地(知)の拠点大学による地域創生推進事業がスタート

 2016年10月に石垣市と琉球大学と名桜大学が、地域における雇用創出、若者定着に係る協定を締結。

その締結から1年半の綿密な準備期間を経て今回、初の取り組みがスタート。

2013年から始まっている文部科学省による地(知)の拠点大学による地域創生推進事業は、国の政策と連携できる地方大学の取り組みを支援するもの。

地域活性化に取り組む国公立の大学向けから、新たな第2弾として地方行政と大学間連携で、地域振興に役立つひとつ踏み込んだ事業に、国の支援がはじまっている。

 石垣市と琉球大学と名桜大学の3者での協定からの第一弾の事業が、3月10日から14日の日程で開始された。

 10日に石垣入りした5人の琉球大生が、4泊5日で県立石垣青年の家に宿泊しながら、石垣島の現状を把握し、それに基づいてプレゼンを13日に中間発表。

そして14日の最終日に「ピパーチ」を軸に最終プレゼンを発表した。

石垣島にとっての地域活性を視点にフィールドワークを実施し、援農体験やピパーチ栽培を視察。八重山博物館で寄川学芸員に話を聞き、バラビドー農園の上間昇氏やペンギン食堂の辺銀夫妻を視察し、実際の農業現場とその加工品が生まれるラー油工場の視察も実施。

沖縄物産コーディネーターの池村氏の講義や沖縄畑人クラブの小泉伸弥氏の助言を聞きながら、地域振興の担い手である生産者から現状と課題を生で学び、琉球大学生5人が感じ取ったものを土台に、プレゼンを発表していた。

 今回、10名の募集で5人しか集まらなかったものの、少ないことで逆に濃密な見聞ができた模様。食べるラー油を全国的にフィーバーさせたペンギン食堂夫妻だけに、その取り組み姿勢には学生ら自身は深く感銘を受けていた。同夫妻も学生らの新鮮な発想に、発見があってよかったと、今回の事業に参加できてよかったと述べていた。

 学生を引率してきた小島肇特命准教授は、1年半前から準備をしてきて、ようやくこの日を迎えられたことを喜び、今後も順次展開する予定という。

 学問の独立をいう時代は一昔前。文科省の政策に沿ったものに付けられる事業への柔軟な取り組みは、小ぶり感はあるが時代の趨勢でもある。

 実戦力をもつ人材が必要とされる現場で、率先して従事する人材を生み出すには、まず若者が魅力を感じられる場所でのフィールドワークが大事と思われる。

 最後に5人は、課題テーマや実習を振り返って感想を述べ、地域のために何が出来るか、自分自身の成長点を、ひとりひとり発表。

 各自、現場での情報の収集の大切さや、フィールドワークや援農体験を通じて感じたこと述べていた。今回の4泊5日で得がたい収穫があったことを述べ、なかでも辺銀夫妻から八重山地域の魅力を教わり、またその魅力を製品づくりに生かしている声を聞き、参加者皆一様に感銘を受けていた。

 教師をめざしてきた教育学部3年の吉武拓海さんは、出身の熊本に帰った30年後は沖縄に戻り、沖縄で骨を埋めたいと思ったと述べ、会場から驚きの声があがっていた。


 
(流杉一行)
 

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