去る4月21日、東京都の練馬文化センター小ホールにて、都内・吉祥寺の三線教室「てぃーちたーちぃ」(代表:碧井かおり)主催の芸能公演「八重山島唄めぐりの旅2019」が開催された。
教室創立10周年を記念した当公演は、収容人数588名の会場が満席になるほどの盛況ぶり。この日のために八重山で織ってもらったという揃いのミンサー帯が物語るかのように、一門の絆を感じる一体感あふれる「赤馬節」で幕開けとなった。
続いては小学生の弟子たちによる「島人ぬ宝」。大人の助けを一切借りず唄三線から島太鼓まで堂々と演じ切った姿に、観客席から大きな拍手が送られた。
その後はコンセプトである「島唄めぐり」に沿い、プロジェクターで舞台に島々の風景を写しながら、「小浜節」「まるま盆山」「仲筋ぬぬべーま節」など、各島々の代表曲を披露。
「つぃんだら節」では、野底マーペーの悲しい物語を小学生が朗読。涙する観客も。
前半ラストは、軽快な舞踊「黒島口説」での賑やかな締めくくり。ガイドブックを模して精巧に製作されたパンフレットや、添乗員役MCの好演も手伝い、まさに島々を旅した気分にさせられた。
後半。衣装を着替え勢ぞろいした一門は、碧井代表の自作詞曲「太陽(てぃだ)の森」で幕開け。八重山への想いが海を越えて届くように、と心一つに歌った。
そして、暗い舞台に写し出されたのは見事な満月。客席からは感嘆の声も上がる。総勢50名近くが車座となり、すっかり月夜の「野遊び」に姿を変えた舞台は、まるで観客たちも一緒に宴の席にいるよう。たくさんの手拍子や指笛が飛び交っていた。
賑やかな曲の合間、一瞬にして静寂を創り出し、しっとりと聴かせた「とぅばらーま」は、まるで石垣市民会館にいるようだったとの声も。想いを込めて歌い上げた渾身の一曲には、多くの観客の心に熱く伝わるものがあったに違いない。
締めの「くいちゃ踊り~六調」では観客も舞台に。「弥勒節」の大合唱でフィナーレを迎えた後、カーテンコールでは紙吹雪と共に風船が舞い散る演出でも楽しませた。
子どもたちの背中に書かれた「みーふぁいゆー(ありがとう)」の文字に思わず笑みをこぼしてしまった記者であるが、こちらが「みーふぁいゆー」と伝えたくなるような、温かく楽しい芸能公演だった。
碧井代表は、弟子たちと共に八重山を代表する祝儀歌「赤馬節」で緞帳を上げるのが一つの夢だったと語り、そのイメージと共に3年の年月をかけて準備して来たとのこと。
本土に八重山芸能を伝える活動に力を注ぐ、てぃーちたーちぃ。10年の節目を過ぎ、ますますの発展に期待したい。
【てぃーちたーちぃ 公式サイト】
<関連記事>
製作/南山舎 『とぅばらーまの世界』