視覚に訴える八重山の戦争 潮平正道「絵が語る八重山の戦争」発刊記者会見

 第二次大戦中の八重山の写真撮影は、それ自身スパイ行為とみなす日本軍により、視覚的な戦争資料が八重山については皆無となっている。そんな中、戦争体験者による当時のことを語る絵の本が発刊された。

 9月11日午後2時半から大浜信泉記念館多目的ホールで潮平正道「絵が語る八重山の戦争」発刊記者会見が行われた。

 南山舎から8月15日に出版されたB5判横でモノクロ162ページの書籍で、58点の絵と文章でつづられた本、潮平正道著の「絵が語る八重山の戦争」の発刊経緯と特色が会見で発表された。定価は1980円(消費税込み)で発行部数は1500部。

 終戦を中学生で経験した潮平さん(87)は、将来を担う子供たちに二度と戦争など経験させるべきではないという強い思いをもって、これまで戦争の語り部としての活動をしてきた。

 ある時、体育館などで小学一年生から六年生までいっしょに話をすることが多く、小学1年生には、話が伝わりにくいと感じていて、そこで絵にして伝えること考えたという。

 約25年前からはじめ、以来、絵を書き小学校などの平和学習の講話で利用してきた。その絵を見た戦争体験者からも依頼されてかく絵も出てきたとも。

  かくして昨年「月刊やいま6月号」の特集で「潮平正道さん戦争絵」が掲載され、その絵を見た三木健さんが、潮平さんの絵に注目。

 三木さんは、八重山の戦中の写真がまったくないことや、あっても米軍や英軍が戦闘中の航空機から撮影したものしかないこと。そして、何より八重山で起こった事件や事象が、潮平氏が中学生時代に目にしたそのままに、絵として表現されていることを重視。

 潮平さんの描いた絵が、戦争経験のない人や小学生など子どもたちへ、戦争の悲惨さを伝える教材にもなりえることから、発刊の必要性を感じ、南山舎との話し合いで、刊行委員会で有志を募集して、今回の発刊に至ったという。

 この日、会見に臨んだのは、著者の潮平正道氏と、刊行委員会委員長の三木健氏、同委員の大田静男氏、江川義久氏、八重洋一郎氏、宮良純一郎氏の計6名。

 会見は、刊行委員会委員長の三木氏が刊行のきっかけを語り、著者の潮平氏が絵を描くきっかけと、その想いを語っていた。

 各委員は、潮平氏との関係を述べながら、潮平氏の人物像を語り、氏の書籍発行の意義深さを述べていた。

 上江洲儀正南山舎会長によると、刊行委員会の委員に呼びかけて賛同者を募集し、賛同者の販売促進の協力で葉書による注文を募ると170冊分の注文がきているという。

 戦後75年経ち、戦争を知らない人がほとんどとなる中、八重山での戦争マラリアの悲惨さを視覚的に後世に伝える一冊に、多くの人の関心が集まっているといえそう。

 なお、潮平氏にはすでに発刊した絵本2冊「四人の兵士の物語」「イタチたちの街」があり、これが3冊目。今回、「絵が語る八重山の戦争」では、家族(娘の久原道代さん・孫の久原望未さん)が著者から聞き書きするなど、家族間で戦争体験を伝承し、受け継ぐ形が実現されている。

 (流杉一行)
 
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