3月10日午前9時30分から大浜公民館でユマニチュード講演会が開催され大浜集落の住民や、ユマニチュードに関心ある市民など80人を超える参加者が集まった。
認知症ケアで驚異の回復を見せるユマニチュードを考案したイヴ・ジネスト氏による大浜地域での講演会で、昨年は石垣市地域包括センターによる公的資金を活用してのユマニチュード講演会が、病院関係者や介護老人施設関係者向けに実施されている。
施設へ出向いての実演も実施され、福祉関係に大きな反響を集めたていた。
今年は、ジネスト氏が宮古島での取り組みがあるのを聞きつけ、有志が八重山地域ケア連絡会を組織して、石垣島での講演を計画。
呼びかけに応じた人々により、招致に成功して3月9日には石垣市健康福祉センター検診ホールでユマニチュード講演会を開催している。
この日は、同計画と併行して大浜地域での開催をという声にも応えた形で開催され、大浜地域で皆家族会(ムールヤーニンジュー)を主催する長濱末子さんと大浜ゆうたく会などが南西交通、デイサービス一番地や、大浜婦人会、大浜老人会とともに、大浜地域での開催を実現。
この日、ジネスト氏と本田美和子氏、林紗美氏の3氏によるユマニチュード講演会を実施した。
ユマニチュードとは何であるかを、ビデオを見せながら、ジネスト氏がフランス語で講演し、本田氏が即翻訳。ジネスト氏のわかりやすいジェスチャーをつかった豊かな表現で、言葉の壁を越えての講演となり、会場は大いに盛り上がっていた。
ユマニチュードとは、人間らしい接し方の技術で、この技術を習得する方法を細かにジネスト氏は解説。
猫や犬が産んだ子猫や子犬をなめるのは、猫であれば子猫が猫であることを親から伝えられる行為で、なめられなかった子猫は死ぬとのこと。
実際に、孤児60人を引き取った人物がいて、その2割の子どもが亡くなった事例があるという。
また愛情表現を十分受けなかったことで、多くの子どもに自閉的な症状が出たという。
母からの愛情表現が重要で、その時のやさしい声をかけること、しっかり目を見ること、相手を気遣って人として信頼を得られる形で触れること。この3つの要素が、実はユマニチュードと共通なもので、いわばその技術そのもの。
ジネスト氏は人として人に接する大切な要素であることを説明した。ビデオでは、認知症で無表情だった人が、言葉の壁があるにもかかわらず、ジネスト氏と打ち解けて、やがて言葉で反応するようになる瞬間が披露されていた。
ジネスト氏は、最後にひとつの提案を発表した。ユマニチュードを習った家族がボランティア的に認知症の家族を支援する会「オレンジファミリー」を考案中で、認知症で困っている家族を幅広く手助けできる体制づくりの必要性を述べていた。
この会を企画実行した八重山地域ケア連絡会(仮称)の仮代表の今村昌幹氏(県立八重山病院内科医)は、「今回、民間で声をかけあってジネスト氏を石垣島に呼ぶことが出来た。国では地域包括ケアシステムを行政だけでなく、地域ごとにも構築することを求めている。八重山地域ケア連絡会は、まだ設立総会も開いていないが、まず最初の取り組みが今回のユマニチュード講演で、今後もゆっくりと地域でのケアシステム構築に取り組んでいきたい」と抱負を語っていた。
長濱末子さんも「多くの人にユマニチュードを知ってもらい、またこの地域ケアの取り組みが広がることを望みます。ほかの地域でも、活動が広まればうれしいですね。まず大浜に最初のオレンジファミリーをつくりたいですね」と述べていた。
(流杉一行)