ピーチパイン大好評 石垣島パインアップルの日

 5月31日、午後2時半から新石垣空港内のイベント広場で「石垣島パインアップルの日」セレモニーが開催された。

 石垣市副市長の川満誠一氏が石垣島パインアップルの日宣言を実施したあと、JAおきなわ八重山地区営農振興センターパインアップル生産部会の盛山信範会長やJAおきなわ八重山地区営農振興センターの石垣信治センター長が挨拶をして、世界に誇るに石垣島パインをアピールしていた。

 また、今回、石垣島限定販売の石垣島産パインをつかったハイチュウも試食コーナーに参加。森永チューイングキャンディ旬を味わうハイチュウ(石垣島パイン)の名で森永製菓の商品として紹介されていた。

 このあと、試食会がスタート。テーブルには、ボゴール、ピーチ、ハワイと書かれた札のあるお盆にそれぞれのカットパインが入った容器が置かれ、観光客は勢ぞろいしたパインを名前を確認しながら賞味していた。

 6月1日が石垣島パインアップルの日で、島では例年この日に内外に発信するイベントが開催されてきた。

 この日はその前日開催で、気候変動から早生(わせ)の品種(ボゴール、ピーチ)が早くに結実。それに合わせて、早めにアピールが必要となった模様で、そこは農家への配慮にも見える開催。

 6月1日のアピールは元来、沖縄本島よりも一足早くパインアップル適期となる八重山のパインを知ってもらうねらいでのもの。
 沖縄本島が設定するパインの日は8月1日。しかしその日は、八重山ではパインの旬は終わっているタイミングなのだった。
 石垣島が率先する意味で、石垣島パインアップルの日を制定して、早期のパインアップルをアピール。ただ、最高に安くておいしいパインアップルは、7月のハワイ種が島人には定番。

 しかし、つくる側が7月に集中することで、売る期間が短く、空輸する航空機も満杯となり、台風接近での影響が出た場合、半端なく大きな被害になる。そこで、ハワイ種に迫るおいしいパインの品種への移行を促し、4月から6月の長い期間に渡って、おいしいパインアップルが供給できるように、県やJAは取り組んできた。

 そこで生まれたボゴール種、ソフトタッチ種。
 この日は、この2種に、時期的に少し早いがハワイ種もいっしょに、観光客に試食を実施。食べ比べてもらい、3種それぞれ個性がある石垣島のパインの甘い味を堪能してもらっていた。

 通称ボゴールはスナックパイン。ソフトタッチはピーチパイン。スナックパインは、包丁で切らなくとも、実がほどけて、食べやすいのでそんな名前。

 ピーチパインはその名の通り、色が淡く、香りがピーチに似てのこと。本格派のハワイ種のパインは、7月がおいしい。
 しかしこの日は、7月のものより少し酸味が気になった。

 この日、東京直行便や那覇便と、続々到着した観光客が、パインを試食。3種を食べ比べて、その味の違いを確かめていた。
 「甘くておいしい」と何度も、試食してうれしそうにするお年寄りや、子どもに与えて見守る家族づれや、友人の分も確保していっしょに仲良く食べる二人づれや、カップルで互いに味の感想を言いあうなど、試食会場はごった返していた。
 皆、こっちがいいと、自分の好みを話したりして、楽しい時間を過ごしていた。

 東京から初めて石垣島に2泊3日の日程で来島した中井かおるさん(27)は「初めて来て、はじめて食べました。甘くて、みずみずしいです」と、笑顔で答えてくれた。

 友人3人で来島したフランス人のルーノ・カサノバさん(36)は、英語で甘いと言った後、はっきりわかる日本語で「甘い」と答えてくれた。東京で仕事をしている仲間との来島。フランスのパインアップルとの比較はできないのを、聞いてみて気が付いた。フランスは緯度が高い。

 今回、6月のこの時期は、ソフトタッチのピーチパインが人気で、上品で柔らかくおいしいと、婦人から高評で、試食会半ばで出された高価な品種ゴールドバレルを食べた男性からも、ピーチパインがおいしいと、かなりな高評価。
 記者もゴールドバレルを抜くとは、ピーチパインの旬が今かもと、思わずにはいられなかった。

 ただ、島人にとって最高の味は7月収穫のハワイ種のパイン。安くて甘さと酸味のバランスが最高にいい。
 ハワイ種は、昔、八重山で缶詰用に作られ、基幹産業として位置づけられたパイン。
 織物する女性が女工に殺到して、織物の継承者が激減した原因にもなった。いわば歴史ある産業で、そこでの歴史ある品種。

 自由化の波を受け、外国産の缶詰に負け、工場が次々閉鎖される中、島に来るカニ族なる若者の間で生パインが人気となり、石垣島川原のパイン農家の婦人会が生果パインを郵送で販売。
 これが当たって生のままで販売する生果パインがスタート。

 1999年に最後のパイン工場宮原パイン工場が閉鎖となり、パイン農家はこれまでつくってきた缶詰用のパインを生果用に切り替え、勇気をもって営農を継承。
 なにしろパインは植え付けから収穫まで2年かかる果物。覚悟の必要な挑戦だった。
 かくして亜熱帯の八重山の特性が現れたことで、全国どこにもない甘さを実現して、脚光を浴びてきた。

 ただ、苗の不足からこれまで以上の量産はすぐには無理で、じわりじわり増やしてきたが、前出の7月殺到問題で、期間を広げる取り組みが進められてきた。

 4月にできる早生パインでも、しっかり甘さがのる品種として2種が量産されている。このほか、ゴールドバレルやサンドルチェなど、甘味に特化したパインも栽培。

 サンドルチェなどは、パインの独特の酸味が抜け、スイーツに近いと高評価。

 バランスある酸味が大事という島人には、高価なこともあり少し敬遠気味。しかし、破格の甘味に驚く観光客も多く、インパクトあるパインとして、定評となっている。

 6月から7月いっぱいまで、西表産も含めれば八重山パインといってもいいが、最高においしい時期に入ったことになり、島内外で賞味されることが、島の発展になること間違いなし。

 今回、ピーチパインがゴールドバレルを抜くほどおいしいと言われるシーンに出くわした。白けた色で、見た目が青臭いピーチパインだが、観光客の言う、上品さと柔らかい食感の高評価は納得でき、今後再評価すべきかも。

 図らずも、この日、ハワイ種が早生のパインの引き立て役に回されて、ちょっと可哀そうな役回りとなったが、7月にはぜひともハワイ種の試食会もやってほしいと、ハワイ種の面目を保つことも大事に思うのは記者だけか・・・。
 

 (流杉一行)

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