第19回石垣島凧あげ交流会盛会

 6月30日午前9時から第19回石垣島凧あげ交流会が開催され、宮城、埼玉、東京、新潟、石川、愛知、大阪、兵庫、大分、鹿児島の10都府県から32人の凧愛好家が参加して、地元凧愛好家や一般市民と交流しながら凧あげを楽しんだ。

 10時からおこなわれた開会セレモニーでは、日本の凧の会の茂出木雅章会長が「地元の八角やピキダーに加えて、全国各地の特色ある凧が、石垣島の澄み切った青空に夏至南風(カーチバイ)を受けて悠然と揚がる様を楽しみながら、互いの凧自慢や凧揚げの技術談義に花を咲かせたい」と、交流会が有意義であることを述べ、凧文化の伝承、発展の場として、末永く交流会が継承されることを希望していた。

 セレモニーの後、会場では八角などの八重山の伝統凧のほか、全国の凧が大空に舞い上がり、見事な光景を見せていた。

2m以上の大きな凧が続々揚げられたほか、赤いイカ、赤いタコなど巨大な姿を空になびかせる巨大凧や、「ボーといきてんじゃねぇよ」のチコちゃん凧、帆船凧、万国旗の連凧や自転車凧、バットマン凧、ふくろうの凧や、クバの蓑でつくられた凧など、見れば見るほど不思議な凧が空に揚がって、見る人を驚かせていた。

 また、テントでは新潟の鳥凧の会から寄贈された100の鳥凧や田原凧保存会の喧嘩凧などが、会場に訪れた市民に無償提供され、カラフルな鳩の鳥凧や鷲が描かれた青い喧嘩凧などが会場に揚がって、交流会を大いに盛り上げていた。

 この日、2m50センチの大きな凧を揚げていたのは東京足立区から参加の武田守弘さん。なんと大きさも目立つが、ほかの凧と全く違うのが「足」がない。

凧が空で安定させるために「足」と呼ばれる紐がつけられるのが一般。ところが大きなこの凧に足がない。

武田さんは「左右均等にバランスよく作って、足がなくても安定するようにつくるのが楽しい」と、竹ひごの削りから細かにチェックしてつくりあげるという。凧に描かれた絵は歌舞伎で見た朝比奈を細かに見て再現。こだわりがあるとも。

 この日、世界の凧のコレクションで有名な小野喜象さん(79)も参加。空で目立っていた帆船凧は、小野さんのもの。組み立て式の帆船凧でインドネシアで売られていたものを購入して組み立てたという。小野さんは、「凧は真面目さだけではだめ。ユニークさ、滑稽さがなくては面白くない」と豪語。「見てくれ」と取り出したのはふんどしの凧。そこに西郷隆盛の辞世の句「敬天愛人」が書かれ、大事なところの下着に大事な言葉を入れて、凧に細工して空に揚げるふんどし凧をアピールしていた。

 11時半には第9回シャクシメー大会が開催され、参加者3人で競技。

 100m先の凧へ2往復するスピードを競うもの。スタートで、凧糸にシャクシメーを装填することからはじめるルール。優勝は地元石垣市の崎原毅さん(62)。

 この日のために最後の最後まで調整を繰り返し、大会直前に家に戻って修理もしてきたとのこと。

 風の様子に合わせて調整ができるように工夫されており、風の強い日と弱い日でシャクシメーの翼部分が付け替えられる万能型。

 もっとも苦労したのは、最上部に登った直後に羽根の張りを外すバネ。

 強すぎると外れず、弱すぎると途中で外れる。風の強弱でも、調整の必要が出る。

 誰にも教わらず自分で20年かけて編み出してきたという。シャクシメーに向ける情熱が凄い。「これまで島の先輩には勝てなかった」と、勝負に敗れて家に帰って泣いたこともあるという。

 ちなみに、この日の修理は、凧糸へシャクシメーを仕掛ける時間を短くするために、凧糸に乗せる装置の変更。2位との差は15秒と、きわどかったこと思うと、仕掛けにも配慮した作戦は見事的中。

「優勝できてほんとうにうれしいです」と、うれしそう。20年もかけた思いの深さを尋ねると、「剣道かな?」と、今は居合に力を注いでいると崎原さん。剣道の師に「修業は死ぬまで」と教わり、追求していくことが似ていると。「これも凧の道」とは、脱帽です。

 12時半からは凧とアトラクションと題して空からお菓子を降らせる子供向けのお菓子のプレゼント。強風気味で、何度か失敗もありつつ、5回お菓子を空から降らせて子供たちを喜ばせていた。

(流杉一行)

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