3月26日午前8時から石垣市新栄町にある八重山漁協の荷揚げ場で、今年初となるクロマグロの水揚げが行われた。
百波(もな)丸(王滝貴船長)が24日に捕った309キロの雄が、船長の家族・友人やうわさを聞いて集まった大勢のギャラリーが見守る中、荷揚げ場に揚げられ、その巨体の威容に歓声があがった。
クロマグロは「海のダイヤ」の異名を持つ高価な魚で、八重山近海には産卵地があるとされ、この時期、産卵のために集まってくる。
八重山では毎年4月から6月までクロマグロ漁が盛んだったが、昨年から漁獲制限がはじまり、5月17日を最後に漁が打ち切られている。そのため前年の半分しか漁獲できなかった。
今期初水揚げの百波丸は、夜間に光で魚を集めて漁をする集魚灯の船で、一昨年に進水したばかりの初々しい船体。
当時の進水式には、昔ながらの大漁旗と竹をマストに結わえて、近海で航海安全を祈願し、港では餅巻きをして多くの人に祝福された船。
王滝貴船長は「ねらっていたので、揚がった瞬間、うれしかったですね。いつもみるマグロですが、最初は緊張します。昨年は2本で、これが3本目です」と、クロマグロの漁獲制限のために、昨年は我慢の年を過ごしていた。
「昨年もタイミングはこの3月の大潮で捕れました。今季は、クロマグロねらいの漁は2度目で、最初は捕れず、やはりこのタイミングで捕れました。うれしいです」と、喜びを語っていた。
なお、新型コロナの影響で今のクロマグロの豊洲での競り値は、低迷が続いている。毎年、早い時期に揚がるクロマグロの値は通常は高値が期待されるが、昨年は漁獲制限から早い時期から小型の漁獲が増えたため値を下げ、今期も新型コロナでその期待はできない模様。ただ、八重山初水揚げでもあり、八重山漁協は豊洲送りを決定。
この日は、2本目となる25日に捕れた日の丸(日野洋平船長)のクロマグロ(173キロ)も水揚げされ、豊洲に送られた。
漁獲制限の下にあるクロマグロ漁に、降ってわいた新型コロナウィルスの景気後退で、値が伸びない状況は、例年クロマグロ漁をする漁師には2重のつらさ。
ただ、大きな魚体が漁港に出現する迫力は、見事なもので、多くのギャラリーが集まり、記念写真を撮る人であふれていた。
これから八重山では、クロマグロのシーズンがスタートする。まずは3月31日までの23.8トンの余裕の県内枠でクロマグロの水揚げが期待される。
なお、沖縄県農林水産部水産課では、昨年から沿岸でのクロマグロ漁の漁獲制限(知事管理量に係る第5管理期間)が実施されており、クロマグロ大型魚の後期漁獲の割当量は3月26日時点で、23.8トンとなっている。
前期の割り当ての留保分7・3トンに後期割り当て1トンと青森県からの融通として17.9トンが追加されている。(3月13日に追加)26.2トンが後期割り当てされ、26日の水揚げ分を含む、現時点での後期水揚げ分を引いた残りの割り当てが23.8トンとなる。
来期となる第6管理期間は今年4月1日からはじまり、クロマグロ大型魚の沖縄県の知事管理量は115トンとなる模様で、後期分の1トンを引いた114トンが前期分となる。
ただ、来期は前期の実績から、51.4%増の192・6トンに増やされることが、4月中旬ごろに水産庁から発表される模様。
(流杉一行)