9月4日午前4時、台風11号は石垣島と宮古島の間を通り抜けて、北の空へ去って行った。気象庁石垣島地方気象台によると、最大風速は石垣島登野城の観測点で4日10時52分の23・8m。
なんと、暴風域の25mに届かない。「よかった、よかった」と、喜ぶ人がいたに違いない。
3日13時から50世帯で停電が発生。そこからはじまって3日17時から増えてゆき、本日4日の11時が420世帯がピークで、19時頃には170世帯だったが、20時には10世帯となる。与那国島は停電はなく、竹富町は昨日の夜から朝まで30世帯が停電。本日昼には復旧している。
明石集落より南は、電柱から家への引き込み部分で10世帯ほどの単位で切れるケースが各所に発生。きっかけは、飛散物で樹木の小枝や、電線を揺れる樹木が影響してのものが多いという。
石垣島北部の平久保半島の明石より北側では、14時間以上も続く長い停電で、半島が宮古よりな部分で、困った事態が長く続いた。(平野近くでは風速30mほどの風が吹いていたという情報がある。出どころは海保らしいが確認はしていない。)石垣島南部の市街地では、ほとんど停電もなく、助かっている。
瞬間最大風速は石垣島伊原間で4日午前6時4分、37・9m。かつて台風銀座時代の八重山では、風速が50m以上吹き、瞬間最大風速60mを越えても、けが人はなかった。停電に困ったものだが、今回は大規模停電もなく、助かっている。ただ、この程度でけが人が出る意味は何か。
8月31日以降みせた各局TV中継では、5日間に渡って、強まっていない風雨を撮影。あれこれホテル内からビデオカメラを回してみたり、いろいろ知恵を絞って、八重山へ派遣されただけある、ねらいどおりの映像を送っていた。
島民には、まず不安が先立つ台風だった。あらゆる経済活動がストップしての、慎重な日々。微妙な状況にある特別な台風でもある。この場合、何が起こるか読めない台風のことだから、とにかく、どう備えるかを台風の動きを見つつ考え続けるしかない。
8月31日から台風11号に対して、群民は定番の備えをする。ただ、小笠原の東からやってきた台風だ。南大東島への直撃がはじまると、普通はそのまま北へ向かうはずなのだが、この台風がとったコースは異例だった。
まず、沖縄本島に影響する真西コースから、南西方向へと前代未聞のコースをとる。
これは、いままで見たことがない。
従来は沖縄本島へ台風が接近したら、先島は安全なのが常。それが先島諸島の東南に降りていくのだから、気味が悪い。
誰もが、先の見えない台風の接近で、こまったはず。こういう場合には、動きが予測できないケースが多い。
30年前は、最大風速40mは普通の台風で、50mを越えると瞬間最大風速は60mになり、電柱が折れる被害が出ることになる。ほとんど、予測は当たって、電柱は折れ、停電が続いた。台風一過の後は、いつ停電が復旧するかを、ずっと気にする日々だった。
これが年に何度も来たのが本来の石垣島。
この島は素晴らしい場所だが、この台風だけは避けようのない唯一のマイナス部分。これが、ここ15年ほど来ていなかった。
何度か70mクラスと呼ばれたものが、途中でそれたり、ほとんど被害なく去ったり、ほとんど来ていないに等しい。
またこの2020年、2021年と2年連続して台風の雨風が来ていない。昨年9月は、その影響で水不足に見舞われ、夜間断水を予定しようと動いた節があった。降雨でそれは流れたが。
台風が去って、9月4日に街や畑を見れば、サトウキビの倒れは西風によるもの。本来、最高の強風は北風のはず。ほぼ、西風に倒れている。ダメージが北風ではなかったということになる。
最初の予報で、台風の中心気圧の920ヘクトパスカルから930ヘクトパスカルというのは、大変な台風だというのは島民はわかる。
瞬間最大風速70mクラスは、大変な被害を生み出す。ところが、3日に間近になって台風は955ヘクトパスカルに変更された。
しかも40mの最大風速。これは、普通サイズ。そして、去ってみれば暴風も吹いていない。この5日間は何だったかと、思わざるを得ない。
テレビで見せられる石垣島と宮古島の間を通る台風11号の進路。宮古よりか石垣よりのどちらになるかが、大問題だが、そこがおおざっぱ。暴風サイズが半径95キロだから、片側によれば、暴風は届かない。そこをいうTV局はどこもない。注意してくださいを繰り返すだけ。これが、報道の先島への関心度。
