石垣島田んぼの会 有機農法の田んぼ作り始動開始

6月、市民が集まり、自給のためのイネ作りを目指す「石垣島田んぼの会」の活動が始まったので参加させてもらった。
  
 指導者は有機のイネ作り33年の笹村 出さん。神奈川県小田原を中心に「あしがら農の会」として活動されており、3年ほど前から石垣島と小田原の2地域居住をしている。
 
 現在石垣島では、田んぼの耕作放棄地が出現し初めていて、稲作が可能な場所がサトウキビや草地などに転作されている場所が増えてきている。こうしたことは今後も広がっていく可能性が高く、このままでは石垣島の稲作農地は減少し危機を迎えてしまう恐れがあるというのが現状だ。
  
 ラムサール条約では田んぼは湿地の一部として認定されており、生物多様性の維持のために通年通水の田んぼは湿地と同様に扱われている。石垣島で田んぼが継続されることは、自然環境を守っていくためにも重要なことだ。笹村さんらは石垣島の現在の状況を踏まえ、農家が経営としては取り組みにくい田んぼを市民が自給の田んぼとして取り組みたい考えるようになったという。

 同様の取り組みは笹村さんが30年ほど前に始めた「あしがら農の会」の活動としても行われており、現在小田原では10ヘクタールほどの農地に200名ほどの会員が自給のための様々な農業をされている。
 石垣島でも田んぼが減ってはならないという思いから、このたび、名蔵アンパルの会の山崎さんと40年前に石垣島に入植して農家になった干川さんの協力のもと、田んぼの会をやってみようという運びになった。
  
 しかし、石垣島で田んぼを借りる事は容易なことではなく、一旦借りることになった田んぼの地主さんから、やはり田んぼを貸せないことになったという連絡がくることもしばし。耕作放棄地はあるが、不在地主であるとか石垣島特有の事情もあるようだ。笹村さんは田んぼを借りるために歩き回り農業委員会にも足を運んだ。そして、親切な方の好意で、名蔵シーラ原の1反4畝ほどの田んぼを2期作目の半期だけ臨時に借りることができたのだ。
  
 今回の2期作目では自給までは行かないが試行の田んぼとして、農薬や化学肥料を使わない有機農業で耕作する田んぼ勉強会とすることにした。出来るだけ機械を使わない伝統的農業とし、代掻きは水牛を使う昔の石垣島の農業の再現を予定している。
 フェイスブックを中心に田んぼの会の会員を募集したところ、1日で20名を越える応募があった。石垣島でいかにお米を自給する技術に興味を持っている人が多いかをうかがえる結果と言えるだろう。

 そして6月20日、1回目の石垣島田んぼの会が始まった。1回目は苗代作りと田んぼ全体への堆肥撒きの作業。この日は15名程が参加しての作業となった。
 

 1メートル幅で20メートルの長さの苗代作りは、水を入れたぬかるんだ田んぼでの作業で、田んぼを歩くのは思った以上に大変だった。ビール粕と米ぬかを混ぜて2週間ほど攪拌しておいたぼかし肥料3袋を、苗床になる辺りに播いた。肥料は熱が出て発酵を続けていているので独特な匂いがしていた。これが苗床に栄養を与える。
 ぼかし肥料を撒いた後、脚で踏んだり、シャベルで起したりしながら、2時間ほどかけて代掻きをした状態にし、周囲よりもいくらか高くした。そうすることによって水管理が楽になるそうだ。そのあと、石垣島堆肥センターで作る堆肥15キロ入りを田んぼ全体に15袋撒いてこの日の作業は終了した。同時に周辺の草刈りを電動刈払機二台で行っていたので田んぼの見通しがとても良くなった。
 


 田んぼの土に直接触れ、泥だらけになりながらの作業だったが、参加者たちは初対面でも同じ思いを持つ人達が集まったことにより、息の合う気持ちの良い作業となった。これからの活動が更に期待される。

 2回目は6月27日に「海水選」と「浸種」が行われた。「海水選」とは種籾が海の水と出会い、目覚めることだそう。海水に沈んだ種籾だけを二重のネットに入れる。これを川に浸けておくと十分に水を吸い込んで1週間ほどで発芽を始めてくるそうだ。田んぼ近くにはちょうど川が流れているのでこの場所は環境にも恵まれている。
 

 ネットに入れた種籾は猪などの動物に狙われないようにするために黄色い蓋を被せて川に浸種した。来週はいよいよこの種籾を苗床に播種する予定だ。1回目の作業で苗床に入れたぼかし肥料も落ち着いてきているという。1週間後がとても楽しみだ。
    

 この後参加者はシャベルや鍬を使って畦道を作る作業を行い2回目の作業は終了した。

 そして、来週は水牛の代掻きも予定している。牛耕は台方湾の人から教えて貰った田んぼのやり方で、石垣島の伝統農業だ。日本で水牛耕が行われるのはこの石垣島田んぼ勉強会だけだ。代掻きなどやったことが無い水牛が来て、代掻きを練習から始めるというので、事前に見学させてもらった。
 
 
 この水牛は竹富島で牛車を引いていたメスの水牛で名前は若葉という。推定年齢は10歳くらい。今種付けがされていて、おそらく妊娠しているが働くことは問題ないらしい。
 紐で水牛に結わえてあるものが、代掻きをする道具で、転馬車(ころばしゃ)と言う。水牛を引いている干川さんが自作してくれた。干川さんは農業に使う道具は何でも自分で作ることが出来る。
 


 この水牛、若葉は竹富島で牛車をしていたのでしていたので、訓練はされている。しかし代掻きは初めての作業。不安の中、まずは水の中を歩くことから始めた。さすが水牛、水が好きなようで何のためらいも無く水の中を歩いていた。若葉は嫌がらず水の中を一生懸命歩いてくれるとても働き者で力持ちの水牛だ。田んぼの泥の中を水牛を引きながら、歩くのはかなり大変な作業だが、今回実に20年ぶりに水牛耕耘が石垣島で復活することとなった。

 次回7月4日の石垣島田んぼの会では苗床の種まきと水牛の代掻きを予定している。
 田んぼの会の参加条件は真剣に田んぼに取り組むことが出来ること。活動日は基本日曜日で、笹村さんが石垣島にいるときには毎日必ず田んぼに行かれて作業されているそうなのでその時間に併せて田んぼに行くと勉強することができる。笹川さんはこの会が石垣島に根付いて石垣島の水田が守られることに繋がることを願って活動されている。
 今後は8月1日に田植え、稲刈りは11月初旬を予定しているので興味のある方はぜひ参加してみてほしい。

(編集部Ma)

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