6羽、18日8羽、19日5羽と、もうこれで終わりかと思う中、20日からの飛来数の増加となった。
かつて2005年や2006年に一日で3000羽は飛来した時代もあった。近年は最高300羽程度で、約100羽や200羽が1度づつある他は、二桁台が続いて次第に一桁になっていくことが多かった。そういう意味では、今回は稀な数といえる。
アカハラダカの観察会が最初に記者の目に止まったのは、1998年9月。
やいまNEWSのスタートは1999年12月。愛鳥家の本若博次さんが、アカハラダカの存在を活字に示したのが、情報やいまの2002年9月号。「サシバに比べれば知名度は低いが、バンナ展望台から見る頭上すれすれから飛び去る渡りの光景は圧巻である」と記している。
季節の花鳥風月に詳しい大仲浩夫氏の「八重山の自然歳時記」にも未掲載なところを見れば、野鳥の専門の人でなければ知らない話題だったと思われる。
このアカハラダカは、対馬および九州沖縄でしか知られていない。本州・四国・北海道では見られないためだ。また、英名は、チャイニーズ・スパロー・ホーク。いわば、中国雀鷹。頭に中国がついてしまうのだ。では英名で日本雀鷹(ジャパニーズ・スパロー・ホーク)はいるのかというと、いる。それがツミなのだった。
ちなみに中国では、アカハラダカは赤腹鷹としている。日本と同じなのだ。赤い腹の鷹。
台湾では、今年9月14日に、台湾の最南端の屏東県墾丁にアカハラダカの渡りがはじまったと24日付けで発表。23日までに18万羽以上が通過したという。例年の秋の平均を上回るペースとある。墾丁国家公園管理処が実施する調査によるもの。(台湾のニュースサイト「台湾Today」より)
八重山でも増え、台湾でも増えたというのはちょっと不思議な気もする。中国大陸を経て南下する個体が減ったと考えるのがいいのか。そこは不明だ。
(流杉一行)