島民は、停電備えに車の避難場所探し(風向きが悪いとひっくり返される)、食糧確保に仕事の備え。住処の台風対策も万全にするタイミングも、図る必要がる。
思えば、報道の取材陣は、本気で実情を伝えようとしているか。否、激しい風雨がとりたくて来ているかもしれない。今、どうなっているかという事実よりも、激しい風雨のシーンが欲しい。被害もしかり。この感覚で報道が行われている以上、本当のことがTVにでない。日本のニュースは、政府や裁判所、国会、警察、大企業など当局の連絡係的で、しかも大手マスコミでつくる記者クラブの特権にあぐらをかいて、質問機会を独占している。ただでさえ、不信が先立つ報道に、末端取材者がこれでは、実に情けない。ここに住む市民からすると、恥ずかしくないのかとも思う。
何が変なのか。こちらの見立てはこうだ。
この台風は確かに変な台風で、先が読めないものだった。
ゆっくりと停滞して、今度は先島の宮古島よりに進路をとる。
偶然に近くで発生した熱帯低気圧が、気が付けば台風に合体。そこで宮古島寄りコースが石垣島寄りに切り替わり、いよいよ瞬間最大風速70m級が、石垣島に来るかと思い、慎重に待ち構える気持ちになった。
コンパクト台風といわれ、暴風域が中心から半径95キロ圏内と、サイズ的にはそれほどでもない。920hPAは、とにかく破格な強さで、瞬間最大風速が70mサイズ。恐ろしい台風とわかる。
これまでにない動きから、何が起こるかわからない台風として、八重山の人を怯えさせたのは、間違いない。
ところが、3日の台風通過時間は正午とみていたのが、15時になり、暴風域入りも3日深夜0時とTVはいうのを聞いたが、こちらで計算してみれば3日15時の暴風入りで3日21時最接近と、2日時点で読む。
3日の中心気圧は925hPAで、大きい。最接近は3日19時に見るも、暴風入りは遅れて、12時50分にも入らず、12時53分から音がようやく激しくなる。
しかし、18時38分で、スマホの気圧計が972hPAを指す。21時25分に台風らしさを感じる風音が出るも、すぐに静かになる。石垣島地方気象台に電話で聞けば、風速が高まったのは2日で、32mほど。やはり、今回も予報はオオカミ少年。何度もオオカミ少年を経験させられる。
2013年に大きな台風が来たという同気象台。
大きなものは2006年。1週間停電が続いた。気象台スタッフはそれが出るより2013年では、あまり詳しくない担当者だ。風速計が70mまで測れるようになってからの情報しか知らない。・・・かもしれない。以降は、空振り続き。
この変な台風の出現で、まさか、住民がどんな反応をするかを、研究でもしているのだろうか。台風の行方を、細かに報道している目的をしっかり持ってほしい。1994年の大型台風の連続来襲に、どこのマスコミも冷淡だった。それが、台風が弱いながらも本土に襲来するようなって、態度が一変。そう、視聴率が違ってきた。そんな報道姿勢を、島は知っている。で、今や40mクラスの台風が本土で上陸するようになった。かくして台風に関する知識は増えたか。報道姿勢が、国民から信頼されているか。お笑いばかりの興じて、視聴率稼ぎに忙しくて、無理か。
報道するなら、本当のことを出すべきだ。国民の自主反応を期待するためにやっているのか。行政は何をすればいいかわからなくなっているのか。
水害は、九州地方で、ずっと毎年報道されている。これにも違和感を感じていた。一番ひどい光景を見つけ出しては、それを全国へ出す報道。本当の状況を客観的に示せるようにしてほしい。
気になることがある。
最近、沖縄県八重山支庁が沖縄県本庁の出先機関でなる八重山合同庁舎に代わってから、八重山全体のことを発表することがなくなって、八重山に関する情報がいい加減になってきているように感じる。
沖縄本庁を相手に、霞が関が八重山のことを把握する感覚にないか。八重山は沖縄本島には把握できない。八重山の地名の読みも危ないはず。那覇から400キロ離れた八重山であることを、霞が関は把握できていない可能性がある。心配である。東京から名古屋の距離だ。八重山支庁を復活するべし。
日本が危ないということなのか。
島人は言っている。「本土の人に台風に備えさせるために、八重山の暴風のシーンや被害状況がほしいのだ」と。
視聴率もあるだろう。
大手マスコミ報道は、国民を操作する気分にないか。上役の指示通りにしか動かないスタッフばかりの機関は、こういう時に、島全体から見透かされている。八重山はやさしいので、誰も不服は言わない。ただ、あきれている。
(流杉一行)